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いよいよ地球外へ!大ヒット旅行ガイド「るるぶ宇宙」の編集部に聞いた「なぜ今、宇宙?」

  • 2021年6月7日
  • Walkerplus

観光ガイドブックの「るるぶ」(JTBパブリッシング)に、これまでとはまったく異なる地域が加わった。それが「るるぶ宇宙」。今春の発売と同時に一気に話題となり、書店でも通販でも入荷待ちが続く大注目作となった。制作を担当したのは、東京ではなく関西・中四国エリアを担当する西日本支社。大阪から宇宙を徹底的にながめた本誌、なぜ今「宇宙」を選んだのか、その理由や制作の裏話を担当編集者に聞いてみた。

■なぜ今「宇宙」だったのか?
お答えいただいたのは、担当編集者であるJTBパブリッシング西日本支社の有泉(ありいずみ)慧さん。なぜ今「宇宙」だったのかという質問に「コロナ禍で旅行に行きづらい今、家でも楽しめる旅行先として選びました。2020年12月の『はやぶさ2』のカプセル帰還、野口宇宙飛行士や星出宇宙飛行士のISS(国際宇宙ステーション)での活躍も報道されるなど、日本と宇宙が繋がる話題が多かったので、発行には最適なタイミングだと思ったのです」と、ニュース性に加え、昨年から続く息苦しい時勢が『るるぶ宇宙』を生んだと言えそうだ。

ここでまず『るるぶ宇宙』の内容を紹介しておこう。

表紙には「脱・宇宙 究極の観光ガイド」「妄想Trip」「探査の最前線から未来の旅行プランまで」という文字が踊るとおり、国際宇宙ステーションの歴史や施設の紹介のほか、野口宇宙飛行士の体験に沿ったISSへの道のり、宇宙での食べ物、過ごし方など、国際宇宙ステーションで何が行われているのかを紹介。NASAがリーダーとなり、カナダや日本、欧州宇宙機関に声をかけ、以前は月を巡っての宇宙開発競争を繰り広げたライバルのロシアまで参加したまさに地球を上げた一大ミッションであるISSを大解剖。何を食べているの?どうやって過ごしているの?施設の中身は?といった疑問が解き明かされる内容になっている。

「限られた人しか行けない場所だよね?」と思ってしまいがちだが、ISSでの滞在は決して夢ではなく、2019年にNASAは民間企業による商業活動の場所としてISSを利用可能にするとし、民間人を最大30日間、年2回受け入れることを発表した。早くもISSで映画撮影が行われるかも!?という話もあるようで、訓練は必要だが旅費を支払えば宇宙旅行ができる時代に突入しているのだ。

有泉さんが「楽しくてわかりやすい本にすることが第一目標でした。そのためビジュアルメインの誌面にすることを心がけました」と言う通り、『るるぶ宇宙』ではISSのほか、宇宙船の解説、実際に計画されている具体的な宇宙旅行プランを予算や日程、人数など具体的なデータと共に掲載。中には「持っていくものリスト」やトイレ事情まで詳しく想定され、美しい宇宙のビジュアルと共に、壮大な宇宙旅行の最前線がたっぷり展開されている。日本時間の4月23日に宇宙へ旅立ち、無事にISSへ到着した星出宇宙飛行士の出発前のインタビューもあり、宇宙旅の楽しみ方を存分に空想することができる。

■あくまで旅行ガイドである「るるぶ」が鉄則。宇宙の名所を「見る・食べる・遊ぶ」で展開!
宿泊先であるISSの情報をゲットしたあとは、気になる立ち寄りスポット情報を得なければ。そんな時に注目したいのが「太陽系惑星トラベル」だ。

「あくまで旅行ガイドの『るるぶ』が宇宙ガイドを作るという意識を強く念頭に置いたので、太陽系の惑星を『見どころ』という切り口で紹介しています」

赤い惑星「火星」では不思議な地形やマリネリス峡谷、火山のオリンポス山が、木星では美しい縞模様や巨大なオーロラが必見。土星では巨大な輪の正体を探り、海王星では美しいディープブルーの色に迫るなど、星の特徴や見るべきポイントが盛りこまれ、すでに心は宇宙旅。展開されている星々の写真も実に幻想的で、ここに行きたい!見に行きたい!と何度も思わされてしまった。

「普段私たちは、関西・中国・四国の地域ガイドを作っておりますので、それらのガイドブックと同じくらいの親しみやすさで『宇宙の名所』を楽しんでもらえたらと思います」

■注目は、地球のお隣「月」訪問と日帰り無重力体験!?
宇宙への旅を担う民間企業が続々と参入している宇宙産業。その中で実現可能なプランとして紹介されているのが「月周回旅行」だ。実業家の前澤友作氏も2023年に予定されているスターシップの初フライト席を購入、月旅行への先駆けとして注目を浴びている。

ほか、大気圏外で約4分の無重力体験ができる「サブオービタル宇宙飛行」のツアーには、一般企業に勤める日本人男性がすでに初期飛行の100人のうちの1人として搭乗予定だそう。

また、宇宙旅行に行かなくても、飛行機で最大約8500mまで上がりアップダウンを繰り返すことで無重力体験ができるツアーや、ニュースなどでも話題となった宇宙エレベーター、宇宙ホテルの現状などさまざまな可能性が網羅され、宇宙旅行を身近に感じてくるのが不思議だ。

本誌では、月探査にまつわる歴史や地球外生命体探索に関する最新情報、火星への有人着陸のほか、火星を想定した模擬実験生活が行われていること、その実験に参加した日本人の声などもまとめられており、こんなにも宇宙へ行くこと、暮らすことが日夜研究されているのかと驚かされる。
「ありがたいことに、初心者でもわかりやすく、わくわくしながら読んだという声が多く届いています。元々のターゲットは大人だったのですが、お子さんと一緒に楽しくご覧いただいているという声もあり、うれしい限りです」

■取材するわけにはいかない宇宙の情報。強い味方は「宇宙ガイドのパイオニア」だった
それにしても、簡単には取材できないスポット「宇宙」を紹介するには苦労もあったのでは。知識も必要で今の宇宙事情を熟知していなければ本を作るのは難しい。

「そうなんです。宇宙人がいれば取材もたやすいのですがそんなわけにもいかず、様々な参考文献をもとに、関係者の方々にご協力を仰いでの制作でした」と言う有泉さんだが、実は真っ先に最強の協力者を得ていた。

「20年以上にわたり宇宙飛行士へのインタビューや宇宙関連の取材をされている林公代さんを監修者にお迎えしました。2005年には宇宙旅行ガイドブック『宇宙の歩き方』という本も出版されており、まさに宇宙ガイドのパイオニアです」

最強の知恵袋を獲得した有泉さんが次に相談したのが制作陣だった。

「原稿を書いたのは普段から『るるぶ大阪』など多数の旅行ガイドで記事原稿や誌面デザインをお願いしている編集プロダクションの方々です」

宇宙という突拍子もない話で信頼関係が崩れないかと恐る恐る企画を説明したそうだが「おもしろそう!」と快諾、こうしてるるぶ史上もっとも遠いエリアガイドの制作が始まった。

しかし、「私を含め制作陣は宇宙に関して素人同然だったので、前知識を共有するのが大変でした」と振り返る。

特に林さんからは随時最新情報が提供され、「宇宙にかかわる用語の定義など、専門的な目線でのチェックも含め、最後まで手厚くサポートいただき、林さんなくしてこの本は完成しませんでした」。

■日本全国の施設ガイドから宇宙食まで情報を凝縮。『宇宙兄弟』との他社コラボも実現!
この本には、現時点で体験できる情報が豊富に掲載されている。例えば、日本の宇宙開発の最前線基地である「筑波宇宙センター」(ISSの日本実験棟の運用を担う)のほか、ロケット発射が見学できる「種子島宇宙センター」、天文台やプラネタリウム、科学館など、日本全国の宇宙関連施設で体験できることが情報としてしっかりカバーされている。

ISSで食べられているカレーやシーフードヌードル、サバ缶や羊羹、切り餅といった宇宙食(ISSでは手料理もできるし、野菜栽培装置でレタスなどを育てる実験もあるそう!)の紹介や実際に買うこともできる宇宙食のレビューは、とても楽しい。

また、「『宇宙兄弟』に学ぶ!宇宙飛行士へのQ&A」では小山宙哉作のコミック『宇宙兄弟』(講談社)の名場面をモチーフに、宇宙飛行士のなり方や疑問にも答えている。どうやったらなれるの?選抜試験ではどんな課題が出るの?宇宙へ行くまでにどれだけの年数が必要?など『宇宙兄弟』ではこうだった、という事例をもとに細かく解説。「これは、他社版元の皆さまにもご協力を仰いで作ったページです。宇宙にまつわる本や映画などの『編集部イチ推し!宇宙名作ガイド』のコーナーもあります。これをきっかけに、いろいろな視点から宇宙に興味をもっていただけたらと思っています」と締めくくった。

宇宙旅行や宇宙産業の最前線がわかると同時に、こんなにもたくさんの人たちが宇宙に胸をときめかせ、宇宙へ行くこと、人や物資を運ぶこと、宇宙で暮らす可能性を探っているのか!と胸が熱くなってしまった。ぜひ、宇宙に行ったら何をする?何を食べる?そんな妄想トリップを満喫しながら空を見上げてみよう。条件さえそろえばISSの姿だって見えるかも。

取材・文=田村のりこ

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