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【動画】80年に一度現れる新星がもうすぐ夜空に、かんむり座T星

  • 2024年4月29日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

【動画】80年に一度現れる新星がもうすぐ夜空に、かんむり座T星

 北の夜空に新星が現れようとしている。数日以内に現れるかもしれないし、数カ月かかるかもしれない。天文学者たちは、その星が輝くのを80年近く待ち続けてきたが、いつ現れるのかははっきりしていない。しかし、いったんその星が現れれば、1週間は肉眼でも見えるほど明るく輝くだろう。

 その後、天空のパノラマに現れたのと同じくらい早く、その星は消えていく。

 この派手な出現の理由は、「かんむり座T星」の「再帰新星」という珍しい現象にある。この星は馬蹄形の星座であるかんむり座に位置しており、地球から約3000光年の距離にある。

 よく知られている超新星は恒星の寿命が尽きて爆発したときに引き起こされるが、その名の通り、再帰新星は頻繁に爆発する。かんむり座T星の場合、前回の爆発は1946年に起こった。このような再帰新星は、銀河系では10個しか知られていない。

何度も繰り返し爆発する原因は?

 かんむり座T星の光は、単一の宇宙天体が爆発した結果ではなく、互いの周りを回る2つの死につつある星のダンスによるものだ。

 2つのうち大きい方の「赤色巨星」は、太陽系の太陽とほぼ同じ質量を持ち、水素やヘリウムなどの物質を失いつつある。赤色巨星の放出物の一部は、伴星である「白色矮星」に落ちていく。白色矮星は地球とほぼ同じ大きさであるにもかかわらず、太陽よりも約40%以上も多くの物質を含んでいるため、非常に高密度だ。

 白色矮星が赤色巨星の廃棄物を取り込むにつれ、その温度はどんどん上昇し、さらに高密度になる。やがて、80年ほどの周期で限界点に達し、一連の強力な核融合反応を引き起こして爆発するのだ。

「私たちは世界中でかんむり座T星を追跡しているのですが、この星は面白いことをしています」と、米アリゾナ州立大学の教授で、この連星系を詳しく研究してきたサムナー・スターフィールド氏は言う。

「数年前から明るくなり、今は少し暗くなっています。1946年に爆発する直前とほぼ同じようなことが起きているように思えるので、私たちはがぜん非常に関心を持つようになりました」

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かんむり座T星はいつ、どうすれば見える?

 いつ爆発が起こるのかは正確にはわからない。米航空宇宙局(NASA)は今から9月までの間であればいつでも起こる可能性があると言う一方、スターフィールド氏は、これはあくまで妥当な推測であり、上空で爆発が見えるまでに何年もかかる可能性さえあると指摘している。

 しかし、爆発が起これば、星を観察する人たちにとっては一瞬のチャンスとなるだろう。

「ピークは非常に早く過ぎます」と、米ルイジアナ州立大学の名誉教授で、かんむり座T星に関する研究の第一人者の一人であるブラッドリー・シェーファー氏は説明する。「爆発は短く、ピークの明るさは数時間しか続きません。そして、急速に暗くなり始め、わずか1週間で肉眼で見える明るさから消えてしまいます」

「普通の人にとっては、外に出て上空を見上げながら、かんむり座T星を肉眼で見たいと思っても、それができるのは2、3晩だけです」とシェーファー氏は補足する。

 爆発が起こると、T星は入念に監視されることになるだろう。スターフィールド氏の研究チームは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で爆発を観測し、その過程でどれだけの質量が宇宙空間に放出されるのかを正確に測定する予定だ。

 しかし、この珍しい現象の最も重要な観測のいくつかは、裏庭にある望遠鏡をのぞくアマチュア天文学者のネットワークから得られるだろう。米国変光星観測者協会(AAVSO)と国際天文電報(ATel)の会員たちは、かんむり座T星を注意深く観察してきた。

 ここ数年、平均して10分に1回の頻度で新たなデータがアップロードされており、この連星系がどれほど明るく輝いているかが絶え間なく更新されている。これらのアマチュアの誰かが、間違いなく、爆発の到来を最初に発見したと自慢する権利を主張するだろう。

「多くの人がかんむり座T星を観測している理由は、人間はブームになるものが好きだからです」とAAVSOの事務局長であるブライアン・クロッペンバーグ氏は言う。「アマチュア天文学者の多くは、何かの発見者や、最初の出来事の目撃者になりたいという強い欲求を持っています」

 しかし、シェーファー氏は、爆発の知らせを受け取った瞬間に備えて独自の計画を立てており、爆発を見逃すまいと決意している。皮肉なことに、1946年のかんむり座T星の爆発を予測した天文学者レスリー・ペルティエ氏は、季節はずれの風邪のせいで、同年の爆発を見逃してしまった。爆発が起こると、かんむり座T星は、こぐま座の中で最も明るい北極星と同じくらい明るく輝くと予想されている。

「もちろん、暗くなって晴れたら、真っ先に外に飛び出すつもりです。なぜなら、私の観測結果もその光度曲線に貢献してほしいからです」とシェーファー氏は言う。「かんむり座T星が爆発すると聞いたら、望遠鏡は必要ありません。暗くて晴れた夜に外に出て、空を見上げるだけでいいのです」

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