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伝統と革新が融合し新たな歴史を刻む。 スターバックスのJIMOTO Made新作は北九州発・小倉織のバッグ

  • 2023年4月18日
  • Walkerplus

スターバックスでは2015年から、日本各地の工芸や産業を用いた商品を開発し、その地元の店舗のみで販売する「JIMOTO Made」を展開している。シリーズ16弾として、福岡県北九州市の店舗限定で「小倉織ミニバッグKITAKYUSHU」と「小倉織ミニバッグMOJIKO」(各6,550円)が4月24日(月)に発売となる。このミニバッグに込められたストーリーを追った。

■骨董品店での出合いから始まった小倉織の新たなストーリー
九州の最北端・福岡県北九州市は日本海や瀬戸内海に面し、中央部には国定公園に指定された山間部もある自然豊かな都市。同市には江戸時代から伝わる綿織物・小倉織(こくらおり)がある。先染めした木綿糸で織り、丈夫で滑らか、そして美しい立体的な縞模様が特長だ。

1600年代から作られていた小倉織は、江戸時代には武士の袴や帯に用いられ、徳川家康が鷹狩の羽織に愛用したという記録も残る。明治期にはバンカラな夏の学生服として全国的に人気となった。300年以上続いた歴史は時代の流れから昭和初期にいったん終わりを告げたが、染織家・築城則子さんが1984(昭和59)年に手織りで復元・再生させた。現在は築城さんの弟子が独立するなど作家たちの活動も広がりを見せる。

きっかけは市内の骨董品店で小倉織の端布(はぎれ)に出合ったこと。濃紺、白、藍、青の美しいグラデーションとつややかな質感に魅了されて小倉織を研究。自身で染めた糸で何度も手織りし、小倉織の新たな歴史が始まった。「小倉織ミニバッグKITAKYUSHU」と「小倉織ミニバッグMOJIKO」には築城さんがデザイン監修をする機械織の小倉織ブランド「小倉 縞縞」の生地が使われている。

■縞のグラデーションの美しさの理由
小倉織の魅力は、プリントではないからこその立体的な縞柄。この美しいグラデーションは、どのように生まれるのか、小倉 縞縞の生地を製造する市内の織物工場を訪ねた。

美しさの秘密のひとつは糸にある。監修をする築城さんは草木染の糸を用いて手織りで作品作りを行う染織家。小倉 縞縞の生地の糸は草木染ではないものの、木や葉を使う草木染の日本ならではの自然の色にできるだけ近づけて染色された糸を使っている。幅広い濃淡の糸があり、それがグラデーションを生む要だという。

もうひとつは築城さんの緻密なデザインをもとに丁寧に織り上げること。どの色を何本並べるかまで細かなレシピがあり、デザインをコンピューターに入力して整経機(せいけいき)で経糸(たていと)を並べる。小倉織は一般的な織物の2倍以上の経糸を用いることで密度が高くなり、緯糸(よこいと)が見えないため、経糸の並びが縞柄として生地に現れる。また、高密度なうえ2本の糸をよった双糸(そうし)を使うことで丈夫な生地になるのも特長だ。

この整経機は約4年前の導入時には、全国でも取り扱いが非常に少なかった最新式のもの。最大16色の糸がセットできることで色使いが多彩になり表現の幅が広がるのだ。

巻き終わった経糸は織機に移され、糸一本一本が丁寧にセットされる。すべての糸をコントロールしながら、緯糸が織り込まれて生地になる。

織り終えると、傷や糸の飛び出しがないかなどをチェックする検反を行う。人の目と手の感触で確認した後、生地を仕上げする洗いの工場に出して完成となる。

見学している間も、織り具合を確認したり、機械に糸をセットしたりと、職人たちが動き回り、機械織といっても人の手が多く入っていることがわかる。職人は現在4人。
「糸の色や数など整経機へのデザインの入力は縞柄の肝になるので、とても気を使います。1つのデザインで2時間ほどかかるものもあり、それをダブルチェック。機械織とはいえ手作業もたくさんあるので、規模が小さい工場だからこそ、丁寧に作ることを心がけています」と工場長の三満田 巧さんが教えてくれた。緻密なデザインと、職人たちの丁寧な作業で、美しい縞が生まれているのだ。

■革新を恐れず、時代に合ったモノづくりを
「縞の表現は無限。色が1本違えば、違う表情になるんです」と小倉織の魅力を語るのは、株式会社小倉縞縞 専務取締役の築城弥央さん。染織家・築城則子さんが小倉織を手織りで復元・再生して約40年がたつが、一度途絶えたこともあり、小倉の地ですら知名度は高くなかった。小倉織をもっと広く伝えていくために機械化をしようと、2007年に機械織のブランド「小倉 縞縞」を、2018年に製造を担う工場として小倉織物製造株式会社を立ち上げた。小倉織の縞の美しさと丈夫さを機械織で表現し、これまでに作られた生地は約140種もあるという。

小倉織にとって革新を恐れないことを大切にしていると、弥央さんは力強く語る。それは、過去と同じことをしていては、また小倉織が途絶えてしまうという危機感があるから。

「小倉織はもともと袴地や帯地として使われていましたが、ブランドを始めるときに、そうした用途をメインにするのではなく、現代のライフスタイルに合わせて幅広く展開すると決めました。小倉 縞縞がスタートしてから15年の間にも、世の中に求められているものがめまぐるしく変わってきていると感じています。伝統に寄りかかりすぎてしまうと、革新に消極的になってしまう。小倉織が悲しい歴史をまたたどることのないよう、伝統を守っていくには新しいチャレンジが必要だと考えています」

手織りよりも広い幅の生地を作ることができる機械織では、手織りにない可能性が見えた。ブランドは小倉織の生地を販売するほか、雑貨や服など日常に取り入れやすいアイテムを開発・販売。また、ブランド立ち上げ当初から国内外の展示会にも積極的に参加。カーテンや壁紙、家具の張り地などのインテリア、ホテルやオフィスの空間プロデュースなど、小倉織の魅力を生かした活動を展開。新しい発想を大切にし、多様な人材を異業種からも採用している。

縞の表現だけでなく、新しい素材を使った生地開発にも意欲的だ。コロナ禍に生まれたのが、綿糸の経糸に、再生糸の緯糸を用いたサステナブルな生地。コロナ禍を経験した私たちは、もっと地球に目が向くのではないかと思ったからだとその意図を語る。
「生地を使うことで循環される仕組みを目指し、回収した衣類やクリーンアップ活動で拾った漂着ペットボトルなどを原料にした緯糸を使っています。一部には、私たちが海や川に行ってごみ拾い活動をしたものも含まれているんです」

■北九州市の自然、門司港の歴史をイメージした2種のバッグ
そんな小倉織の新たなチャレンジのひとつが、スターバックスと一緒に開発した今回の「小倉織ミニバッグKITAKYUSHU」と「小倉織ミニバッグMOJIKO」だ。

「地元を代表する小倉織が絶えることなく、いつまでも地元の伝統工芸として愛され、未来につないでいきたい」

そんな想いを込めて、日常生活の中で使いやすいバッグを商品化したという。ミニバッグには内側にスターバックスのペーパーカップ型のポケットが付いていて、そのポケットに折りたたんでバッグを収納できるパッカブルなデザイン。生地は、市内のスターバックスの店舗パートナー(従業員)からヒアリングした北九州と門司港のイメージをもとに選定された。

KITAKYUSHUは、北九州が誇る自然と親しみやすい人柄をイメージし、明るいグリーンベースの縞柄をチョイス。漂着ペットボトル由来の再生糸を使ったFOREST GREENという名の生地で、北九州の海や山をイメージしたバッグにぴったりだ。

MOJIKOは、駅舎が重要文化財に指定されている門司港駅のある門司港地区を指し、レトロ、地元の顔といったイメージから黒とグレーのクラシカルで落ち着いた縞柄に。小倉織らしい縞柄に、地域に根付いている門司港のレトロ感が表現されている。こちらは門司港駅舎にあるリージョナルランドマークストア・門司港駅店でのみの販売だ。

小倉織を後世に残していくためには、若い世代に伝えていくことが必要だと弥央さんは語る。「JIMOTO Madeという素晴らしい取り組みに声を掛けていただいたことは率直にうれしかったです。綿は使ううちにへたってしまうイメージがあるかもしれませんが、小倉織はとても丈夫で長持ち、経年変化でなめし革のような味が出てくるのが魅力です。汚れてもガシガシ洗って、使い込んでください」

また、発売に先立ち、北九州市内のパートナーたちが小倉織の工場を特別に見学している。小倉織を五感で学び、商品への理解を深めるためだ。みな熱心に説明を聞き、小倉織のすばらしさを店舗に訪れるお客に伝えたいと意気込む。

小倉京町店の金原奈央さんは小倉織の復活のストーリーが、昨年大規模火災に遭い現在復興を模索する北九州市民の台所・旦過市場と重なったと言う。「北九州はとても地元愛の強い土地柄。復活するって困難が多いことだと思うので、伝統を守っていることにとても感銘を受けました」

JIMOTO Madeの商品が北九州にもできることを心待ちにしていたと言うジ アウトレット北九州店の林 亜蘭さんは、祖母が小倉織を持っていたそう。「小倉 縞縞さんの生地やデザインが地元の病院や百貨店のショッピングバッグなどに使われ、小倉織は私たちの日常に溶け込んでいるのだと思いました。ここで感じたことをお客様に伝えて、つなぐ役割を担っていきたい」と熱っぽく語った。
一片の端布との出合いをきっかけに、ひとりの染織家の情熱により息を吹き返した小倉織。地域の産業にスポットを当て魅力を伝えるJIMOTO Made。ふたつが出合って生まれたパッカブルなミニバッグが、新たな未来を運んでくる。

■販売店舗
「JIMOTO Made小倉織ミニバッグKITAKYUSHU」/スターバックス コーヒー イオン若松店、小倉京町店、リバーウォーク北九州デコシティ店、サンリブシティ小倉店、イオンモール八幡東店、アミュプラザ小倉店、門司港駅店、黒崎駅店、ジ アウトレット北九州店、到津の森公園店、八幡永犬丸店(2023年5月8日オープン)
「JIMOTO Made 小倉織ミニバッグMOJIKO」/スターバックス コーヒー 門司港駅店

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