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「水質汚染」 詳細解説

読み:
すいしつおせん
英名:
Water Pollution

水質とは、水の汚れの程度のことだ。水は本来、多少汚れても、自然循環の過程で浄化される。しかし、産業の発展や人間活動の増大などの理由で、自然の浄化力を上回る量の有機物や有害な物質が循環プロセスに入り込み、水質が悪化することがある。これが水質汚染で、流域に人口や産業の集中している地域では、下水道施設の普及が十分ではなく、炊事や洗たく、入浴などによる生活排水が汚染の原因に占める割合が大きいと言われている。わが国で水質汚染により多数の住民が被害を受けた最初の事件として、1880年代後半に始まった足尾銅山鉱毒事件がある。その後も、1950年代後半、熊本県の水俣で工場排水からメチル水銀が水俣湾に流れ込み、住民に被害をもたらした水俣病などの公害事件が起きた。

このような水質汚染を防ぐため、水質汚染の基本的な枠組みを定めた「水質汚濁防止法」が1970年に成立した。公共用水域のすべてを対象として、特定事業場(特定施設を設置する工場、事業場)からの排水を規制する。また、工場や事業場から排出される汚水や廃液が人の健康に被害を与えた場合、事業者は過失がなくても損害を賠償しなくてはならないなど、被害者の保護を図る内容だ。その後の改正により、水質総量規制の制度化、地下水汚染の未然防止、生活排水対策なども盛り込まれた。

一方、農薬については、広範な地域で使用されており、使用することによって水産動植物に被害を与えるおそれがあるものや、水を汚染して人畜に被害を及ぼすおそれがあるものは、水質汚濁性農薬として農薬取締法で規制されている。また、バブル期にゴルフ場が急増し、芝生育成のための肥料や農薬による水質汚濁が懸念された際には、各都道府県で農薬の適正使用が打ち出され、排水口での水質調査などの監視が強化された。こうした一連の対策によって、わが国の水質汚染は改善の方向に向かってきている。

しかし、内湾や内海、湖沼については、水が滞留することによって汚濁物質が蓄積しやすいという特性があるほか、内湾や内海等の臨海部に人口や産業が集中するという社会的要因も加わり、水質改善が遅れている。また、洗濯や炊事、入浴などの日常の生活から流れ出る生活排水が河川や湖沼などを汚染する大きな原因になっていることから、行政でも、排水規制の徹底とともに生活排水対策を総合的に推し進め、下水処理施設の完備や合併浄化槽の普及を図っている。同時に市民に対して生活排水への意識を高めるよう呼びかけを行っている。さらに、汚濁物質の排出源を特定できる点源(ポイントソース)に対して、汚染源を特定しにくい面源(ノンポイントソース)への対策が必要とされている。

環境省では、公共用水域の水質測定や、水浴場の水質調査などを行い、その結果を公表している。また、市民に身近な水質に興味を持ってもらうため、水生生物による水質判定のマニュアルを作成し、各都道府県を通じて全国の河川で市民の参加による「水生生物調査」を実施している。

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