2025年4月、リニューアルオープンから1周年を迎えた「TORAYA GINZA」。賑やかな銀座の中心にありながら自然に包まれているような雰囲気と、ほかのお店にはない特別なお菓子の数々に、この場所を「とっておき」と感じている人も多い。
今回は、「TORAYA GINZA」の1周年記念にまつわるメニューをご紹介します。
「TORAYA GINZA」は、和菓子の伝統を受け継ぐ「とらや」の中でも、和菓子の楽しみが広がるメニューを提案している店舗だ。
特に、目の前で職人が和菓子を作り上げていく様子を見ながら、できたてをいただけるカウンター席は、「とらや」初めての試み。まるでお寿司屋さんのように静謐で、4人までのプライベートな空間は、ゲストを連れて訪れたくなる。
季節ごとに登場するきんとんは、その中でも過程を見るのがなにより楽しい。
餡を網でこしてそぼろ状にし、餡玉のまわりにふんわりと付けていく様子は、何度見ても見とれてしまう。空気をふくんだみずみずしい餡が口の中でほどけるような食感は、いままで経験したことがないものだ。
1周年を記念して登場したのが、紅茶を使ったきんとん「紅香織(こうこうおり)」。
「餡に合う香りを」と選んだ茶葉は「ディンブラ」だ。そぼろになる餡に茶葉を混ぜ、蒸し上げることで香りをしっかり立たせるのだという。
ディンブラのフルーティーな香りとほのかな渋みが確かに餡になじんで、なんとも滋味深い。
楽しいのが、添えられたアーモンドダイス。クラッシュしたアーモンドにカルダモンやシナモンなどのスパイスをまとわせたもので、途中、きんとんにつけて食べるとまるでチャイのような味に変化する。
伝統的な技術と、進化を止めない職人たちのアイディアが詰まったきんとんだ。
もうひとつ、1周年を記念した特別なきんとんがある。こちらはオンライン予約のみで提供されている、祝いのひと品だ。
なんと、越中・富山、桝田酒造店の「満寿泉 純米」をきんとんに使うという。
“祝い酒”にちなんだこのお菓子は、餡玉にもちょっとした工夫がある。餡玉にごく薄い求肥をまとわせ、少しだけもっちりとさせ、お祝いの「お餅」の雰囲気を。
日本酒が使われているのは、そぼろにする餡。少量だが、香りと味を段階に分けて、手間をかけて含ませているため、風味は豊か。「満寿泉」は1月に作られる酒粕入りの羊羹にも使われており、餡との相性は折り紙付きだ。
仕上げには金箔を添え、日本酒、餅(求肥)、金と、まさに日本のお祝いに使われる素材が揃い、1周年を寿ぐお菓子となっている。
ふわっとしたそぼろから広がる、純米酒の豊かなコクと香り。もちっとした求肥の食感と重なり、一口ごとに幸福な気持ちになるはず。
あんみつは通年愛される甘味メニュー。この春は1周年記念として、今までにないほどたっぷりと生いちごを使った「いちごあんみつ」が登場する。
いちごは、白餡との相性のいい品種を試行錯誤。ほどよい酸味と食感がある「とちあいか」を使う。たっぷりと生のいちごを添えるほか、白餡の横に添えられた甘酸っぱいソルベも、とてもフレッシュな味わい。
いちごよりも少し酸味があるラズベリーの水羊羹は、味も彩りも華やがせるひと工夫だ。
添えられたいちごの蜜は、フレッシュなだけでなく、少し煮詰めたいちごの甘さも醍醐味だ。濃縮したいちごの味を加えることで、さらに濃厚な香りが立ちのぼる。
生いちご、白玉、白餡をひと口で頬張ると、まるでいちご大福を食べているよう。さまざまな表情を見せてくれる、なんとも春らしいあんみつだ。
1年間、話題をさらった「夜半の月(よわのつき)」は、もちろんこれからもカウンターで楽しめる。いわゆるどら焼きにも美しい菓銘をつけるのが、とらや流だ。
この店オリジナルの作り方は、生地のふちをバーナーで炙ること。こうすることで、香ばしさがぐっと増し、サクッとした歯ごたえで、さらに焼きたてを楽しんでいる実感がある。
まだ熱いうちに小倉餡を挟み、ふんわりしたまま提供。ほかでは食べたことのない、幸福感に溢れた逸品だ。
リニューアルから1年。ますます進化する「TORAYA GINZA」は、多くの和菓子ファン、甘味好きの心をとらえて離さない。
銀座中央通りから1本入った「すずらん通り」からエレベーターに乗って訪れる隠れ家は、一度訪れたら何度も通いたくなる場所だ。
TORAYA GINZA
所在地 東京都中央区銀座7-8-17 虎屋銀座ビル4F
電話番号 03-6264-5200
営業時間 11:00〜19:00(L.O.18:30)
定休日 元日、第2月曜(祝日の場合は第3月曜)
https://www.toraya-group.co.jp/shops/shop-6/
文=CREA編集部
写真=志水 隆