
優しい緑色にモフモフとした手触り、森のような自然の香り…と、癒し度満点の苔(こけ)。思わず「近くに置いて癒されたい」と感じてしまう小さくてかわいい植物だ。苔玉や苔盆栽などいろいろな育て方があるけれど、ガラスなどの容器の中で育てる「苔テラリウム」は、手入れが簡単でインテリアとしても映える今注目の栽培方法。
苔の専門店「moss-connect」を大阪・南船場に構える気鋭の苔アーティスト・今田 裕さんにその魅力や栽培方法を聞いた。
■手入れが簡単でインテリアにも映える!
「苔は、リビングやキッチンなど新聞が楽に読めるぐらいの明るさがあれば育ちます」と今田さん。直射日光が当たらなくても、定期的に霧吹きをするだけでゆっくりと育つそう。
「成長が遅いのでこまめな剪定(せんてい)がいらず、半年に一回トリミングするくらいで大丈夫。蓋がある容器は1週間から1か月に1回の霧吹きでOKなのでズボラな人向き。蓋がない容器は毎日霧吹きが必要なのでお世話好きな人に向いています」。
1つの容器で1種の苔を育てるだけでもさまになるけど、数種類の苔を組み合わせて渓谷や日本庭園など自分の好きなシーンを描くことも。
「苔の素朴さや可憐さ、美しさが癒しをもたらし、それを自分で育てられる。そして自分なりの世界が描けることも『苔テラリウム』の魅力だと思いますよ」
■人気沸騰!「moss-connect」の「苔テラリウム教室」
今田さんが経営する「moss-connect」では、40種類以上の苔のほか苔テラリウムに欠かせない専用の土や容器、石などを販売。さらに「苔テラリウム教室」を開き、多くの人に苔の魅力を発信している。
「教室にいらっしゃるのは、40~50代の女性グループが多いのですが、最近は20~30代のご夫婦も増えているんですよ。小学1年生のお子さんがお母さんと一緒に作りに来られたこともあります」
簡単に作れて、育てやすいことから年齢性別を問わずに愛好者が増えているようだ。
「教室では作り方や育て方はもちろん、苔の種類や性格、苔が育った環境や繁殖方法、名前の由来、弱った状態の見分け方や対処法など、苔に関するあらゆることをお伝えします」
人気が高く教室の予約が取りづらいため、「moss-connect」で材料を購入して独自に作る人も多いそう。
「購入していただいた際には作り方を説明しますので、ハードルはあまり高くありません」
自宅で作った苔テラリウムを写真に撮って来店すれば、アドバイスもしてもらえるというから心強い。
■苔テラリウムは‶そこらへん〟の材料で作れる?
自宅で作れる…ということは、‶そこらへん〟に生えている苔や庭の土で苔テラリウムが作れるのだろうか?
「容器は透明であれば100円均一ショップで売っているものでもいいのですが、土は湿気が多くても腐らない専用の土を使ってください。‶そこらへん〟の苔は乾燥している場所に生えているので、ガラスで包んでしまう苔テラリウムには向いていません。苔が生まれ育った環境を理解して、その環境に近付けることが長く元気に育てる秘訣なんですよ」とのこと。
作り方や育て方を守らないと、苔が腐ったりカビが生えてしまうこともあるそう。初めて作る時はレクチャーを受けた方がよさそうだ。
■組み合わせ次第で無限に広がる世界観
2018年と2019年の秋に実施されたJR東海「そうだ京都、行こう。」のキャンペーンでは、御朱印の文字の部分を苔で描いたビッグサイズのオリジナルアート「モシュ印」と、寺院の風景をガラス容器の中に再現した「コケ寺リウム」を制作。
「お寺の景色を再現するのがただただ楽しかったです。リアルに作り込むより、多少デフォルメして迫力があるように作り方たかったのでそのさじ加減が難しかったです」と今田さん。
自身の作品では、パッと手に取った石から物語や世界観、景色を思い描くことが多いのだとか。「moss-connect」には、フィギュアやシダなどの植物を組み合わせた迫力満点の「恐竜シリーズ」や、盆栽を組み合わせた「硝景シリーズ」など数多くの作品を展示。苔テラリウムのヒントがあふれているので、興味のある人はぜひ一度足を運んでみて。
取材・文=吉田英子
※新型コロナウイルス(COVID-19)感染症拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。