人にいやな思いや不快感を与える臭気のこと。典型7公害のひとつで、工場や事業所、し尿・下水道などから発生する。人により感じ方が異なるため、騒音、振動と同じく「感覚公害」と呼ばれることもある。発生源は、製造工場、サービス業、畜産農業、一般家庭などさまざまで、「焼肉臭」のように特定の飲食店から発生する臭いに対する苦情も増加している。
悪臭を防止することを目的として1971年に悪臭防止法が制定され、その後数回にわたって改正されてきた。同法はアンモニアなど22物質を特定悪臭物質に指定して、事業場の敷地境界や煙突などにおける悪臭を規制している。また、排水から発生するメチルメルカプタンなどの物質について濃度の規制基準を定めている。規制の流れは、都道府県知事が規制地域を指定し、市長が環境省令の範囲内で規制基準を定める。違反があれば改善の勧告や命令を発し、従わない場合には罰則が適用される。
一方、さまざまな物質の臭いが混ざった複合臭気にも対応可能なのが、臭気指数規制だ。人間の嗅覚によって悪臭の程度を数値化するため、住民の被害感覚と一致しやすい。測定法は、特定悪臭物質に関しては機器分析で行い、臭気指数に関しては人の嗅覚によって悪臭を測定する嗅覚測定法を用いる。