「私、ある男たちに誘拐されそうなの」と犬目線で始まるいぬころ(@inukokoroblog)さんの『ゆうかい』。一体何が起きるんだろうというスリルのある始まり。犬目線で見ると、確かにハラハラさせられるものの、人目線で見るとなんともほっこり癒やされる。一体、犬は誰に誘拐されることを怯えているのだろうか？
■誘拐犯予備軍は商店街になんと3人もいた!?
柴犬の目線で始まる本作。名前は「ロコ」。飼い主のゆいちゃんと商店街へお散歩に出かける途中だ。しかし、大好きなお散歩なのにロコは浮かない顔をしている。
柴犬のロコが心配していること、それはもしかしたら自分が誘拐されるかもしれないということだ。
誘拐を企てていると思しきメンバーは、山里商店街のフルーツ屋の古田、肉屋の鈴木、魚屋の田中の3名。ロコの勘違いかどうかは、まず彼らの犯行予告を「ちょっと見てて」と言う。
トップバッターはフルーツ屋の古田だ。ゆいちゃんとロコが散歩にやってくると「おいしいリンゴがありますよ」「ロコちゃんも食べますか？」と、おやつをくれる。そして、嬉しそうな顔をしてこう言うのだ。「ロコちゃん可愛いな～。連れて帰ってうちの子にしたい」と――。
次は、肉屋の鈴木だ。「いい肉あるよ～」と言って、ゆいちゃんをおびき寄せ「ロコちゃんにもあげよう」とおやつを差し出す。そして、ロコの食べる姿を見ながら「かわいいねー。おじさんちに連れて帰ろうかな」と笑って言うのだ。ロコはおやつをもらいながら、神妙な面持ちで彼らの話を聞いていた。連日、散歩のたびに犯行を宣言されるため、ロコは気が気ではない。
■インパクトのある出だしはお笑い芸人のネタから閃いた
いぬころさんは「変な犬図鑑」と言うコミカルな犬のイラストを描く。今回紹介した犬漫画は、いぬころさんの中でも珍しい一作。どのような経緯で漫画を描くことになったのか制作の裏側について話を伺った。
――犬が主役で「私、ある男たちに誘拐されそうなの」という始まりがとてもインパクトがありますね。犬が誘拐されるってどういう意味だろう？ととても興味を惹かれました。
ありがとうございます。漫画は最初の「つかみ」が大事と聞いていたので、とにかくインパクトがある冒頭になるよう意識しました。SNSには面白い漫画がたくさんあるので、その中で埋もれないようにすることは、今回意識していたことの一つです。
――SNSでは「変な犬図鑑」という笑える犬イラストを描いていますが、今までにどのくらいの数を手掛けましたか？
2021年3月から投稿しているのですが、今月でNo.220を超えました。読者の方のおかげでなんとか続けられています。今後もネタがなくなるまで続けるつもりです。
――今回、犬漫画を描いたのには何か理由がありますか？
漫画はずっと読むのが好きでいろんな漫画を読んでいましたが、自分では描いたことがありませんでした。しかし、今年の4月頃に初めて数ページの漫画を描く機会がありまして、それから描く方の楽しみも知りました。そこからずっと描きたいと思っていたのですが、なかなか時間を作れない日々が続き、漫画のアイデアを思いついてからはなんとか時間を作り、ついに形にできたという感じです。
――作品「ゆうかい」を描くきっかけがあれば教えてください。
きっかけは河邑ミクさんのネタ(？)を見たことです。そのネタは「モテない努力をしている」というネタで、「モテない努力をしているのに、どうしてもかわいく見えてしまう」という構図がすごくおもしろいと思いました。それを見た時に「何をやってもどうしてもかわいくなってしまう」というのは犬に対しても言えることだなと思い、漫画のアイデアとして固まったというわけです。
ただ、肝心の「モテない努力をする」という点について、犬はかわいく見えた方がおやつをもらえるので、モテない努力をするのは犬にとってデメリットしかありません。そこで思いついたのが「かわいがられると、連れ去られるかもしれない」という犬の勘違いでした。「連れて帰りたい」という言葉も犬が好きな人にとって言ってもおかしくない自然なセリフなので、犬がテーマの漫画としてうまくまとまったと思います。
また、冒頭の話にあった「つかみ」に関して、「連れさられる」という言葉は、「誘拐」というインパクトのある言葉に言い換えられると思い、それでこの冒頭部分になりました。
――今後、続編や別の犬漫画を描く構想はありますか？
今回の漫画は読み切りとして作ったので、続編はありません。ただ、次の犬漫画としてシリーズものを考えています。飼い主がメインのラブコメ？で、今はプロットを書いては消してを繰り返しています。
――その他、どのような漫画を描いていますか？
次の漫画を描いた時は、ぜひまた読んでください！それまでは「変な犬図鑑」の方をお楽しみください！
取材協力：いぬころ(@inukokoroblog)
