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「こんなママでごめん」働きながら『良いお母さん』でいることに心が折れた瞬間

  • 2024年4月25日
  • レタスクラブニュース


働きながら家事も育児もこなすことが珍しいことではなくなったアラフォー女性。しかし、限られた時間の中で独身時代同様の成果を出すのは難しく、家事や育児も仕事の傍らでは理想通りにはこなせない…そんな状況をしんどく思いながらも、それでも前に走り続けなければいけないとがんばっているワーキングマザーも少なくないのではないでしょうか。

さまざまな状況に板挟みになっていつしか自分を追い詰めてしまい、ついにちょっとしたきっかけで心が折れてしまう瞬間を迎えてしまった女性を描いたのが、らっさむさんのマンガ『わたし、迷子のお母さん ある日突然、母親するのが苦しくなった』です。著者のらっさむさんに、この作品を描いたきっかけをお伺いしました。


『わたし、迷子のお母さん』あらすじ




もうすぐ40歳になるワーキングマザーの世良楓。夫は起業したばかりで忙しく、家事・育児はまともにしない上、給料も激減。保育園に登園しぶりする一人娘のいろはにゆっくり向き合う時間もなく、そんな自分にモヤモヤする日々。



そんなある日、楓は仕事を家に持ち帰って作業していることを上司に咎められます。就業時間内に終わらないなら仕事を減らすと言われ、このままでは戦力外になってしまうと危機感を覚えます。

ただでさえ「二人目どうする?」「この先に小学校の壁が」と悩んでいたところへ、今後のキャリアについて考えざるをえなくなります。



さらに追い打ちをかけるように、後輩の女子社員から「世良さんみたいな働き方を基準にされても困る」「うちの部署が育休延長しにくくなったのは、世良さんが半年で育休切り上げたせい」「誰もが世良さんみたいな働き方したいわけじゃない」とはっきり言われてしまいます。



産前と同じだけの成果を上げようと必死だった楓は、それがほかのワーママたちの働き方を狭めていたことに気付かされ、愕然とするのでした。

帰りの電車の中、ストレスからか激しい頭痛に襲われた楓は、朦朧としたままそのまま終点まで運ばれてしまい、いろはのお迎え時間に間に合わなくなります。これをきっかけに様々なトラブルに見舞われた楓は、ついに家に帰れない状況に陥ってしまうのでした…。


著者・らっさむさんインタビュー


──「わたし、迷子のお母さん」というタイトルに切なさが滲みます。まずはじめにこの作品を描くことになった経緯を教えていただけますでしょうか。

らっさむさん:
私には二人の娘がいるのですが、長女を産んでからの数年間は、完全に迷子でした。これは、私以外の多くのお母さんたちも経験されているかもしれませんが、やっとの思いで産んだと思ったら、右も左もわからない。「赤ちゃん半目なのは、なんかの病気では!?」「おっぱいもあげたしおむつも取り替えたのに泣いてる、なんで!」「私が抱くと反り返るのに、助産師さんには大人しく抱かれている!何が違うの?」みたいな…。

少し成長すると、今度は、他のお母さんと自分を比べて落ち込むことが多かったです。今思えば、正解がほしかったんですよね。迷子だったから。子育てから目を背けるために、ママイベントを企画して没頭していた時期もありました。体よく子育てから逃げていたんです。

たまたまた通い始めた保育園の先生や保護者たちがとてもサポーティブだったので、やっと進むべき道が見えてきましたが、当時は、しんどさばかりが募って、まったく子育てを楽しむ余裕なんてなかったです。あの頃の「未熟が苦しい」「わからないが苦しい」と感じていた自分に、伝えたいことを漫画にしたつもりです。




──家でも会社でもがんばりすぎて、つらい思いをしている主人公・世良楓。そんな中、同僚から「うちの部署が育休延長しにくくなったの 世良さんが半年で育休切り上げたせいですよね」。がんばってきたのに衝撃のひとことですが、このときの楓の心境を教えてください。

らっさむさん:
楓は優等生で、大手企業に勤務して実家も太い。がんばるほど報われる成功体験を持っている女性です。でも、子育てが入ってくると自分一人のがんばりではどうにもならないこともたくさんでてきますよね。

そんななかでも他の女性たちのロールモデルになれれば、という気持ちで出産前と同様に働いてきたのに、それが逆に、「そこまでして働きたくない」女性たちの選択肢を狭めてきたと知って、「自分は一体、何のためにがんばってきたんだろう?」という報われない気持ちを抱いたのだと思います。がんばることの先に、幸せがあるわけではないことに気づいて、思考が停止している状態になりました。



──本作の中に「呪い」という言葉がでてきます。女性たちが無意識のうちに抱えてしまう「こうあるべき」という思い込みを「呪い」と表現されているように感じましたが、この「呪い」について、らっさむさんが描きたかったことを教えていただけますでしょうか。

らっさむさん:
私は、どんな漫画も「もっとみんなが自由に考えられるようになればいいのにな」という思いで描いています。呪いって、勝手に世間の価値観を想像して作り上げた「誰か」のための「べき論」ですよね。誰のためのべき論かに気づいて、それを手放していく過程を描きたいと思っていました。

   *    *   *

主人公の楓は働き方や母親としての在り方に悩むあまり、家族の元へ帰れなくなってしまいます。しかし、偶然出会ったさまざまな人々の生き方や思いに触れ、思い悩みながらも少しずつ自分らしさを取り戻して行きます。
「いいお母さんでいること」という理想にとらわれて自分を追い詰めてしまったり、仕事と家事と育児に追われて走り続けながら息切れしそうな人々に、この物語は優しく寄り添ってくれるはずです。


取材=ナツメヤシコ/文=レタスユキ

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