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【漫画】なんともほほえましい、人型ロボットの“帰り道”。フルカラーで描かれるSF漫画に注目集まる

  • 2022年4月25日
  • Walkerplus

誰もが一度は夢見たことがあるだろう、「人型ロボット」と共存する世界。Twitterで8500件を超えるいいねを集めた漫画「異路同帰」は、そんなロボットが日常に溶け込んだ世界の一場面を切り取った作品だ。

街のロボット修理工場で修理を終えた、無機質な人型ロボット。整備士が休憩に入る直前、手違いから起動してしまったロボットは、整備士が昼食に向かう飲食店を目標と認識して移動を開始してしまう。同型のロボットが普及しているため、街をうろついていても不思議ではないものの、街行く人のさまざまな干渉でさまようことになってしまい――、という物語。

無骨なデザインのロボットが見せるどこかユーモラスな姿に、読者から「ロボットくん可愛いです」「微笑ましいの塊」と反響を集めた同作。作品もさることながら、作者の丸伊四角(@maru1shikaku)さんはプロの編集者とタッグを組み、独自に電子書籍ストアを運営し漫画を発表するという取り組みも行っている。ウォーカープラスでは今回、丸伊四角さんに「異路同帰」の制作秘話や、既存のプラットフォームを使わずインディーズ漫画を販売する狙いなどをインタビューした。

■「今できる最高のものを」フルカラーで描かれるSF短編が生まれたワケ
――「異路同帰」を描かれたきっかけを教えてください。

「当時、商業誌デビューはしていたものの、“商品”を意識しすぎて漫画が上手く描けなくなっていました。そこで原点に戻り余計なことを考えず、その時本心で面白いと感じたものを素直に描くことにしました」

――無機質なロボットでありながら、身体感覚やどこかユーモラスな仕草が印象的でした。読者にどんな風に映るように描かれたのでしょうか?

「実は、ロボットはあらかじめ読者の受け取り方を意識して描いたわけではありません。ストーリーを作り始めたときはもっとリアリティを重視した、無機質なロボットを予定していました。しかし制作が進むにつれ、自然とロボットに人間味や愛嬌が付け加えられていきました。最終的には自分でも意図しなかった、無機質な中に人間味が見え隠れする不思議なバランスになりました」

――現実の風景とSF部分の融合が、緻密かつフルカラーの画であることで強く伝わってきました。全編フルカラーで描かれるのはどういった思いからですか?

「漫画を世に出すなら今できる最高のものを出したいという思いから全編フルカラーにしました。フルカラーでは色を意識して配置することでカラーならではの豊かで伝わりやすい描写が行えます。例えば、穏やかなシーンではオレンジ色などの暖色系が、不安なシーンではしずんだ青などの寒色系が心理描写を補助しています。また、色で画面が整理され細かい絵が見やすくなるため、緻密な背景描写のあるSFとフルカラーはとても相性が良いと感じています」

――ラストのロボットの「表情」など、読んでいて心温まるものを感じました。本作を描く上で特に意識した点、こだわったポイントはどんなところでしょうか?

「ポジティブな感情が伝わったのであればとても嬉しいです。狙ってポジティブな感情を描くのはかなり難しいので、偶然心が穏やかになった時にラストシーンを描けたのが良かったのだと思います。特に意識した点はハッピーエンドです。SFの短編はバッドエンドで未来と人間にがっかりしてしまうものが多いので、『異路同帰』では未来と人間に少しだけでも希望が持てるものを描こうとしました」

■「高画質」を届けたい。フレキシブルさ求め自らECストアを立ち上げ
――本作は、丸伊さん自分が運営するデジタルインディーズ漫画専門店「MANGA SHOP FLAT」でも発表されています。ご自身で漫画ECサイトを運営し始めたきっかけを教えてください。

「『MANGA SHOP FLAT』は2021年12月からはじめました。きっかけは漫画の高画質データが欲しいと思ったことです。私は絵が好きなこともあり、拡大してタッチや修正した部分を細かく見たいのですが、今流通しているデータは観察できるほど画質が良くありません。もちろんそこまで見たい人は少数派だと思うのですが、デジタル音楽業界ではCD以上の高音質データ販売が行われているので、漫画においても案外需要があるのではないかと思い、自分で高画質データを販売することにしました」

――既存の電子書籍プラットフォームを使わず販売するメリットはそうしたところにあるのですね。

「最大のメリットはやはり画質です。どの大手プラットフォームも、販売の際のデータ形式は指定があり画像が劣化してしまいます。ECサイトなら無劣化の高画質データと、軽量化した中画質データをセットで販売できるので、画質にこだわりない人とこだわる人どちらにも対応できます。また、販売済みのデータの差し替えがすぐにできる点も大きなメリットです。ご購入者様の要望をすぐに商品データに反映させたり、加筆修正したデータを追加することもできます」

――「MANGA SHOP FLAT」で販売される作品が、プロの編集者とタッグを組んで制作しているというのも特徴的です。こうした形になったのはどんな経緯からなのですか?

「私は客観性を保ったまま面白いものを追求するには、個人制作だとしても編集者の力が必要だと感じています。そこで個人販売を思いついた時に、協力していただけそうな編集者の方をTwitterで探しました。幸いなことに、私の過去作を読んでくださっていたSF好き編集者の本気鈴(@honkisuzu)さんに提案を快諾していただけました」

――丸伊さんは商業誌での執筆経験もあります。編集者を介しての個人制作とでプロセスに違いはありますか?

「『異路同帰』と『ニュート』はほぼ完成したものを見てもらい、違和感のあるシーンの修正と文字打ち、タイトル、奥付制作などを協力していただきました。新作はネーム段階からチェックしていただく予定ですので、制作から販売の流れは商業出版と大きな違いはないと思います。ただし締め切りは自由にずらせるので、妥協をかなり少なくすることができるのと、企画は売れるかどうか抜きに面白いかどうかだけで判断してもらえるのが大きな違いです」

――「MANGA SHOP FLAT」の今後の展望や課題を教えてください。

「大手プラットフォームに比べると宣伝と使いやすさの点で劣ってしまうので、そこを補えるようなアイデアが課題です。『こんな漫画が読みたかった!』と喜んでいただけるような方に漫画が届きやすくなれば最高です」

――最後に、丸伊さんの今後の作品作りについて教えてください。

「『異路同帰』は明るいコメディよりのSFなのに対し『ニュート』はダークな脱出ものになっています。そして新作もまた舞台、キャラクターともにガラリと違います。このようにSFというジャンルの中でさまざまな挑戦を続けていこうと思っています。これからも面白いものを作っていきますので、読者の方々にも一緒に楽しんでいただければ幸いです!」



取材協力:丸伊四角(@maru1shikaku)

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