「このコンテンツは、FoE Japan発行の『green earth』と提携して情報をお送りしています。
2012年のドーハ会合(COP18) 2013年の夏、日本各地が記録的な熱波に襲われたのはまだ記憶に新しいところです。全米の3分の2の農地が歴史的な干ばつに見舞われ、食料品の値段は上がる一方です。フィリピンや中国南部では台風で再び多くの人命が失われ、インドではスーパーサイクロンで1,200万人が危険にさらされています。
IPCC(国連気候変動政府間パネル)が9月に発表した第五次評価報告書第一部では、産業革命初期からの現在までに平均気温が0.78℃前後上昇したとしていますが、それだけの変化でも、すでに異常気象の増加が実感できるまでになっています。
こうした状況の中、国連の気候変動問題に関する国家間の交渉では、どのような議論が行われているのでしょうか?
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2005~2012年とその後の国連交渉の枠組み 国連気候変動枠組条約に基づく国際取り組みの交渉は、2009年のコペンハーゲン会合(COP15)以降、その内容が大きく変わりました。米国が、気候変動枠組条約の2013年以降の将来枠組みを各国の自主目標を報告するという緩やかな仕組みに作り替えることを求めたからです。その後、日本、カナダ、ロシア、ニュージーランドも、米国に同調して、2013年以降の京都議定書第二約束期間への不参加を表明しました。
その一方で、欧州およびオーストラリア、ノルウェーは、京都議定書の継続参加を決め、現在批准の準備を進めています。これらの状況を受けて、国連交渉の現在の焦点は、第二約束期間の終わる2020年以降の将来枠組みの中身に移ってきています。
当初から米国主導の新体制には、FoEを含め世界のNGOが反対しました。各国が自主目標を提出するだけでは、IPCC等科学的知見から必要とされる削減量を担保できないとみたからです。大きな被害を避けるためには、平均気温上昇を産業革命前から1.5℃、国連交渉では2℃未満に抑えることと合意されていますが、これまで出されている各国の2020年目標だけでは、4℃前後まで上がる可能性が指摘されています(IEA特別報告より)。このギャップを現在の交渉の中でどう埋めるのかが、2020年以降の枠組み交渉と並ぶもう一つの重要な課題です。
これまでも途上国は、国連の将来枠組みの議論の中において、将来の排出許容量を先進国と途上国で公平に分け合うべきであると主張してきました。今回のIPCCの報告で注目を集めたのは、国連の2℃未満目標を達成するには、地球全体で排出量をどれくらい抑えなければならないかを計算してみせたことにあります。
環境NGOの間では、CO2排出を最大限減らすことが重要であり、また、大量のCO2排出を続ける先進国と自国の開発のために公平な配分を求めるインドなどが将来枠組みに参加していくためには避けて通れない議論であると考えています。
ドーハ会合会場外での市民団体のデモに参加するFoEグループ 4年前に京都議定書からの実質撤退を宣言して以来、国際交渉での日本の主導力は大きく後退しました。安倍政権は、民主党下で提出した「2020年までに90年比25%削減」という目標を「ゼロベースで見直す」としたり、石炭火力の増設を続けるなど既存のエネルギー政策を続けようとしています。これに対し、FoE Japanは他の市民団体と連携して、抜本的な改革を求めています。
2013年9月末、ストックホルムで開かれていたIPCC総会が採択した報告書は、人為的活動が気候変動を起こしている主要な原因であることがさらに確実になったとし、頻繁な熱波や集中豪雨など予想される異常気象に警鐘を鳴らしています。
第五次評価報告書のポイントこの報告書が注目を受ける重要な理由は、その要約が、政府間で議論され採択された国際合意であるという点です。
2013年11月23日に閉会したCOP19ワルシャワ会合に対するFoE Japanブリーフィングはこちら
http://www.foejapan.org/climate/cop/cop19_1124.html
(『green earth』vol.48 2013 autumnより抜粋)