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【SDGs】地域に基づく魅力に変換して還元 軽井沢星野エリアが描く持続可能な未来

  • 2021年10月6日
  • Walkerplus

世界的にSDGs(エス・ディー・ジーズ/持続可能な開発目標)への関心が高まり、各企業ではさまざまな取り組みが行われている。今回は、100年以上前から自然と共生する観光業を目指して地域一丸となって歩んできた軽井沢星野エリアに注目。日帰り温泉施設「星野温泉 トンボの湯」(以下、トンボの湯)の支配人である金 玟秀(キム ミンス)さんにお話を伺い、エリア全体の考え方からトンボの湯での具体的な取り組み、思い描くビジョンとその手ごたえについて取材した。

■軽井沢星野エリアで行われている持続可能な観光業とは?
――この地域で行われている具体的なSDGsの取り組みについて教えてください。いつ頃からどのような取り組みが行われてきたのでしょうか?

【支配人】この地で観光業の中心的役割を担っている星野温泉の開湯が1915年。前年に開業した星野温泉旅館では、当時から水力発電を活用するなどエネルギーの持続化に関する取り組みを行っていました。そして2005年、星のや軽井沢が開業するにあたり、温泉地ならではの地熱エネルギーを取り出して利用するヒートポンプの運用をスタート。さらなる自然エネルギーの活用が進められています。

この地域では、SDGsが国連サミットで採択された2015年より100年も前から、エネルギーをできるだけ自給していくという考えがありました。現在、軽井沢星野エリア全体の在り方について大きな指針は3つ。エネルギーの自給を目指す「EIMY(Energy In My Yard)」の考え方に基づいた自然エネルギーの活用、すべてのゴミを無駄にせず資源化するゼロエミッション、そして自然を守りながら観光資源として活用するエコツーリズムです。

トンボの湯で行われた取り組みには、2021年夏に完成した「湯上がり椅子」、2020年秋からプロジェクトをスタートさせた「りんご土」があります。

■トンボの湯におけるSDGsの取り組み
――歴史ある星野温泉の流れを汲み、2002年にリニューアルしたトンボの湯。2021年夏に完成した「湯上がり椅子」は、どのような経緯で作られたのでしょうか?

【支配人】温もりを感じさせる昔ながらの木製設備をさまざまな場所に取り入れているトンボの湯では、風呂椅子も木製を採用しています。経年劣化により使用されなくなった風呂椅子の用途として、薪ストーブに使うことも考えましたが、もっと利用客の皆様に楽しんでいただける用途があるのではないかと議論を重ねてきました。

私たちには、常に「地域に基づく魅力を提供したい」という思いがあります。トンボの湯でゆっくり過ごした後に、自然豊かな軽井沢を楽しんでほしい。屋外に湯上がり処を作るうえで風呂椅子を再利用できるのでは、と思い至り、長野県御代田町の阿部木工所に相談して協力を依頼しました。

完成したのは、3人がけのシンプルな長椅子と、背もたれに布を張った1人がけの椅子です。この背もたれには、温泉の顔である暖簾を再利用しています。2021年7月22日から9月26日まで、トンボの湯前にある広場の木陰に設置しました。これからも、夏の恒例として続けていきたいと考えています。

――資源を消費するのではなく、変換して魅力として再定義したのですね。もうひとつの取り組み「りんご土」についても教えてください。

【支配人】軽井沢がある長野県は、全国屈指のりんごの名産地です。トンボの湯では、生産過程において傷が付いたなどの理由から商品として並ばないりんごを活用するため、そして信州の新たな温泉文化を生み出すため、秋の風物詩としてりんご湯を行っていました。この使用済みりんごを堆肥化させたものが「りんご土」です。

使用済みとはいえ、りんごにはまだまだたくさんの栄養が残っています。ゼロエミッションの考え方から、廃棄するのではなく資源化する方法を模索し、2020年秋にプロジェクトがスタート。2021年春に土が完成しました。地域住民を中心に無料配布した際には、約1時間で用意した土のすべてを配り終えるほど好評でした。

■温泉施設の枠組みを超えて、地域との関係性を構築
――「りんご土」を作る作業は、トンボの湯のスタッフ自身の手で行われたのでしょうか?

【支配人】もちろんです。私も実際に作業をしました。このプロジェクトは、長野県小諸市の野元果樹園で、りんごの収穫を手伝うところから始まります。りんご湯が終了した後は、りんごをカットして発酵作業へ。3名のスタッフがメインとなってかき混ぜるなどの作業を定期的に行い、約半年かけて土にしていきました。収穫したりんごから土を作ることで、土地の栄養を一部ですが還元できたのです。自然のサイクルに則って無駄をなくす実感を得られた、貴重な体験となりました。

――この取り組みに対して、どのような反響がありましたか?

【支配人】利用客にとっても、自分たちの楽しんだりんご湯が形を変えて還元される体験であり、有意義に感じていただけたようです。土を配布していると、「すごいですね!」と感激した声をよくいただきました。今年のりんご湯では、どのような植物を育てたのか話を聞く機会があるでしょう。皆さんの感想が今から楽しみです。

――再利用から一歩進み、新たな魅力として変換する企画力が素晴らしいですね。発想の着眼点はどのようなところから得ているのでしょうか?

【支配人】まず、観光業としてその土地の魅力に基づいていることが重要です。どこでもできるような普遍的な体験では、いずれその土地の魅力を失う一因となるでしょう。地域に基づいた体験だからこそ、絶えず持続させることができます。また、体験して喜びを感じられるかどうかも大きなポイントです。自分たちの持っている資源を消費して生み出すのではなく、変換して新たな魅力を増やしていくことを意識しています。

このような取り組みは、私たちだけでは実現できません。パートナーとなってくれる生産者や技術者の方々、一緒に楽しんでくれる地域住民や利用客の方々の存在が不可欠です。私たちの描くストーリーを伝え、共感していただくことが、地域を巻き込んだ持続可能な未来へと繋がっていきます。

■秋から冬にかけて、軽井沢星野エリアで展開されるSDGsの取り組み
――これから軽井沢では秋が深まり、紅葉の美しい季節になりますね。今後のイベントや取り組みの予定を教えてください。

【支配人】紅葉図書館が10月8日(金)~11月7日(日)に行われます。このイベントは、3000平方メートルというゆったりとくつろげる広場に本棚とカフェを設置するものです。周りは一面の紅葉。心地よい風を感じながら、ゆっくりと読書の秋を楽しんでいただけるでしょう。本の収集は、古本のリユースを行う長野県上田市のバリューブックスに、椅子を兼ねた特製本棚の用意は、古材や古道具のリユースを行う長野県諏訪市のリビルディングセンタージャパンに協力していただきました。

森に囲まれたロケーションがユニークなケラ池スケートリンクは、軽井沢の紅葉シーズンに合わせて10月15日(金)から営業スタート。10月中旬にはモミジ、11月上旬にはカラマツが見事に色付きます。紅葉シーズンが終わり、12月下旬になると天然氷のスケートリンクを楽しめるようになります。

また、エコツーリズムを行う「ピッキオ」では、空飛ぶムササビウォッチングが大好評です。こちらは3月から行っており、2021年は11月30日(火)まで開催。夕方に活動するムササビを観察します。目撃率は90%以上で、野生のムササビが空を飛ぶ様子に驚き歓声があがります。

トンボの湯では、秋の風物詩としてりんご湯、冬の風物詩としてゆず湯を開催します。りんご湯は先に紹介したように10月22日(金)~24日(日)、ゆず湯は12月21日(火)・22日(水)に行われます。このように軽井沢星野エリア全体でさまざまなイベントを用意しています。訪れる方々には、季節ごとに違った軽井沢の魅力を感じていただければうれしいですね。

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