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「熱中症」 詳細解説

読み:
ねっちゅうしょう
英名:
Heat Stroke

環境問題は、人間の健康にも大きな影響を及ぼす。なかでも熱ストレスの増大によって引き起こされる熱中症は、身近で深刻な問題だ。高温により体温の調節機能に異常をきたし、体内の水分や、ナトリウムなど塩分のバランスが崩れて発症する症状だ。従来は、炎天下での労働やスポーツなどにより発症する例が多かった。しかし近年、屋外はもちろん、屋内でも熱中症になる人が増えている。その原因のひとつとされているのが、地球温暖化の進行やヒートアイランド現象などの環境問題だ。半世紀で3度以上気温が上昇したヨーロッパでは、21世紀に入り大規模な熱波により多くの死者を出している。

国内の熱中症による死亡者数は、1968年から2009年までの42年間で7625件だ。また、1995年以降の死亡数は年平均で353件にもなり、以前と比べて多くなっている。とくに65歳以上の発生数が死亡総数に占める割合は年々増加している。さらに、最高気温が30度以上の真夏日や、夜間の最低気温が25度以上の熱帯夜が多くなると熱中症による死者数も増える傾向がある。2012 年夏期の全国における熱中症による救急搬送人数は、4万3864人に上った。熱中症が起きやすい条件は、高温、多湿、風が弱く日差しが強い、照り返しや輻射熱が強い、急に暑くなることなどだ。また、職場における熱中症で死亡したり休業したりする労働者も少なくない。

熱中症は、1度の軽症、2度の中等症、3度の重症に分けられる。1度の場合、めまいや失神、筋肉痛や筋肉の硬直、大量の発汗などの症状がある。2度では、頭痛や不快感、吐き気、嘔吐、倦怠感や虚脱感などにおそわれる。3度になると、意識障害や痙攣、手足の運動障害、高体温の症状が現れ、めまいや失神に続いて筋肉痛や意識障害が起き、体温が上昇して最悪の場合は死に至る。高体温とは、体に触れただけで熱いと感じるほどの体温上昇のことだ。自ら水分や塩分をとれない時や重症の場合は、すぐに病院へ搬送する必要がある。

環境省の国民運動である「熱中症予防声かけプロジェクト」は、予防のための「5つの声かけ」を国民に呼びかけている。温度に気を配ろう、飲み物を持ち歩こう、休息をとろう、栄養をとろう、声をかけ合おう、の5項目だ。とくに高齢者や子どもの場合は、普段の生活でも熱中症になることがあるため注意が必要だ。一方、労働やスポーツ時の熱中症予防に用いられている国際的な指標として、WBGT(湿球黒球温度)がある。WBGTが高い環境下では、熱中症の危険も高くなるため激しい運動などを行ってはならない。また、労働環境についてはWBGT指数に基づくJIS規格が定められており、ISO規格もある。

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