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インデックス投資のメリットを説く!40年近く版を重ねる名著「敗者のゲーム」は必読/タザキの投資本案内

  • 2023年1月6日
  • Walkerplus

こんにちは。YouTubeチャンネル「聞いてわかる投資本要約チャンネル」を運営している、二児の父でサラリーマン投資家のタザキ(@tazaki_youtube)と申します。

学生時代に株の魅力を知って以来、投資本好きが高じて自分の学びをYouTubeで発信したところ、想像以上の反響を呼び、3年間でチャンネル登録者が10万人を超えました。これまでに読んだ投資・マネー系の本は300冊以上。

ここでは、多くの投資本やマネー本を読んできた経験から、特におすすめの書籍や、コスパの高い書籍、経験値や投資スタイル別で紹介していきます。2回目となる今回は「敗者のゲーム[原著第8版]」(著:チャールズ・エリス/日経BP)を取り上げます。

■時代に合わせて更新される100万部売れたロングセラー
インデックス投資という商品を知って、興味があるという方にとっては、背中を押してくれるような1冊だと思います。すでに実践しているという方にとっては、今まで知らなかったメリットをさらに深く学び、意思をさらに固めてくれるでしょう。

世界で100万部以上売れ、超ロングセラー(2022年に第8版発売)になっている、かなり有名な本です。他の本から引用されることも多いですね。基本的にはインデックスファンドを長期投資するという軸はずっと変わっていません。

■市場に勝つことはもはや不可能に近い
本書の特徴的なタイトル(=敗者のゲーム)の意味を解説しないわけにはいきません。

例えば、テニスの試合ですね。プロの試合になると、明らかなミスはほとんどしません。勝敗はどういうところで決まるかっていうと、「目の覚めるような素晴らしいショット」をするかどうかで決まります。これがいわゆる「勝者のゲーム」ですね。

一方、ラリーをずっとし続けることすら危ういようなアマチュアのテニスの試合はどうでしょうか。勝敗を決めるのは「ミスの多さ」です。ファインプレーの有無というより、ミスが少ないほうが勝つ。これが「敗者のゲーム」です。

株式市場においては、昔に比べ市場に勝つことが難しくなり、「敗者のゲーム」になったと言われます。

・取引の約90%が、機関投資家とコンピューターによる24時間売買が占める
・12万人ものアナリストが米国証券アナリスト(CFA)を持ち市場に参加している
・大手証券会社の最新レポートが瞬時に世界中のアナリストやポートフォリオマネージャーに配信され、売買につながる

そんな世界の最前線で戦うポートフォリオマネージャー(資金運用者)たちやアクティブ投資家による売買が「効率的な価格形成」を行います。それにより形成された「平均リターン」を、インデックス投資は享受できるのです。その価格形成に助力したアクティブ投資家の多くが、「平均値」に勝てないにも関わらず。

われわれ個人投資家は、そんな「プロ」たちと同じ土俵で戦わなければいけません。アマチュアのテニスのように「ミスを少なくして勝つ」ためには、基本的にはインデックス投資をメインに、タイミングを計らず、長期投資をすることが賢明な選択といえます。

■稲妻の輝く瞬間は誰にも分からない(タイミングリスク)
「投資家にとっては株式に投資して、長期間そこにとどまっている資金の運用成績が最高である」。そうは言われても、やはり「継続」することが最も難しいものです。

どこかで、「やはり無難に貯金をしよう」とか「損をしてしまったから、今はやめておこう」とか考えてしまい、やめてしまうのです。とにかく「継続」こそが、資産形成につながります。

本書の調査によれば、1980年1月1日〜2016年4月1日の36年間の中で、最も上昇したベスト10日(検証期間全体のわずか0.1%にも満たない)を逃すだけで、リターンの平均水準は11.4%から9.2%へと低下してしまいます。

ベストの上昇日を20日間逃すと、リターンは7.7%へ。ベストの30日を逃すと、リターンは6.4%へ低下してしまいます。

36年間のたった30日を逃すだけで、リターンがほぼ半減してしまうのです。つまり、上昇する期間は「稲妻が輝く一瞬」のようなものです。

その瞬間に相場に居合わせておかなければ、そのリターンを享受することができないのです。そのタイミングを見計らいながら売買をするのは、至難の業です。

よって、その稲妻が輝く瞬間に、確実に利益を享受するためには、ずっと持ちっぱなしが良いということになります。

■80代の著者が株式集中投資をする理由
著者のチャールズ・エリス氏は、2022年現在80代です。投資は、株式でしか行っていないと言います。

一般的に、年齢が上がるほど、ポートフォリオのリスクを抑えるために債券を組み込み、その比率を上げていきましょうと言われます。株式比率を「100マイナス年齢」にしておいて残りを債券に分散するというのはよく言われる目安です。

その法則で言えば80代は、8割を債券に回し、リスクの高い株式への投資は2割に抑えるということになります。ではなぜ、著者は80代の現在も株式に集中投資をするのでしょうか?そこには3つの理由があります。

1つは、債権が「インフレに弱いこと」が上げられます。本書の「個人投資家のための十戒」では、「元本や利息が安全だとか、リスクが少ないという理由だけで、債券に投資してはならない」と指摘しています。

1985年に初版が出た当時は、FFレート(米国の短期金利)が8%前後の時代でした。日本でも、銀行の利息が5.5%の時代です。それから40年弱。金利がどんどん低下してきたことで、なおさら債券はインフレに弱い資産になってきています。

とはいえ、どんな状況においても全く必要ないという完全否定ではなく、短期的な「まさかのときの備え」としての意味はあると思われます。

本書には書かれていませんが、インフレが気になる場合は「米国物価連動国債 ETF(TIP)」などは手軽な解決策になるのではないでしょうか。米国物価連動国債 ETFなら、インフレ率が上がれば元本もそれに応じて増加します。

2つ目は、子供、孫がいるためです。資産運用が自分の世代で終わらない場合ですね。

自分の世代で使いきれず相続・譲渡していく場合、まだまだ運用期間が何十年も続いていくことになります。余剰資金であれば、暴落しても戻るまで待てる時間があるので、株式に投資することが最も長期リターンが高まります。「10代の孫の世代」まで考えるのであれば、株式100%だとしても納得がいきますね。

3つ目は、総資産の中には「安定した資産」が他にあるからです。年金、持ち家、家具などの「安定した資産」が総資産の30〜40%相当あるため、その上債券に投資する必要性がないというのが著者の主張です。

住宅や家具の資産価値に関しては個別性が高いので一概には言えませんが、年金は確かに考慮すべきですね。

特にわれわれ日本人の年金は他国と比べても、債券比率は高めに設定されています。債券など買った覚えはないという方でも、年金というファンドを通して間接的に債券を保有しているようなものです。それを考慮すれば、自分で運用する部分は株式を多めにしておいても、妥当だと思われます。

■その「手間」がリターンを下げる
私たちは、目の前の結果を重視する傾向があります。

機関投資家向け運用を行っている特定運用機関数社の50年間の調査によれば、直近の成績が良好な運用機関が新規契約を獲得する傾向があるそうです(多くの場合、この機関の好調期が過ぎた後で…)。

反対に、直近の成績が悪い運用機関が一般に解約されやすい(こちらは、最悪期が終わった後で…)。また、値上がり相場が終わった後に株式への配分を増やし、大底で株式を減らすといった、間違ったタイミングで反対方向に資金を動かすこともよくあります。

投資を生業とする運用機関ですら、資産配分の変更や、商品の変更において「高値買い、安値売り」をしてしまいます。そこに留まっていれば、悪い相場の次には良い相場が来ていたにも関わらず、です。

たまたま投資を始めたタイミングが悪くて向こう1年2年、大きなマイナスが連続で続いたとしましょう。そんなことが起こったらもうやめたくなると思います。でも、そこで簡単に運用機関は変えてはならないんですよね。

同書のおもしろい例えとして、駅の切符売り場や銀行のATMで並んでいて、途中で列を変えても全然前に進まなかったり、かえって列を変えない方が良かったりすることを挙げています。スーパーのレジとかでも、よくありますよね?

それと、同じように、投資においても最近の成績がたまたま悪かったからといって、簡単に運用機関を変えたり、商品を途中で解約して買い直すっていうのは非常に効率が悪いことだと言われています。さらにそこには、売買コストもかかっています。

結局、長期間そこにとどまっている資金が一番ということですね。

■タザキのまとめ「インデックス投資本の最高峰」
2022年に原著第8版の邦訳が発売され、2020年のコロナショックも踏まえ、改めてインデックスファンドの長期投資の有用性が確認されました。初版から40年近く経っても色褪せません。

私は原著5版、6版、8版の邦訳本を読んでいますが、8版で意外だったのは、行動経済学にまで踏み込んだ内容も追加されていたことで、さらに充実した本になったなと感じました。インデックス投資にまつわる本は数多くありますが、個人的には、「インデックス投資の必修本No.1」になったのではと思います。

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