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謎の巨大アンコウに食われるホラー漫画かと思いきや?心優しき人が招かれる「スパあんこうの胃袋」が素敵すぎた!

  • 2022年7月16日
  • Walkerplus

あなたには見知らぬ人に助けてもらった経験はあるだろうか?電車で席を譲ってもらったり、道を教えてもらったり、落とし物を拾ってもらったり…。そうした時、自分も誰かに優しくしたい、と感じるのではないだろうか?人への優しさを広げていきたくなるオムニバス漫画「スパあんこうの胃袋」が話題だ。

第1話の主人公・さくらは困っている人を見ると、自分の不利益を顧みずつい助けてしまう“お人好し”。そのせいで、仕事でも後輩にいいように扱われてしまう。残業で遅くなったさくらは、せめてもの楽しみと閉店間際のベーカリーでパンを買おうとするが、そこで見かけたのはコートの紐を引きずって歩く女性の姿…。思わず女性を追いかけたさくらが「コートの紐を引きずってますよ…」と声をかけると、振り返った女性の顔はのっぺらぼう。そして巨大なアンコウが出てきて「バクン!」。さくらは食べられてしまった。

巨大アンコウに飲み込まれて「自分の親切は自己満足にすぎないのかも…」と悲しくなるも、アンコウの中は天国のようなスパになっていた!どうやらこのスパは他者に優しくした人が招かれるらしい。スパを満喫するさくらだったが、気づくと自分の家で寝ていた。スパのことは記憶していないが、不思議と体が軽い。さくらは「今日も頑張ろう!」と清々しく伸びをするのだった。

お人好しのさくらをはじめ、育児に疲れた母親、頑張りが空回りする会社員、アンチに傷ついたメイク系YouTuberなど、優しい人、頑張っている人が報われる世界を描いた本作は多くの人から支持をされ、7月14日には書籍化された。作者のあきばさやかさん(Twitter:@akiba_sayaka)に心優しきストーリーが生まれたきっかけを聞いた。

■たくさんの親切な人たちへの恩返しの気持ちを込めて
もともと、エッセイ漫画などを描いてきたあきばさん。「スパあんこうの胃袋」は自身初の創作漫画となる。

「創作漫画はずっと描いてみたいと思っていました。中学生の頃に王道の少年漫画も描いていたんですが、一作も描き上げられずに挫折した経験があり、自分には難しいと諦めていました。しかし、先日“このテーマで描きたい!”と急に思い立ち、勢いで描き始めたら不思議なことにサクサク描くことができ、そうして生まれたのが『スパあんこうの胃袋』です」

妊娠、出産、育児と人生の大きな節目を迎える中で、「たくさんの親切な人に助けられて生きてきたなぁ」と感じることが多かったのだそう。優しくしてくれた人たちへの恩返しとして、深海生物をテーマにしたスパを登場させたのはどういう発想からだろうか?

「第1話で主人公がコートの紐を引きずって歩いている人を追いかけますが、実際にそういう方を見かけたことがあって、そこからです。その時、私はお店の中で、引きずっている人は外を歩いていたので、追いかけることも、声をかけることもできなかったのですが…。それで、自分もよく『リュック開いているよ』とか『席座りますか?』とか親切な人に声をかけてもらうなぁ、そういう人たちみんなに何かいいことがあったらいいなぁと思い、そこから発想をつなげていきました。親切な人たちだけを集める仕掛けを考えた時に、アンコウがエサを誘い寄せるために使っている擬餌状体(エスカ)みたいなものはどうだろう?アンコウの擬餌状体に誘き寄せられて飲み込まれた先がスパになっていたら最高だな、そこにたくさんの深海魚が出てきたら楽しそう!と頭の中で展開していきました」

親切な人たちにいいことがあるといいな、そんな恩返しのような気持ちが込められたストーリーはどこまでも優しい。「私も人に優しくしたい」そんな感想が寄せられるのは、その優しさゆえだろう。

■細かいところまで書き込みがされたスパの俯瞰図に注目を!
作中ではメンダコ、ミツクリザメ、ホウライエソ、リュウグウノツカイ、とさまざまな深海魚・深海生物がスタッフとして登場している。あきばさんが自身の子供から影響を受けたんだそう。

「もともと水族館や深海生物は好きでしたが、そこまで詳しくはありませんでした。今回深海生物をキャラクターに選んだのは、息子の影響が大きいと思います。息子は魚や深海生物が好きなんですが、一緒に図鑑やDVDを見るようになり、今では自分用に深海生物の書籍を購入して読んでいます。すぐ息子に奪われてしまいますが…」

あきばさんが一番お気に入りの深海生物は「オオグチボヤ」なんだとか。水深300〜1000メートルの海底の岩盤や沈木に付着して生きるホヤの仲間で、寒天状の半透明の体と大きな口を開けたような姿が特徴だ。

「マリオのパックンフラワーみたいなとぼけた表情(?)が可愛くて大好きなのですが、作中には登場させられていなくって、書籍の表紙イラストでしか描けていません。オオグチボヤが出てくるお話も1話のネームまで考えたんですが、本に入りきりませんでした。推しなので、どこかで描けたらいいなと思っています」

作品のこだわりポイントを聞くと「スパの様子を解説した俯瞰図のコマ」とのこと。

「こだわって…というか楽しんで描いています。『こんなのあったらいいな』を詰め込んで考えるのも楽しいですし、施設内の壁に貼ってあるポスター、お店の名前など、気づいた人がニヤリとできるような仕組みをこっそり仕込んでいます。第2話では0歳と2歳の子育て中のママの話を描きましたが、ここで出てくるフルコースレストランと妊娠中・授乳中でも飲めるバーに行きたいです…!執筆期間が妊娠〜授乳中と登場人物とドンピシャな状態だったので、おいしくお酒を飲める場所への思いが募っています(笑)」

初の創作漫画は背景にも苦労したとのことだったが、あきばさん自身が楽しんで描いていることが伝わってくる。しかし、初の創作漫画なだけあって公開する時は恥ずかしさも覚えていたんだそう。

「ドキドキしながら公開したのですが、あまりに反応が大きくて驚きました。『涙が出た』『温かい気持ちになった』『癒やされた』と言ってくださる方が多くて、とてもうれしかったです。そして、多くの方に読んでいただき、応援していただいたおかげで1冊の本になりました。本当にありがとうございます。『励まされた』と言っていただくのですが、『こちらこそ!!!!!(大声)』という気持ちです(笑)」

最後に今後の目標を聞くと「ドラマ化、アニメ化には憧れがありますね。深海魚がバンバン出てくるので実写は難しいかもですが…関係者の方、お声がけお待ちしています(笑)」とのことだった。

当たり前ではあるが「スパあんこうの胃袋」はフィクションで、どんなに善行を積んでもこのスパには行けない。しかし、この話を読むと、自分の周りにいる心優しき人々に“いいことがありますように”と自然と祈りたくなる。優しい気持ちに包まれ、穏やかな読後感に満たされるのは確かだ。

取材・文=西連寺くらら

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