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「ホッキョクグマ」 詳細解説

読み:
ほっきょくぐま
英名:
Polar Bear

ホッキョクグマは、北極圏に生息するクマ科の大形肉食動物だ。全身が白い毛でおおわれているため、「シロクマ」とも呼ばれる。メスよりオスの方が大きく、オスでは最大で体長2.5m以上、体重800kgを超える場合もある。体の割に頭は小さく、鼻の頭が黒い。普段は氷の上で生活し、大きな前足で上手に泳いだり水中に潜ったりして、北極に住むアザラシやセイウチの小どもなどを捕まえて食べる。冬になるとメスは雪に穴を掘り、その中で1頭か2頭の赤ちゃんを産み、育てる。寿命は約20年ほどだ。ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)では附属書?(取引が厳重に規制されるが、許可があれば輸出入できる)に該当する。

ホッキョクグマは1990年代には絶滅の可能性は低いとされていたが、IUCN(国際自然保護連合)は2006年5月に公表したレッドリスト(絶滅のおそれのある種のリスト)で、危急種(VU)に指定した。IUCNはその理由として、地球温暖化などに伴い、北極圏で急激に環境破壊が進んでいることをあげている。日本の2007年版環境・循環型白書によると、ホッキョクグマは、海の氷に開いた穴から息継ぎをするために顔を出すアザラシを捕まえて食べ、脂肪として蓄えるが、地球温暖化により海氷がなくなると、アザラシが獲れなくなる。すでにカナダのハドソン湾における調査で、ホッキョクグマの平均体重が1980年の295kgから2004年には230kgに減ったという結果が出ている。

また、ホッキョクグマなど海洋地域に住む生物の体に、人間がつくり出した化学物質による異変も起きている。PCBやDDTなどの残留性有機汚染物質(POPs)は、国境を超えて移動し、生物の体内、とくに脂肪分に蓄積されることが知られており、ホッキョクグマやアザラシなどからそれらの化学物質が検出されている。さらに、地球温暖化などによる環境への影響により、50年後にはホッキョクグマが3分の1に減るという研究報告もあり、アメリカ政府はホッキョクグマを絶滅危惧種に指定する方針を打ち出している。また、環境NGOのWWFは、ノルウェーのスバールバル諸島で、「ホッキョクグマ衛星追跡プロジェクト」(Polar Bear Tracker)を行っている。この調査は、ホッキョクグマの生態や行動を衛星によって調べるもので、WWFでは、「北極圏における地球温暖化の影響を知る手がかりとなるもの」としている。

一方、ホッキョクグマは世界各地の動物園などで飼育されており、日本でも、北海道の円山動物園や旭山動物園、秋田の男鹿水族館、東京の上野動物園、大阪の天王寺動物園など、多くの動物園や水族館でその姿を見ることができる。また、ドイツ最古の動物園であるベルリン動物公園にいるホッキョクグマの「クヌート」は、赤ちゃんの頃から同国だけでなく世界中で大変な人気となった。同園ではクヌートを環境保護大使として位置づけ、クヌートのファングッズの収益金を、ホッキョクグマ研究などの環境保護プロジェクトの資金として援助している。

子どもから大人まで幅広い人気のあるホッキョクグマの人気にあやかりつつ、その保護に取り組もうという動きは日本にもある。札幌市の研究開発型ベンチャー企業は、ホッキョクグマをモチーフにした保冷機能付ランチボックスの売り上げを、同市の円山動物園へホッキョクグマのえさとして寄付している。本業である自社製品の販売を通して、ホッキョクグマの危機や温暖化防止などを訴える取り組みとして注目される。このほか、2008年1月公開の自然ドキュメンタリー映画「アース」では、ホッキョクグマがゾウやザトウクジラとともに主役として描かれている。

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