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「熊野古道」 詳細解説

読み:
くまのこどう
英名:
The Ancient Kumano Road

紀伊半島の南部にある熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉(はやたま)大社、熊野那智大社)へ詣でるのに使われてきた道を「熊野古道」と呼ぶ。熊野の地と、伊勢、大阪・和歌山、高野、吉野を結ぶ古い街道の総称だ。奈良、和歌山、三重の3県にまたがり、合計23市町村にわたって広がる。仏教、神道、修験道などさまざまな信仰が育まれてきた熊野三山とその周辺は、古くから神々がいる聖地としてあがめられ、日本人の精神文化に大きな影響を及ぼしてきた。「伊勢へ七度、熊野へ三度」と言われたように、日本人は古くから、厳しい参詣道を歩いて熊野に行く「熊野詣」(くまのもうで)を行い、癒しと再生を求めてきた。本宮大社は未来のご利益を願い、速玉大社は過去の業を落とし、那智大社は現在の業を落とすものとして、今でも多くの人が参詣に訪れる。

熊野古道は、2004年7月にユネスコ(国際連合教育科学文化機関:UNESCO)の世界遺産として登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部だ。世界遺産に登録された理由は、神道と神仏習合の霊場である熊野三山と、真言密教の霊場である「高野山」、そこに至る熊野古道などの参詣道がまとまりを持って、信仰を育んだ自然と人間の営みが一体となった文化的景観を構成しているためだ。熊野古道は、1) 京都方面からの参詣のために最も頻繁に使われた「中辺路」、2) 高野山との間を結ぶ「小辺路」、3) 紀伊半島の南部の海沿いを行く「大辺路」、4) 伊勢神宮との間を結ぶ「伊勢路」、5) 「大峯奥駈道」(おおみねおくがけみち)などから成る。熊野灘に面した海岸線や紀伊山地など、豊かな自然環境に恵まれている。また、文化財保護法に基づき、史跡7件、史跡・名勝1件、名勝1件、名勝・天然記念物1件、天然記念物4件が指定され、国宝4件、重要文化財23件の建造物を含む。熊野古道と同様に、ルートそのものの文化的・歴史的価値を認められ世界遺産に登録されたものに、スペインの「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」がある。

東紀州観光まちづくり公社の推計によると、2006年の熊野古道(伊勢路)への来訪者数は約15万3000人だ。重要な観光資源である熊野古道とその周辺地域を守るため、関係する地方自治体による取り組みが盛んだ。和歌山県は2006年3月、世界遺産条例を策定し、森林や河川保護のための対策や、参詣道を訪れる人のためのルールを定めている。三重県には県立の「熊野古道センター」があるほか、県は熊野古道の保全と活用について取りまとめた「熊野古道アクションプログラム」を作成し、訪問者によるゴミ持ち帰りや、定期的にパトロールする「古道レンジャー」の育成などを行っている。また、熊野市や那智勝浦市などの地元自治体も、保全と観光に力を入れている。さらに、地元住民の手による、文化遺産を将来に伝えていくための取り組みもある。「本宮町語り部の会」では、熊野古道の持つ歴史を来訪者に知ってもらうための語り部を育てている。

熊野古道を舞台にした新しい試みも始まっている。和歌山県では、熊野古道で「自律移動支援プロジェクト」の実証実験を行っている。熊野那智大社周辺で、外国人観光客などの地理不案内者に対して、経路案内やトイレなどの施設案内のほか、交通機関や名所史跡などの観光情報を、ICT技術により多言語(日、英、中、韓)で提供するものだ。

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