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コーヒーで旅する日本/四国編|高松に神戸からの新風。「LIMA COFFEE ROASTERS TAKAMATSU」が街に広げる、新たなコーヒーカルチャー

  • 2023年9月7日
  • Walkerplus

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。瀬戸内海を挟んで、4つの県が独自のカラーを競う四国は、各県ごとの喫茶文化にも個性を発揮。気鋭のロースターやバリスタが、各地で新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな四国で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが推す店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

四国編の第6回は、香川県高松市の「LIMA COFFEE ROASTERS TAKAMATSU」。本連載の関西編にも登場した、神戸のLima Coffeeの県外初の姉妹店だ。2017年のオープン以来、喫茶店文化が根強かった高松のコーヒーシーンに、新たな風を吹き込む存在として注目を集めてきた。

今まで界隈にはなかった、カジュアルなコーヒースタンドは、いまやすっかり街に欠かせない存在として定着し、オープンな雰囲気の店内は老若男女が集う拠り所に。さらに、2年前から店長を務める須田さんは、メルボルンでのバリスタ経験を生かして、スペシャルティコーヒーの魅力を広げる取り組みに注力。新たな試みで、高松のコーヒーシーンをさらに盛り上げる一軒だ。

Profile|須田浩暉 (すだ・こうき)
1997年(平成9年)、千葉県生まれ。ワーキングホリデーでオーストラリア・メルボルンに渡り、現地のコーヒーカルチャーに触れてバリスタの道へ。現地のローカルカフェで約1年経験を積んだあと、奥様の地元・香川の土地柄に惹かれ、帰国後に移住。2020年から、「LIMA COFFEE ROASTERS TAKAMATSU」のスタッフとして店に立ち、2021年から店長を務める。

■高松のコーヒーシーンを変えた神戸からの新風
高松から、“こんぴらさん”を結ぶ琴平電鉄、通称ことでんのターミナル、瓦町駅。駅前の目抜き通りを歩くと、ほどなくして現れる「LIMA COFFEE ROASTERS TAKAMATSU」の真っ白な店構えは、街なかでも目を引く存在だ。一見、間口は狭いが、奥行きのあるフロアでは、老若男女を問わず幅広い世代が、思い思いのコーヒーブレイクを楽しんでいるのが印象的だ。

「僕がここで働こうと決めた理由は、スタッフ、お客さんも含めて、生き生きとしている人が集まっているから。年齢も高校生からご年配まで幅広く、ウェルカムな雰囲気とコミュニティの広がりに心地よさを感じました」とは店長の須田さん。神戸に本店を持つLima Coffeeの初の姉妹店としてオープンしたのが5年前。当時はサードウェーブの波が広がり始めた頃だが、「この店ができるまで、高松ではスペシャルティコーヒーのロースターや、スタンドスタイルの店はほとんどなかった」という通り、新たな波はまだ届いていなかった。そんな中で、「LIMA COFFEE ROASTERS TAKAMATSU」の登場は、界隈のコーヒーシーンを大きく変える存在だった。

Lima Coffeeを高松に呼び込んだのは、初代店長にして現在はマネジャーを務める林 憲太郎さん。学生時代を過ごした関西でコーヒーシーンの変化をいち早く感じ、神戸の本店に足繫く通っていたことが縁で、地元香川への姉妹店出店に参画。昔ながらの喫茶文化が根強い香川に、関西から新たなコーヒーカルチャーを根付かせることができればおもしろい、との思いから高松を勧めたことで実現したのがこの店だ。須田さんが店に立つようになった3年前には、「年齢関係なくコミュニケーションを取っている店内の光景に、メルボルンのカフェと同じ空気を感じられた。コーヒーを通じて人が集まっている場所が、日本にもあったんだと思いました」と、すっかり街に欠かせぬ場として定着している。

■土地柄に合わせたオリジナルメニューを提案
とはいえ、神戸のスタイルをそのまま持ち込んだわけではない。「地域が変われば求められるものも変わるから、高松店は独自にやらせてもらっている。目指すベースは同じですが、見た目もメニューも、いい意味で全く違います」という須田さん。コーヒーのメニューも、看板のLimaブレンドこそ共通しているが、ほかのブレンドの配合、シングルオリジンの品ぞろえも独自のものだ。神戸はサイフォンを主体とした中深煎りがベースだが、高松では浅煎りのレンジも幅広く、シングルオリジンは全16種~18種を時季替わりで入れ替え。ペーパードリップで多彩な豆の個性を提案する。

また、軽食メニューもオリジナルで考案。今年リニューアルしたモーニングプレートは、出勤前の地元の人々や海外からの旅行者にも好評。さらに、素材を吟味したホットドッグも新たに登場し、テイクアウトでの人気が高い。「高松のお客さんはフードを好む人も多いので、スペシャルティの豆を並べつつ、軽食とのペアリングも特徴の一つになってます。繁華街のど真ん中にあってランチの店は充実しているので、食後のコーヒータイムに立ち寄ってもらえる場所として定着してきました」と須田さん。近年は豆の販売や卸の量も増えて、「今は焙煎が追い付かないほど」と、ロースターとしても確かな手ごたえを感じている。

さらに、須田さんが店長になってからは、メニューに豆のスペックやカッピングコメントを添えるなど、スペシャルティコーヒー専門店ならではの提案に注力。この志向の変化は、須田さんがメルボルンのカフェカルチャーを経験してきたことも大きい。「現地では、お客さんは日々さまざまなコーヒーに触れる機会があって、そこから自分なりのオーダーを作っていきます。日本ではラテのイメージが強いですが、シングルオリジンのおもしろさをもっと伝えるべく、バリエーションを拡げたい。その中で、まず風味の個性を楽しんでもらいたいですし、ここに来たら、それを求めたくなるような提案ができれば」と須田さん。地元出身ではないからこそ、外からの新鮮な視点を持ち込める強みを生かして、独自のカラーを打ち出しつつある。

■専門店としてコーヒーのクオリティーを追求
「最新のスペシャルティコーヒーを伝え、おいしく飲める場所でありたい」。そのためにも、自らがバリスタとしての存在感を高めたいという須田さん。競技会への参加や焙煎のトレーニング、全国のロースターが集まるイベントでコーヒーを淹れるなど、研鑽を積んでいる。コーヒーを通していろんなカルチャーに触れるのが、Lima Coffeeのコンセプトとしてあるが、それでも、「自分はコーヒーが好きで、コーヒー専門店として大事なのはコーヒーのクオリティー。しっかりとした技術を伴った一杯を提案するためにも、バリスタとして技術を磨いて、コーヒーを淹れるプロとしてお客さんを呼べるようになりたい」と意気込む。

「LIMA COFFEE ROASTERS TAKAMATSU」の開店以降、高松ではここ3、4年で、新たなコーヒーショップのオープンが相次いでいる。「ありがたいことに、“Limaができてから、スペシャルティコーヒーを出す店が増えた”といったことを、同業者に言われることが増えましたね」と須田さん。その点では、神戸からの新風というのは、大きなインパクトをもたらしたと言える。とはいえ、コロナ禍を挟んでの店作りの取り組みは、まだまだこれからだ。「ラテや抽出の教室やパブリックカッピングもできればと思うし、街のコンパクトさを利用して、新たにできたコーヒーショップを巻き込んで、連携してコーヒーの飲み比べなんかもできればいいなと思う。そのためにも、自分もバリスタとしてもっとパワーアップしたい」。変わり始めた高松のコーヒーシーン、これからさらにおもしろくなりそうだ。

■須田さんレコメンドのコーヒーショップは「仏生山珈琲 回」
次回、紹介するのは、同じ高松市にある「仏生山珈琲 回」。「2021年にオープンしたばかりの姉妹店ですが、50年近く続いた喫茶店を引き継いだ店は、店構えも内装も、照明のトーンまでも、こことは全く違う世界観。コーヒーもブレンドを中心にして、ハンドドリップで1杯立て。昔ながらの喫茶店メニューも幅広くそろっています。温泉地として有名な仏生山は、再開発が進み、人が集まっているエリアでもあり、新たなコミュニティの場になりつつあります」(須田さん)

【LIMA COFFEE ROASTERS TAKAMATSU のコーヒーデータ】
●焙煎機/ディードリッヒ2.5キロ(半熱風式)
●抽出/ハンドドリップ(ハリオ)、サイフォン、エスプレッソマシン(ラマルゾッコ)
●焙煎度合い/浅~中深煎り
●テイクアウト/ あり(450円~)
●豆の販売/ブレンド2種、シングルオリジン8種、100グラム650円~

取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治

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