誰もがより良い環境を享受できる権利のこと。ミシガン大学のサックス教授により1960年代後半に提唱された。1972年にスウェーデンのストックホルムで開催された国連人間環境会議で採択された人間環境宣言(ストックホルム宣言)において、人間の基本的権利であると明記された。そこでは、「人は、尊厳と福祉を可能とする環境で、自由、平等及び十分な生活水準を享受する基本的権利を有する」とされている。また、その後の国際条約なども、この考え方を踏襲している。
日本では、環境権は公害・環境訴訟の根拠として主張されるようになった。大阪国際空港公害訴訟では航空機の夜間飛行を差し止めるために環境権に基づき裁判で差し止め請求がなされるなど、いくつかの訴訟が環境権を根拠として起きている。また、環境権は、憲法第13条(幸福追求権)や第25条(生存権)を根拠とする基本的人権の1つであるとする考え方が学説の主流となっている。しかし、裁判所は環境権を具体的な差し止め請求権があるものとしては認めていない。環境権について明文の規定を置いた法律もない。ただし、環境基本法の第3条で、環境の恵沢の享受と継承を定めるとする規定が環境権にあたるとする考え方もある。いくつかの自治体の環境基本条例では環境権が明記されているものもある。最近では、憲法改正論議の中で、憲法を改正して新たな基本的人権として環境権を位置づけようとする動きがある一方、現行憲法で環境権が基本的人権であることは解釈で十分に導き出せるとする環境NGO/NPOなどの意見もある。海外では、コスタリカなどの国が憲法で環境権を定めている。