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「交通」 詳細解説

読み:
こうつう
英名:
Traffic

交通の手段は古代から現代までさまざまに変遷、発達してきた。人類の最初の段階では、人やものの移動は歩く、担ぐなど人の力に限定されていたが、やがて、馬などの動物の力を利用したり、舟や車輪を発明したりするなどして、人力だけの手段から脱却していった。とくに船の発達は、大量輸送を可能にして貿易の発展を促し、文化、文明の交流につながっていった。

交通手段の革命は、イギリス人のワットが18世紀に蒸気機関を発明したことにはじまった。19世紀になるとスチーブンソンなどによって蒸気機関車がつくられ、大量に人やものが運ばれるようになり、鉄道は新しい交通手段として世界に広まっていった。さらに20世紀になると車社会化(モータリゼーション)の時代となり、船、汽車、車、飛行機などによる輸送によって、世界は密接に結ばれるようになった。この間、航路、鉄道、道路などの交通インフラも整備され、ますます人とものの大量輸送が可能な時代となっていった。

日本では、海洋国として船による交通が発達し、中国との貿易が活発に行われていたが、江戸時代には国内の北前船など海路による交通が整備されていった。陸路では、東海道、甲州街道、中山道などの五街道が整備され、馬や人が国内各地を行き交うようになる。しかし、日本における交通の本格的な発展は、明治時代の鉄道の導入によるところが大きい。欧米諸国に比べ、鉄道の導入は遅れてはじまったが、東海道本線、中央本線、東北本線、山陽本線など、全国に鉄道網が敷設され、人が密接に交流し、食料や資材などが早く大量に輸送されるようになった。そして、戦後、1960年代以降、日本は本格的なモータリゼーションの時代を迎え、トラックなどによる物流が本格化、また、マイカーの急速に普及によって、個人が自分の意思で自由に早く移動することへの楽しみを見出すようになった。高速道路が整備され、車を使ったレジャーが盛んになっていった。

このような交通の発達は、一方で国民生活に大きな利便性をもたらしたが、他方でモータリゼーションによる環境悪化などの問題も引き起こしている。車の燃料である石油は、資源的にも埋蔵量が限られており、また、燃焼によって生じる窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、浮遊粒子状物質(SPM)などの大気汚染物質や、地球温暖化の主要原因のひとつである二酸化炭素(CO2)の排出などが、環境負荷を増大させている。また、日本での交通の発達は、地方から中央への物資や人の流入を加速させてきた。地方における道路の整備・発達は、地方に都市の文化を導入させる役割を果たすとともに、地域社会から人や物資を運び出す役割を果たし、急激な過疎化を招いてしまった。

21世紀においては、燃料電池バイオ燃料などをはじめとするクリーンエネルギーの導入や、更なる技術革新などによるモータリゼーションの改革を通じて環境問題を解決するとともに、交通の発達を地方の地域社会を豊かにするための方法とすることが求められている。また、OECD(経済協力開発機構)は、環境的に持続可能な交通(EST:Environmentally Sustainable Transport)という新しい政策ビジョンを提案しており、環境省は、国内とアジア地域において、長期的視野で交通・環境政策を策定・実施するこの取り組みを展開している。このほか、車の利用者の交通行動の変更を促すことにより、都市や地域レベルの道路交通混雑を緩和する交通需要マネジメント(TDM)も注目されている。

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