コンビニ夜勤中に強盗が押し入った！怖気づく“新人”を前に、“店長”は勇敢にも立ち向かうが――？
創作漫画「熱血で勇敢なコンビニ店長の話」は2023年12月、「ポンコツお嬢様と陰キャ世話係」(単行本第1巻は2024年1月9日発売)を連載中の漫画家の野愛におし(@nioshi_noai)さんがX上に投稿した作品。夜勤中でも「がんばろうな！」と熱血な店長が、新人店員を守るためコンビニ強盗にほうきを投げたりたばこの棚を倒したりと抵抗するが、“新人”のネームプレートには“店長”と記されていて……というストーリーの短編漫画だ。
本当の店長は怯えていた男性の方で、強盗を追い払った“店長”は何者だったのかは最後に明かされる。8ページの中で、結末を知ると多くの伏線が詰まっていることに気付く構成となっている。X上では2000件を超えるいいねとともに、読者から「これは最高のやつです」「涙で前が見えねえ」と感動の声が寄せられている。自身でもお気に入りの作品だと話す作者の野愛さんに、同作を描いたきっかけや、短編で描いた仕掛けについて話を訊いた。
■「がむしゃらに取り組んでいた」思い入れの深い短編
――本作を描いた経緯と、どんなところから作品の着想を得たのか教えてください。
【野愛におし】こちらは、2021年に開催された「世にも奇妙な物語×少年ジャンプ＋ presents 『奇妙』漫画賞」へ応募した作品でした。世にも奇妙な物語は好きでよく見ているのですが、時々「観終えた後のすごく気持ちの良い作品」がありまして、その枠を狙ったつもりでした。入賞作品と比べるとやはり内容が短く、ひねりが少し足りなかったなと思っておりますが、得たものは大変多かったです。なにより自分らしさをしっかり出したうえで描き切ることができた作品ですので、作品自体には大変満足しております。
――結末で「熱血店長」が何者かが明かされますが、振り返って読むとハッとする仕掛けが多い構成だなと感じました。
【野愛におし】最後のページで真相がわかり、もう一度1ページ目から読み返し、細かい伏線を回収するような作りにしたいと思っておりましたので、そういっていただけてとてもうれしく思っております。
すごく細かい部分ではありますが、1ページ目の2コマ目では視線誘導を使い、“(1)“店長”の横顔→(2)棚に貼ってある「あけたらしめる」の張り紙→(3)座り込んだ“新人”→(4)“新人”のセリフと目線が動くようにしてあります。実はその「あけたらしめる」の上にはラストページで出てきた新聞の切り抜きがあります。が…少し小さくしすぎてわかりづらかったかなと思っております(笑)。
――店長の「強盗ってはじめて」と言う台詞は、強がってみせたのか、はたまたかつて子どもを助けたのは違う事件だったのかなど、さまざまな解釈ができると思いました。野愛さん自身はどんなイメージで描かれましたか？
【野愛におし】物語に直接影響がないと思って割愛し、店長がどんな事件に巻き込まれたのかは読んだ方へのお任せをしておりましたが、実は当初は「川でおぼれたところを助けた」という設定にしてありました。勤める店内に留まらず、外でも頼られ活躍しているキャラということがわかるように、切り抜きに書かれた泥棒退治も、別の店からの相談を受けて手伝ったので「一肌脱ぐ」という表現にしております。
ちょうどこのころは、セリフや文章を減らす練習をしていて、昔の作品を読み返したり、こうして今になって深堀すると当時できていなかったことや気づきがたくさんあるので勉強になります。
――本作は「ずっとお気に入り」の作品とうかがいました。野愛さんにとってどんな思い入れがあるのか教えてください。
【野愛におし】先述の「奇妙」漫画賞では受賞とはなりませんでしたが、描くなかで得たものが多く、また今後の課題が明確になった作品ですので、大変思い入れがあります。
プロットから練りなおすか、作画だけでも描き直そうかと何度も思いましたが、ラフですが自分らしさが思い切り出ている作画が少し気に入っている部分もあり、過去のがむしゃらに取り組んでいた頃の自分のこの感じを忘れないためにも時々読み返しているので今でも大事にしている作品です。
取材協力：野愛におし(@nioshi_noai)
