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コーヒーで旅する日本/東海編|さまざまなタイプの味わいから、自分の好みを見つけてほしい。「BUNT COFFEE」

  • 2023年7月12日
  • Walkerplus

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも名古屋の喫茶文化に代表される独自のコーヒーカルチャーを持つ東海はロースターやバリスタがそれぞれのスタイルを確立し、多種多様なコーヒーカルチャーを形成。そんな東海で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

東海編の第30回は、愛知県安城市にある「BUNT COFFEE」。喫茶店に馴染みのある環境で育った店主の竹下達也さんは、訪れる人が笑顔になれるようなカフェの開業を志した。この想いが根底にあるからなのか、竹下さんの店は、家族連れから年配の方まで幅広い年齢層が集うアットホームな雰囲気に。朝はモーニング、昼はブランチ、夕方はスイーツと、どの時間帯も明るい笑顔に溢れている。そんな楽しい時間にいつでもそっと寄り添う、自家焙煎のコーヒー。「攻めすぎないバランスを狙っています」と話すように、どんな人でも受け入れやすい味づくりを心がけている。

Profile|竹下達也(たけした・たつや)
1989年(平成元年)、愛知県刈谷市生まれ。社会人となり会社勤めをするうちに「たくさんの人の笑顔が見たい」とカフェ開業を志し、コーヒーを学ぶ入口として「スターバックス」でアルバイトを始めた。コーヒーの味の違いなどを知っていくうちにどんどん興味が湧き、喫茶店や自家焙煎コーヒー店でも経験を積んだ。独立するにあたって地元である三河地区で物件を探し、2017年に愛知県安城市に「BUNT COFFEE」をオープン。比較的焙煎度合いの浅いものを用意し、コーヒー好きの裾野を広げるべく奮闘中。

■愛知県らしさを感じられる喫茶店
日本デンマークとうたわれ、農業先進地として発展してきた愛知県安城市。今も市の大部分を農地が占め、開けた地形に田畑が広がるのどかな景観が広がっている。名古屋方面から知立市、刈谷市を経由して南北に縦断する国道23号知立バイパスは市民にとって欠かせない主要道路のひとつであり、今回の目的地である「BUNT COFFEE」は知立バイパス・高棚福釜ICからすぐの場所にある。近くにはファーマーズマーケットや図書室を擁する公民館があり、この地に暮らす人々にとってなじみ深いエリアだ。

大きな窓から光がたっぷりと降り注ぐ店内は、明るく落ち着いた雰囲気。朝7時30分の営業開始とともに近所の人々がひとり、またひとりとやってきてはコーヒーを注文し、話に花を咲かせる。

東海エリアの喫茶店らしく、モーニングメニューも充実している。スタンダードなスタイルである厚切りバタートーストとゆで卵のセットはドリンク代のみでOK。そのほか、ドリンク代に数百円をプラスすればホットサンドやホットドッグ、フレンチトーストなども選べ、そのバリエーションは10種類以上にも及ぶ。

「なるべく素材のよさを感じられるものを使いたいと思っているので、ハムやソーセージは愛知県田原市のブランド豚である田原ポークを使っています。カップやソーサーは、愛知県常滑市の伝統的工芸品である常滑焼。無釉薬で仕上げるきめ細かな土肌の質感は常滑焼の特徴であり、それをシンプルな形とかわいらしい色でモダンに仕上げたシリーズです。猫の手の肉球マドラーも常滑焼なんですよ」と話すのは、店主の竹下達也さん。安城市に隣接する刈谷市の出身であり、「三河地区で開業したい」と、ここで自家焙煎のコーヒー店を営んでいる。

スイーツも竹下さんの手作りであり、チーズケーキは時期によってアレンジチーズケーキも登場。取材時は愛知県西尾市の抹茶を使った抹茶チーズケーキを提供していた。ほろ苦い抹茶の風味は、コーヒーとも相性がいい。このように、竹下さんが選んだ素材のよさと自家焙煎コーヒーの取り合わせを楽しんでもらうのが「BUNT COFFEE」のスタイル。地元の人にとっては憩いの場であり、ほかの地域から訪れる人にとっては愛知県らしさを感じられる場所と言えるだろう。

■幅広い好みに対応できるラインナップ
「BUNT COFFEE」ではシングルオリジン6、7種類、ブレンド3種類がメニューに並び、扱う豆の種類はバラエティに富んでいるが、果実味や甘味を大切にした軽めの焙煎をメインにしている。「当店の豆はすべてスペシャルティコーヒーです。コクや深みに重きを置いた昔ながらの深煎りはクラシカルビターブレンドの1種類のみで、そのほかはこれまであまり馴染みがなかっただろうクリーンで軽やかな焙煎にしました。私自身、浅めのコーヒーを飲んで今まで持っていたコーヒーのイメージが一変した経験をしているので、お客様にも『こんなコーヒーがあるんだね』という驚きと魅力を感じてもらえるとうれしいです」

エスプレッソメニューは、ビターとマイルドから選んでオーダーできるようになっている。ビターには店のラインナップで唯一の深煎りであるクラシカルビターブレンドを、マイルドには看板コーヒーであるバントブレンドを使用する。

「ブラジルにエチオピアとインドネシアを加えたバントブレンドは、ナッツやベリーのような香ばしさと甘さに、ほのかな苦味を感じさせます。これをエスプレッソで抽出してミルクと合わせると、香りと甘さが際立つ軽やかなカフェラテになります。一方、クラシカルビターブレンドにはビターなチョコレートを思わせるコクと苦味があり、ミルクと合わせても飲み応えのあるカフェラテになります。飲み比べてみると、結構味わいに違いが感じられると思います」

■産地ごとの特徴をわかりやすく紹介
いろいろな種類の豆をたくさん用意できるよう、焙煎機は小型の1キロ釜にしている。「修業時代は5キロの焙煎機を使っていましたが、当店の規模感でそうすると細かい焙煎ができないので、小さいものを選びました。実際に焙煎してみると排気の抜けがよく、当店でメインとなる中程度の焙煎度合いには非常に向いている機体だと感じています」

竹下さんの焙煎は、フルーティーなエチオピア、軽くてクリーンなグァテマラ、酸味と苦味のバランスが取れたブラジル、というような産地の特徴をわかりやすく表現する。「浅すぎず、深すぎず、でも産地の特徴はちゃんと感じられるポイントを狙っています。『コーヒーに対してそこまで詳しくないけれどおいしいコーヒーを飲みたい』というお客様にも楽しんでいただけるように、あまり攻めすぎないように、でもそれぞれの違いを感じられるようにできればと思っています」

産地の特徴を表現したいという想いは、焙煎だけでなく抽出でもポイントに。「ドリッパーはハリオV60を使っています。台形ドリッパーよりも円錐ドリッパーの方が扱いに慣れていましたし、注ぎのやり方で狙った味を作りやすいですね。シングルオリジンでも、国ごとに特徴的な味わいとしてブレないものを提供したいと思っています」

■コーヒーの多様性を知る入口でありたい
コーヒー好きから、コーヒーにあまり馴染みのない人まで、どんな人にも楽しんでもらえるようなラインナップにこだわる姿勢には、「みんなに笑顔になってもらいたい」という竹下さんの想いが表れている。「コーヒーには本当に多種多様な味わいがあって、どんなコーヒーがおいしいのかを考えても、結局は飲む人の好みによるところが大きいんです。だから、店ごとに違った味づくりをするのです。そういう意味で言えば、当店の味づくりのポイントは『多様性』。いろいろなコーヒーがあることを知ってもらえるような、奥深いコーヒーの世界への入口となれるような店を目指しています」

メニューブックを改めて見ると、味の違いを直観的に把握できるチャートをのせつつ、品種や精製方法、標高などのデータも明記されていた。これなら、コーヒーに詳しい人もそうでない人も、どのコーヒーにしようか選びやすいだろう。そして、種類豊富なラインナップから1種類を、日替わりサービスコーヒーとして1杯550円というお値打ち価格で提供していた。こうすることで、ひょっとしたら普段は選ばないコーヒーでも「お値打ちなら」と飲んでみたくなる。いろいろなタイプのコーヒーを知ることで、自分の好みにも気付くだろう。

自分の好きなコーヒーを知れば、例えば地域や標高、精製方法などに類似点を見つけることができるかもしれない。豆の販売パッケージにこれらのデータがしっかりと記載されているのを見て、知りたいときにほしい情報がさりげなく提示されているのだと納得した。店の雰囲気、味づくり、提供方法、ラインナップに至るまで、「BUNT COFFEE」を取り巻くすべてが「いろいろなコーヒーがあることを知ってほしい。自分の好みを見つけてほしい」という竹下さんの想いに結実していた。

■竹下さんレコメンドのコーヒーショップは「Q.O.L.COFFEE」
「東海エリアで好きなコーヒー店を考えたときに、『名古屋といえばこのお店!』とパッと思い浮かんだのが名古屋市中区丸の内にある『Q.O.L.COFFEE』です。コーヒーもおいしいですし、いろいろな産地のものを楽しめます。オーナーの嶋さんとはコーヒー業界の知人を通じて知り合ったのですが、気さくな人柄の素敵な方です。焙煎度合いが浅いものから比較的深いものまでありますし、どんな方でも受け入れてもらえるようなラインナップになっているところにも共感しています」(竹下さん)


【BUNT COFFEEのコーヒーデータ】
●焙煎機/ハマ珈琲半熱風式1キロ
●抽出/ハンドドリップ(ハリオV60)、エスプレッソマシン(ラ・マルゾッコ リネアミニ)
●焙煎度合い/浅煎り~深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100グラム800円~

取材・文=大川真由美
撮影=古川寛二


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