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コーヒーで旅する日本/九州編|楽しみ方は人それぞれ。その人に合った自由なコーヒーを追い求めたい。「MIGLIORE COFFEE」

  • 2024年4月15日
  • Walkerplus

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

九州編の第91回は山口県防府市にある「MIGLIORE COFFEE(ミリオーレ コーヒー)」。スーパーマーケットの駐車場の一角にあり、まさに地域の暮らしに根付いたコーヒーショップという印象。店を営むロースター兼ブリュワーの中島大樹さんはもともと公務員だった異色の経歴の持ち主だ。2023年に同じ防府市内にカフェメインの「AWESOME COFFEE BREWERS by MIGLIORE COFFEE」、山口市内に「MIGLIORE COFFEE ROASTERS 山口店」を開業し、今年秋にも新店舗オープンを控えているという。防府市を中心に人気を集めている今、中島さんが考えるコーヒーの魅力、楽しみ方、純粋に自身が感じているおもしろさについて聞いてみた。

Profile|中島大樹(なかしま・だいじゅ)さん
福岡県福岡市生まれ。九州大学大学院卒業後、公務員として約7年間、勤務。大手コーヒーチェーンにて働いたあと、独立。2018年(平成30年)3月に「MIGLIORE COFFEE」を開業し、ロースター、ブリュワーとして腕を磨く。2023年4月に「AWESOME COFFEE BREWERS by MIGLIORE COFFEE」、同年12月に「MIGLIORE COFFEE ROASTERS 山口店」、さらに今年10月に防府市内に4店舗目を開店予定。山口コーヒーフェスティバルの実行委員長も務めている。

■地域の人たちの暮らしを支える場所の一角で
JR防府駅から車で約10分ほどの場所。駅からタクシーに乗り、住所を伝えると「あー、まるきの横にあるコーヒー屋さんですね」と運転手さんが言うように、地元民の間では「まるき」の名で親しまれるスーパーマーケットの敷地内に「MIGLIORE COFFEE」はある。

スーパーマーケット自体はいたって普通の店で、「MIGLIORE COFFEE」は、もし店前に掲げられたコーヒーと書かれたノボリがなければ、遠目にはスーパーに隣接したクリーニング店と思うかもしれない。オーナーの中島大樹さんは「まさに私が店を開く前、もともとここはクリーニング店でした。ちょうど焙煎所として利用できる物件を探していたとき、買い物で訪れて偶然見つけまして。建物のサイズ感も、場所もちょうどいいうえ、焙煎機を置くこともでき、すぐにここに店を開くことに決めました」と開業した当時を振り返る。

「MIGLIORE COFFEE」が開業したのは、2018年(平成30年)3月。もともと福岡市出身で、九州大学大学院を卒業した中島さんが防府市を拠点にした理由を聞いてみた。「大学卒業後、防府で公務員として働いていたんです。日々働く中で仕事中などにコーヒーを頻繁に飲むようになり、徐々に淹れ方や豆にこだわるようになっていきました。最初はインスタントコーヒーからドリップバッグ、次はドリッパーとケトルを買ってハンドドリップを覚えて、小さなグラインダーを買って挽きたての豆で淹れたコーヒーのおいしさに感銘を受けたり。そんな感じで普通にコーヒーにハマっていきましたね。公務員として7年ほど勤め、その時期にはコーヒーが大好きになっていて、できることならコーヒーと関わりながら生きていきたいと考えるようになっていました。そんな時にちょうどコーヒーショップを全国展開している企業が社員募集をしていて、転職したのが私のコーヒー業界への入口です」

コーヒーチェーンで働いたのは1年弱と短かったが、さまざまな知識に触れるにつれ、中島さんの興味は一気に焙煎に傾いた。「実際にコーヒー業界に身を置くようになって強く感じたのが焙煎の大切さでした。ガスコンロで焙煎できる小さな器具を購入し、自分で焼いてみると、これがただ苦いだけだったり、変な酸味が残ったり、全くおいしくない。ただそれでも焼き続けていると、ある日偶然かもしれませんが、めちゃくちゃおいしく焙煎できたんです。それを機に自分が好きな産地の生豆を仕入れて、自分なりのコーヒーを焙煎で表現したいという想いを強くしました。それからは一気に独立・開業するためのベクトルに変わりましたね」と中島さん。

■その豆に合った焙煎を模索する日々
そんな中島さんが営む「MIGLIORE COFFEE」は焙煎所を兼ね、豆売りがメイン。メキシコ、ブラジル、ニカラグア、ケニア、エチオピアなど各国の生豆を仕入れているが、最も思い入れがあるのが東ティモールの生豆だという。「自分で焙煎を始めて最初においしく焼けたといういい思い出もありますが、オーガニックで栽培されており、純粋に生豆自体の品質がいい。さらにNPO法人を通して生豆を仕入れており、生産者さんの顔が見えるんです。そうなると一層思い入れが強くなりますね。当店では基本的に東ティモールの豆は浅煎りと中深煎りと焙煎度合いの異なる2種のコーヒーをご用意しております」と話し、最初に浅煎りの東ティモールを淹れてくれた。雑味がなく、クリーンな味わいで、すっと飲めるという印象。その後、中深煎りも飲んでみると同じ豆とは思えない深み、コクが主張してくる。同じ豆でも焙煎によって味わいがガラリと変わる手本のような味作りだ。

焙煎機はフジローヤルの直火式。開業時からスペシャルティコーヒーに特化することを決め、業界のトレンドを考えると半熱風式を選ぶのがセオリーだと感じたとのこと。なぜ直火式を採用したのか聞いてみた。「Bespoke Coffee Roastersの畠山大輝さんの影響が大きいです。畠山さんが直火式で焙煎したコーヒーを飲んだとき、すっきりとしたあと味で嫌な雑味を全く感じなかったんです。この体験を通して、これこそが私が理想とする味わいだと実感できました。ちょうど破格で直火式を手に入れることができるタイミングだったのも幸運でした」と中島さん。ただ、直火式は火力の調整が難しいため、失敗を繰り返しながら、理想的な焙煎の方法、生豆の種類ごとのプロファイルを独自に構築してきたそうだ。

■“こうあるべき”という固定概念は捨てて
「MIGLIORE COFFEE」は2023年4月に同じ防府市内に「AWESOME COFFEE BREWERS by MIGLIORE COFFEE」、同年12月に山口市内に「MIGLIORE COFFEE ROASTERS 山口店」を次々と開業し、規模を拡大しているところだ。

最後に今後、中島さんが目指す店のスタイル、コーヒーとの関わり方、味わいづくりなどについて聞いてみた。「私は“こうあるべき”、“これが普通”、“常識的に”という考え方が好きではありません。特にコーヒーは嗜好品ですし、飲む方が好きに楽しめばいいと考えています。だから、お客さまにもこちらの考えを押し付けることなく、自由にコーヒーを楽しんでいただけるような店づくりをしていきたいです。2024年10月には新たに完成する防府競輪の公園スペースに新店舗をオープンさせる予定で、より幅広い方々にコーヒーやカフェで憩う時間を楽しんでいただけたらと思っています。私個人としてはハンドドリップチャンピオンシップに挑戦して、より自身が狙ったコーヒーの味わいに抽出できる技術を磨いていきたいですね」

■中島さんレコメンドのコーヒーショップは「ウミノネコーヒー焙煎所」
「山口県下関市にある『ウミノネコーヒー焙煎所』さん。山口コーヒーフェスティバルに参加いただいたことでつながりができました。コーヒーはもちろん店で手作りするスパイスカレーが絶品です」(中島さん)

【MIGLIORE COFFEEのコーヒーデータ】
●焙煎機/フジローヤル3キロ直火式
●抽出/ハンドドリップ(メリタ波佐見焼コーヒーフィルター、ネル)、エスプレッソマシン(SANREMO)※店舗により異なる
●焙煎度合い/浅煎り〜深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/120グラム1000円、240グラム2000円




取材・文=諫山力(knot)
撮影=加藤淳史(Saint-Loup-de-Varennes)

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