エネルギーの無駄を省く省エネや、電力を節約する節電の取り組みが広がっている。とくに2011年3月11日に起こった東日本大震災と津波により原子力発電所が大きな被害を受けて以降、電力のピーク時間帯における需給ひっ迫が顕在化し、計画停電を避けるためにも、電力需要の多い夏場などに節電の実施が求められるようになった。こうした中、電力需給の逼迫が予想される場合に、電力の需要家側が消費パターンを変動させて、電力の需給バランスを一致させる「デマンドレスポンス」という仕組みが注目されている。
具体的には、卸市場価格が高騰したり、系統信頼性が低下したりした時などに、電気料金の価格設定やインセンティブの支払に応じて、電力の使用を需要家の側で抑制する。デマンドレスポンスには、大きく分けて電気料金ベースのものと、インセンティブ(報酬)ベースのものがある。電気料金ベースのものは、電力会社が時間帯別の料金設定を行うことで、需要家が自身の判断によって、割高な料金が設定された高負荷な時間帯を避けて、割安な料金設定の低負荷な時間帯に電気を使うように誘導する仕組みだ。
一方、インセンティブベースのデマンドレスポンスは、電力会社や、広域的に系統計画の策定や需給調整を行う広域系統運用機関が、需要家との間で契約を結ぶことによって、卸電力価格が高騰したり電力需給が逼迫したりした際に、負荷の抑制や遮断などを要請、実施できる仕組みだ。節約できた電力量に応じて、電力会社などが顧客にインセンティブを支払う方法が一般的だ。経済産業省はこの方式の効果を把握するため、2013年11月に、インセンティブ型デマンドレスポンスの実証を開始した。
また、東京電力は2014年4月、2020年までに同社サービスエリアの全顧客に対してスマートメーターを設置する方針を明らかにした。デマンドレスポンスの実施には、電力使用量を計測して電力会社へデータを送信することができるスマートメーターの導入とそれによる住宅のスマートハウス化や地域のスマートシティ化など、スマートグリッドの構築が欠かせない。それだけに、他の大手電力会社による追随など今後の動向が注目される。地方自治体による取り組みとしては、東京都や横浜市などがデマンドレスポンスの実証事業を行っている。
民間事業者によるデマンドレスポンス関連のサービスも始まっている。NTTファシリティーズは、マンション入居者向けのスマートサービスとして「EnneVision」(エネビジョン)を提供している。契約マンションの入居者に対して、電気使用量や電気料金などを「見える化」することで、節電や省エネを支援するサービスだ。ライフスタイルに合わせて選択できる「時間帯別料金サービス」や、節電への協力が電気料金の節約につながる「節電ポイントサービス」なども含まれている。