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コロナ禍で崩れる子どもが増えている! 今こそ知りたい「親が子どもにできること」小川大介さんインタビュー【前編】

  • 2021年2月6日
  • レタスクラブニュース
外出自粛にリモートワークなど、コロナに翻弄され、へとへとな昨今。その影響は子どもたちにも如実に表れ、生活リズムが乱れたり、学習意欲を失った子も多いとか。そこでレタスクラブWEB連載「子育てよろず相談室」でもおなじみ、2021年1月刊行の新刊『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て 』(KADOKAWA)の著者である小川大介先生に、コロナ時代の子育てについてお伺いしました。前後編2回に分けてお届けします。

前編はコロナ禍で多くの子が崩れたその原因を探ります。


コロナ禍で子どもたちが崩れた要因とは?


―コロナによる休校で、生活が乱れたり、学習意欲が削がれたりした子が多いと聞きます。

私のもとにも、そういった悩みがたくさん寄せられました。でもその一方で、好きな学びに没頭したり、苦手分野の克服に充てたりなど、休校期間がプラスに働いた子もいます。なぜそのような違いが出たのかというと、もちろんそれぞれのケースに個別の事情はありますが、ひとつ共通して言えるのは、“子どもが自分のことを説明できるかどうか”の差が大きいかと思います。

具体的には、「今日はこれとこれをやって、どうだった」と自分自身を振り返り、「明日はあれをやりたいな」と計画を立てられる力が備わっていたかです。それができる子は、休校期間でも自分で過ごし方を決め、自分を保つことができたため、自分のやりたい学びを続けられたし、睡眠時間が大幅に崩れるようなこともなかったのだと思います。

―“自分のことを説明できない”というのは、どこに原因があるのでしょう?

誰かに言われて動く受け身姿勢の子に多いようですね。でもそれは、その子が持って生まれた性格というわけではなく、後天的なもの。学校でも家でも、大人からの指示出しが多過ぎると、子どもは自分で考えるのを止めてしまうのです。

思考停止してしまった子は、自分がやりたいことを明確に描けないため、自分の居場所をつくるのも苦手です。学校があるときは、時間割通りに鳴るチャイムに従って動けていましたが、何もなくなると、自分で時間を区切って動くことが難しくなったのでしょう。その結果、ひたすらゲームをしたりテレビを見たりなど、いつまでも時間を過ごせるものにハマることで、居心地よく過ごそうとしてしまう子が多かったのだと思います。

傍から見たら学習意欲が失われたように見えたかもしれませんが、そもそも言われたことに従っていただけで、“自分がやりたい”という意欲を持っていたのかも疑問。ですから、そういった子に対し「ゲーム止めなさい!」と言っても、何の解決にもなりません。

自ら学ぶ力を育む『見守る子育て』でコロナ禍にも強い子どもに


―子どもを見ていると、つい「〇〇しなさい」と、あれこれ指示出ししたくなりますが、そこを少し待ってあげる大人側の余裕が必要ということですね。

子どもは元々、自ら学ぶ力を持っています。私が親御さんたちにおすすめしている『見守る子育て』では、親の三原則として「認める」「見守る」「待つ」ということをお伝えしています。親があれこれお膳立てしたり指図をしたりしなくても、子どもを認めて見守っていれば、子どもは自分で勝手に成長していくのです。普段からそれが習慣づいていたご家庭では、コロナ禍でも子どもがどうしていいかわからずに混乱したり、ペースを乱したりせずに済んでいたようですね。

―今までの子どもへの関わり方の問題点が、コロナ禍により浮き彫りにされたわけですね。

そうですね。でも、「子どもがマイナスに傾いてしまったのは、私が口出しし過ぎたせい」と自分を責める必要はありません。親があれこれ言いたくなるのも、子どもへの愛情から来るもの。ただ、指示出しが多過ぎることの弊害を知らなかっただけです。今まで子どもに対して指示出しが多かったと思われたなら、今後の関わり方を変えていけばいいだけです。

“マイナスに傾いた”というのも、それは子どもの抱える本質的な問題に気づけたということ。この気づけた、ということが何よりも大事です。“マイナスに傾いた”とネガティブに捉えるのではなく、“子どもの本質に気づけた”とポジティブに捉えて、今後の関わり方を変えるきっかけとなるなら、それは長い目で見たら大きなプラスになるはずです。


コロナ禍で急増したゲーム・YouTube依存



―コロナの休校期間中は、親も在宅勤務などで忙しく、ついゲームやYouTubeに子守をさせてしまったというケースも多いようです。

ゲームやYouTube問題というのは、親御さんが忙しく時間がないという問題と裏表であることが多いので、なかなか難しいですね。コロナ禍で余裕が無く、つい頼らざるを得なかったご家庭が多かったのも理解できます。

今の時代、ゲームやYouTubeはITに触れるきっかけにもなるため、一概に悪いとは思いませんが、やはり依存してしまうと、子どもにとって有害なのも事実です。

―ゲームやYouTube依存は子どもにどんな悪影響を及ぼすのでしょう?

目に悪いなど身体的な問題はもちろんのこと、実は幸福感を覚える感性が鈍ってしまうと言われています。脳の幸福度というのは、与えられる刺激の量で作られます。そのため、ちょっとの操作で敵を倒したりレベルアップしたりなど、反応がすぐ表れるゲームや、延々と動画が繋がって繰り返されるYouTubeなどで強い刺激を受け続けると、日常生活がつまらなく感じられてきてしまうのです。

依存していない子であれば、例えば計算ドリルが1枚終わるだけでも、「よっしゃー!」っと気分が良くなり、幸福物質のドーパミンが出ます。そしてそれが、「またがんばろう」という意欲に繋がります。でも、ゲーム依存の子は、そのくらいの刺激ではドーパミンが出なくなり、幸福感も得られにくいのです。その結果、学習意欲も失われていきます。

ゲームにしろYouTubeにしろ、依存すると脳が変わるという事実は、親として知っておいたほうがいいでしょう。仕方なく使うにしても、リスクをわかっていれば、付き合い方も変わるため、悪い方へ引きずられにくくなります。

―小川先生の新刊『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て 』の中でも、ゲームやYouTubeとの関わり方について多く触れられていました。

『見守る子育て』の第二弾である今作では、基本概念に加え、より具体的なシチュエーション毎のアプローチ法を、43のコツとして紹介しています。全てここ2年間に実際に寄せられた相談から構成しているため、悩んでいる方が多かったゲームやYouTube問題も多く取り上げました。年齢別の上手な関わり方など、より具体的なケースを挙げ、コロナ禍でゲームをさせてしまったその後の立て直しとしても、取り入れられる内容になっていると思います。

◇ ◇ ◇

コロナ禍で浮き彫りになったのは、子育てに関する知識の大切さ。コロナ禍でうまくいかなかったことがあったとしても、知識を得て立て直せばいい、と小川先生は言います。では、親はこれからどのようにWithコロナ時代の子育てに向き合っていけばよいのでしょう?

後編では「コロナ禍で増えた親の負担やタスクとの向き合い方」についてお届けします。



Profile


小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。著書多数。

文=酒詰明子

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