別名「ボーン・コレクター」。死骸で自分を装飾する肉食イモムシ

  • 2025年5月11日
  • Gizmodo Japan

別名「ボーン・コレクター」。死骸で自分を装飾する肉食イモムシ
Image: Rubinoff lab, Entomology Section, University of Hawaii, Manoa

サムネイルの画像に写っているのは、イモムシがつくった繭たちです。素材には、アリの頭やハエの羽など虫の死骸が使われています。

ちょっとゾワっとしますが、小さなイモムシがそれに包まれて武装しているのを想像すると愛おしい。

異端のイモムシ、またの名をボーン・コレクター

Image: Rubinoff lab, Entomology Section, University of Hawaii, Manoa

ハワイに生息するあるイモムシは、ハエの羽やカブトムシの腹部など食べ尽くされた昆虫の死骸を自らの保護膜に付けることで、捕食されないように身を守っていると、2025年4月25日付けのScienceAdviserにて発表されました。

この幼虫はチョウ目ヒポスモコマ属に属すハワイ諸島固有の種で、その見た目から“ボーン・コレクター”や“ハワイアン・ファンシーケース・キャタピラ”など、洒落っ気のある異名が付けられています。

ボーン・コレクターを発見したのは、Daniel Rubinoff氏率いるハワイ大学マノア校の研究チームで、2008年にオアフ島のワイアナエ山脈で初めてこのイモムシに出会い、それから17年間ヒポスモコマ属の幼虫や蛾を研究し、350種以上の系統を発見しています。ボーン・コレクター・コレクター。

住まいはクモの巣、しかも肉食

Image: Rubinoff lab, Entomology Section, University of Hawaii, Manoa クモの巣に潜むボーン・コレクター(左)

しかも、このイモムシは肉食性です。肉食の幼虫は珍しいほうで、現在記録されている約20万種以上の蛾や蝶のうち、肉食の種は約300種のみと全体の0.1%ほど。

食べられるところは食べて、食べられないパーツは繭として身につけるという無駄のなさ。これが5mmほどの小さな幼虫だから「すごーい、かわいい」と思えますが、かなりギャングスタな生態だなとも思います。

さらに、このイモムシはクモの巣の中に潜み、巣にかかった小さな昆虫を捕食するというから攻めてますよね。クモは幼虫の天敵ですが、そのリスクを回避できるほどのカモフラージュ能力があるわけです。

クモが食べ残した昆虫のパーツや脱皮したクモの皮を、自分の保護膜に取り付けてカモフラージュし、その上クモの巣の中に住むことで安全に捕食をおこなっていると考えられています。

ちなみにイモムシ同士は共食いもするので、ひとつのクモの巣に住むのは1匹だけ。全員敵の単独サバイバルです。

古代から続く種が絶滅寸前

そして、イモムシはボーン・コレクターとして苛酷な数ヶ月間を過ごしたのち、蛾へと変身します。

遺伝子解析によれば、このイモムシの系統の起源は少なくとも600万年前に遡ると考えられています。これは現在、イモムシが生息するオアフ島が形成されたより300万年前も古いそうです。

かつてはハワイの島々に広く分布していた可能性が高いと考えられていますが、現在はごくごく少数。Rubinoff氏は「彼らがまだ生き残っているのが奇跡的」とコメントしています。さらに

「私たちを本当に苦しめているのは、森林保護区だということです。今やほとんどが外来種に覆われた保護区の木々や昆虫、鳥などはすべて世界中から持ち込まれた生物の集合体で、実質的に生態系は砂漠と化しています。その結果、ハワイ在来種がもはや生存できないようなコミュニティができあがってしまうのです」

とRubinoff氏は語っています。

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