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ダメ親?母親不合格?不器用な母が一歩ずつ成長し、前に進んでいく奮闘記『母ですが妻やめました』著者インタビュー

  • 2024年4月13日
  • レタスクラブニュース


自然豊かな葉山の町を舞台にした長期連載コミックエッセイ『夫ですが会社辞めました』。会社を辞めて「主夫」になった男性と「大黒柱妻」の一家を主人公に描いたシリーズ第1弾は、令和時代の夫婦が抱えるモヤモヤに多くの人が共感しました。

本作は、シリーズ第2弾。
「ダメ親だと思われたくない」「私って子育てに向いてない」「もうヤダ」…育児をしながら、こんなふうに感じたことがある人は少なくないですよね。主人公・理恵も、そのひとり。
多くの人が共感するであろう理恵の姿に、著者のとげとげ。さんはどんな思いを込めたのでしょうか?

私はきっと母親に向いていない…



夫・亮と5歳の娘・ナナと3人で暮らす主人公・理恵。
ナナは保育園で友だちを叩いてしまったり、じっとしていられなかったり、困るような行動が多く、夫は地元の友だちと遊んでばかりで保育園の行事にも参加せず、ほとんど家にいません。育児への悩みと、夫への不満で、いつもイライラ…。


さらに、理恵自身も人付き合いが苦手でママ友とうまく馴染めず、「もしも母親適性検査なんてものがあったら、私はきっと不合格だ」と追い詰められていってしまいます。


ひとりきりだと思っていた理恵ですが、同じ保育園に通うさまざまな家族や職場の人との交流を通じて、少しずつ前向きな気持ちが芽生えてきます。
そして、夫との離婚も考え始めますが、正社員として働いた経験がありません。

仕事やお金や向上心もない母親が、夫がいなくてもやっていける…?
不器用な母親が成長していく、再生の物語が描かれています。



多くの人が、隠しながらも抱えている「モヤモヤ」を描きたい

――シリーズ第1弾は、本作にも登場するカズくん一家のパパとママが主人公でした。「主夫」と「大黒柱妻」をテーマにした物語でしたが、読者からはどのような反響がありましたか?

とげとげ。さん:器用そうで社交的に見える意外な人から、『わかる』と共感をいただくことがありました。前作で描いた、社会と馴染めなかったり、人と上手に関われなかったりする『モヤモヤ』は、わりと誰もが抱えやすいものなんだと改めて実感しました。



――主夫のカズくんパパに共感する声が多く寄せられたんですね。

とげとげ。さん:反対に、『夫なんだからしっかりしてほしい。頼りなさ過ぎる』と、会社を辞めて主夫になった俊(カズくんパパ)を責めるようなコメントも多くありました。これがもし逆だったら…沙月(カズくんママ)が仕事を辞めたのだったら、ここまで言われないのではないかと思いました。時代は進んでいても価値観を変えるのは難しいと痛感しました。



――そういった前作の反響が、本作を考えるうえで影響を与えたことはありますか?

とげとげ。さん: 多くの人が、実は抱えているけど隠しているようなあるあるを盛り込むようにしました。例えば、SNSでキラキラ写真をアップするママ友に嫉妬したり、モヤモヤすると分かっていてもママ友の動向をチェックしてしまったり…。また、時代が進んでも変わらない価値観のままの人、反対に変わろうとしている人などを描きたいと思いました。



自信がなくて、人と比べてしまう…共感の声が多い理恵を主人公に




――シリーズ第2弾となる本作。理恵(ナナちゃんママ)を主人公に描いたのはなぜですか?

とげとげ。さん:理恵は私が描きたいと思っていた、誰もが抱えているけど隠したり、なんとなくやり過ごしたりするようなモヤモヤや弱さ、不安定さを表現しやすい性格でした。また、読者の方から共感をいただくことが最も多い登場人物のように感じたからです。

――読者の皆さんは、理恵のどんなところに共感されていると思いますか?

とげとげ。さん:自分に自信がなくて、人と比べて劣等感を感じやすく、独りよがりな勘違いをしやすいところでしょうか。そして、わりとすぐに自分を責めるところもそうですね。

――そんな主人公・理恵のキャラクター設定はどのように考えましたか?

とげとげ。さん:手がかかる娘のお母さんという設定で、母親自身も少し問題のある人を描きたいというのは決めていました。それは『ひどい人』というより、わりとよく目にするような『あの人ちょっとねー』と言われるくらいの共感しやすい人にしたかったんです。今まで自分が見たり接したりしてきた人や、自分の中の要素を組み合わせて考えました。

不器用な母親が、彼女ならではの歩幅で成長していく姿を見てほしい




――理恵は「自分の中の要素を組み合わせた」とおっしゃっていましたが、とげとげ。さんと性格や考え方など、似ている部分があるのでしょうか?

とげとげ。さん:表面上の性格や行動パターンは似ていませんが、自分の言動で相手がどう感じたかを考えすぎてひとり相撲をとってしまうところや、SNSを見て勝手に被害妄想をもったり、嫉妬して劣等感に苦しんだりするところは重なります。理恵が一番描きやすく、筆が進むので、似ているところは多いのだと思います。


――ストーリーを考えるうえで心がけたこと、意識したことはありますか?

とげとげ。さん:理恵は離婚して夫への期待や不満がなくなった方が、親子関係がうまくいくだろうと思いました。なので、早い段階から離婚することは決めていたんです。また、それぞれ生きづらさを抱えた同じ園の親仲間と、子どもというつながりを通した近すぎない距離感で自然に影響を与え合ったり、助け合ったりする状況の中で、『本当もうやだ』が口癖の理恵が彼女ならではの歩幅で成長していく様子を描きたいと思いました。そのため、WEB連載ではなく、書籍の描き下ろしでがっつり描きたかったんです。

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著者・とげとげ。さんとも通ずることが多い主人公・理恵。彼女が感じる、日常のリアルなモヤモヤに、共感せずにはいられない作品です。

取材・文=松田支信

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