サイト内
ウェブ

宮田裕章が読み解く2023年。トレンドワードから深掘りするモノとコトとは?

  • 2024年1月20日
  • GetNavi web

2023年はどんな年だったか?──この特集では、GetNaviチームが収集した「数字」を根拠に読み解いていく。データを基に考察を行う「データサイエンス」が専門の宮田裕章氏に、様々なジャンルのヒット商品を縦断的に分析してもらった。GetNavi webではGetNavi1月号掲載のインタビューから、さらにボリュームアップした完全版として、全3回に分けてお届けします。第3回のテーマは「トレンドワードから深掘り」です。

※こちらは「GetNavi」 2024年1月号に掲載された記事を再編集したものです。
宮田裕章●みやた・ひろあき…1978年生まれ。慶應義塾大学医学部教授、データサイエンティスト。データサイエンスなどの科学を駆使して社会変革に挑戦し、現実をより良くするための貢献を軸に研究活動を行う。同時に世界経済フォーラムなどの様々なステークホルダーと連携して、新しい社会ビジョンを描く。Instagram

 

【宮田裕章さん撮り下ろし写真】

新聞紙で炊ける炊飯器はオフグリッドへの備えにも

GetNavi webでよく読まれた記事として、新聞紙で炊ける炊飯器「魔法のかまどごはん KMD-A100」がありましたね(https://getnavi.jp/zakka/902123/)。

 

実はうちも、電気じゃなくて鍋でご飯を炊いているんです。おいしい料理店が鍋や釜で炊いたご飯をウリにしているように、もちっと炊いたりもパラッと炊いたりもできて本当においしいんですよ。もう10年くらい炊飯器を使っていないので、最先端の炊飯器も素晴らしいクオリティなんだろうなとは思うんですが。

 

だから「KMD-A100」も、炊飯器の一流メーカーであるタイガー魔法瓶が出してきたということで、どんな炊きあがりになるのかとても興味があります。

↑新聞紙を燃料にできてオフグリッドな、かまど型炊飯器の記事。10月発売だが、現在発送が2024年2月下旬以降となっているヒット商品だ

 

新聞紙を燃料にできるということでエコっぽいものの、CO2は排出してしまっているんですけどね(笑)。ただ、そういう社会的な意味づけでいうと、この炊飯器は「オフグリッドへの備え」ということでも関心を持たれたのではないかと思います。現代はかつてないほど電力に依存した社会になっていますから、オフグリッド、つまり電源が供給されない状態では、途端に生活能力のほとんどを失ってしまうという恐怖があります。

 

電力に限らず、水道やガスなどいつも当たり前に存在するインフラ、そこから切り離されたときにどうするかという備えや訓練が必要になっています。もしかしたら昨今のキャンプへの関心は、そういうところにも要因があったのかもしれません。

 

オフグリッドは、ビジネス界でも大きなテーマの1つになっています。たとえば今後の社会で大いに活用されるであろう生成AIも、そもそも電源がなければ利用できません。実は生成AIについても、電源の供給をどうするかというのは大きな課題なのです。

 

社会的な価値の重心が「モノ」から「体験」へと変わりつつある

GetNavi1月号では、JR東日本「HIGH RAIL 1375」や、大井川鐵道「星空列車」といった観光列車が取り上げられていました。そこから読み取れるのは、列車に乗るということの価値が「目的地に効率よく移動すること」だけではなく「列車に乗ってどのような体験をするか」にも見出されているということです。

 

この変化は乗用車についてもいえて、「ブランド力のある高級車を所有してドヤる」ではなく「その車でどういう体験をするか」が重要になっています。その象徴の1つが、かつて「東京モーターショー」だったイベントに変わって今年開催された「ジャパンモビリティショー」です。メインテーマが、「モーター(カー)」という「モノ」から、「モビリティー(移動手段)」という「体験」へと拡大されたといえるでしょう。

 

同じく1月号で、トヨタ「アルファード」と「ヴェルファイア」(いわゆるアル・ヴェル)や、ホンダ「N-BOX」のフルモデルチェンが取り上げられています。またGetNavi webでは、三菱「デリカミニ」(https://getnavi.jp/vehicles/886633/)の記事も高い注目を集めていました。

↑ミニバンながらアウトドアにも対応する人気機種「デリカD:5」のファミリーにあたる軽自動車。受注台数は約半年で1万6000台を突破

 

このことから読み取れるのも「体験」重視ということ。アル・ヴェルは空間づくりが優れています。内部がとにかく快適なんですよ。N-BOXにしてもデリカミニにしてもそう。「効率的に移動する」「所有して喜ぶ」という、「モノ」としての価値以上に、そのモノを利用して得られる体験をどう作っていけるか、ということが求められるようになってきたのでしょう。

 

デリカミニに関しては、それまで普通乗用車として人気だった車種が軽自動車として発売されたというところに、ガソリンの高い時代をも反映されているといえます。

 

カップラーメンが世界における日本食の評判を押し上げしている

GetNavi webの「食」の分野では、明星「麺とスープだけ え? 透明スープの豚骨!?」(https://getnavi.jp/topic/899886/)の記事が人気でした。具のない地味すぎるビジュアルから、SNS時代を逆手にとって「むしろ映える」ということも注目された理由だったのかもしれません。

 

ここからはカップラーメン全般の話になるのですが、私は海外の人が日本食をおいしいと認識してくれている理由の1つが、海外で販売されているカップラーメンではないかと思っています。日本で提供される食事って世界的にみてもトップクラスなんです。ミュシュランの星を獲得した店の数が多いトップ5の都市のうち、3都市が日本だということもそうですが、そのような「高くておいしい料理」以外に、カップラーメンやコンビニごはんのような「安くておいしいもの」が多いのも特長です。

 

にも関わらず日本食が海外でしばらく弱かったのは、お寿司がおいしくなかったことが原因ではないでしょうか。お寿司の味は鮮度にかなり依存しますし、手に入る魚の種類も違うので再現がすごく難しい。

 

その点で、カップラーメンは海外でもおいしい。そして誰もが手に取りやすい。この、場所を問わず同じおいしさを提供できる日本のカップラーメンのおかげで、海外の人たちが「日本食はおいしい」という認識を持ってくれているのではないでしょうか。その意味でもカップラーメンには感謝しています(笑)。

 

 

撮影/映美 取材・文/湯浅顕人 ヘアメイク/新井裕梨

あわせて読みたい

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
(C)ONE PUBLISHING