サイト内
ウェブ

「海洋汚染等防止法」 詳細解説

読み:
かいようおせんとうぼうしほう
英名:
Law Relating to Prevention of Marine Pollution and Maritime Disaster

海洋(海)の面積は約3億6000万平方kmで、地球の表面積の約7割を占める。大きく1) 大洋(太平洋、大西洋、インド洋)と、2) 付属海に分けられ、付属海はさらに地中海、縁海、湾、海峡などに分けられる。海は、人間をはじめとする生物を生んだ源であり、豊かな自然生態系を持ち、多くの海洋資源をわれわれに与えてくれる。また、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の吸収や循環についても重要な役割を果たしている。しかし、この海洋の汚染が近年大きな環境問題となっている。大半は、油取扱時の不注意による排出や、廃棄物の投棄などの人為的な要因で発生している。

主に海洋由来の汚染や海上災害を防止するため、「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」(海洋汚染等防止法、当初題名に「等」はなし)が1970年に公布された。国土交通省環境省の共管法令である。具体的には、1) 船舶、海洋施設、航空機から、海に油、有害液体物質、廃棄物を排出すること、2) 船舶からの大気中への排出ガスの放出、3) 船舶及び海洋施設で油、有害液体物質、廃棄物を焼却することなどを規制している。そのために、1) 廃油の適正な処理の確保、2) 排出された油、有害液体物質、廃棄物などの防除、3) 海上火災の発生とその拡大の防止、4) 海上火災等に伴う船舶交通の危険防止などの措置について定めている。油を違法に排出した者には1000万円以下の罰金を科すなど、厳しい罰則も定めている。

海洋汚染等防止法は、国際的な海洋保全に関する条約の成立などの動向を受けて、再三改正されてきた。海洋環境を保全する国際的な取り組み、枠組みとして重要なものに、「MARPOL(マルポール)73/78条約」がある。国際海事機関(IMO)が作成した。IMOは、船舶の安全と船舶からの海洋汚染の防止など、海事問題に関する国際協力を促進するための国連の専門機関で、1958年に設立された。同条約は、船舶の航行による油、有害液体物質、危険物、汚水、廃棄物、排ガスなどによる環境汚染を防止するため、構造や設備などに関する基準を定めたものだ。また、「ロンドン条約」は、廃棄物の投棄による海洋汚染を防止することを目的とする。さらに、「OPRC条約」は、油による汚染を防ぐための準備や協力に関する事項を定めている。このほかに国連海洋法条約や、海上における人命の安全のための「SOLAS条約」などがある。

日本は、これらの条約に加入し、海洋汚染等防止法の改正や、個別法の制定・改正などを行って、国際的な海洋環境保全の取り組みに協力している。海洋汚染等防止法の最近の主な改正としては、船舶からの廃棄物の海洋投入処分を許可制としたほか、廃棄物の海域における焼却を禁止した。また、有害危険物質(HNS)による汚染事故への準備、協力に関する「OPRC‐HNS議定書」を実施するため、特定油以外の油や有害液体物質を積んだ船舶所有者に、排出油防除資材の備え付けを義務づけた。さらに、2007年には、廃棄物の海底下廃棄を禁止するとともに、CO2の海底下廃棄に関する許可制度を創設するなどの措置を盛り込む改正が予定されている。また、法規制に伴い国は有害性の確認がなされていない未査定液体物質の査定を行っており、2006年3月までに150物質を査定、告示した。

こうした規制にもかかわらず、海洋汚染につながる事犯は後を絶たない。2006年版環境白書によると、2005年に送致した海上環境関係法令違反件数(621件)のうち、有害液体物質や廃棄物の排出など海洋汚染に直接結びつく違反は581件と、全体の約94%を占めている。国は、6月と11月を「海洋環境保全推進週間」として、各地で海洋環境保全講習会など、海洋汚染防止指導を行っている。海洋汚染を防ぎ、海の環境を守るためには、一人ひとりが意識を持って活動することが大切だ。

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。