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「手遅れと言われても自信があった」 『光る君へ』も注目の吉田羊が “下積み時代“から切り拓いた役者道

  • 2024年5月11日
  • CREA WEB

下積み時代から持ち続けてきた感謝の気持ちとポジティブさ


吉田羊さん。

 各局からドラマのオファーが絶えず、1月期は『不適切にもほどがある!』、同時にNHK大河ドラマ『光る君へ』と、幅広い役柄を自在にこなし、作品ごとに圧倒的な存在感を放つ吉田羊さん。

 そんな吉田さんが今、全身全霊で向き合っているのが、かのシェイクスピアの名作を舞台化した『ハムレットQ1』。今回のハムレットは、現在よく上演されている戯曲の原型ではないかともいわれるQ1版で、吉田さんが“男性”であるハムレットを演じることでも話題に。『ハムレットQ1』にかける意気込み、そしてプライベートについてもお伺いしました!


さすがに詮子さまの姿でハムレットは読めませんでした(笑)


吉田羊さん。

――今年は1月期のドラマ『不適切にもほどがある!』、そしてNHK大河ドラマ『光る君へ』など、話題作への出演が続いていらっしゃいます。近い時期にまったく逆方向の違う役柄を演じるのは大変ではないですか?

 私も、自分でそれなりに器用なほうだと思っていたのですが、さすがに平安時代の詮子さん(「光る君へ」で演じている役)でハムレットの台本は読めなかったです(笑)。やっぱり気持ちが全然入らなくて。

 役作りにおいては、ありがたいことにメイクや衣装とか小道具が大きな助けになったので、意外とその扮装をすれば役の気持ちに入っていくスイッチになったというのはあります。苦労があるとすれば、心身が完全には休まらないことですね。何をやっていても、今年の前半はずっと頭の中にハムレットのことがありましたから(笑)。

 とりあえず、行き詰ったら『寝る』というのをやっていました。深夜2時、3時までセリフを覚えようとしたところで全然集中できないので、こうなったら、一回寝て、早起きしよう! みたいな感じで切り替えて。睡眠を取ることでリセットするというのを意識していました。

命を救える職業ではないけど、1時間だけでもこの世の憂さを忘れてもらえたら


吉田羊さん。

――吉田さんは趣味も広くお持ちだと思います。お着物や食にもお詳しくて、ご自身で文章も書かれます。そういった興味や探求心の原動力はどこにあるのでしょうか?

 一番の原動力はやっぱり応援してくださるファンの方です。皆さんが楽しんでくださるのであれば、私が楽しいと思うこと、面白いと思うことをシェアして、一緒に楽しめたらいいなぁという気持ちでやっています。そんなふうに“誰かが楽しんでくれる”ことに自分が役立っているという実感が原動力になっている感じです。

 お医者さんみたいに、具体的に命を救えるわけではありませんが、少なくともドラマを観ている1時間、舞台を観ている2時間だけは、この世の憂さを忘れて、ふっと心が軽くなったり、日頃のツラさから解放させることができたらいいなと、そう願いながら演じているところはあります。

――常に興味のアンテナを張られているんですね。

 そんなことないですよ。私の興味はすごく狭いので(笑)。それこそ、今おっしゃった着物と食事に関しては、衣食住のうちの2つですからね。生きていくうえで絶対に関わるものですから、衣服であれば、より自分が心地いいものを身につけたい、食べるものであればより美味しいものを死ぬまでにひとつでも多く楽しめたらいいなという気持ちでやっています。

 でも、私は本当に思いつきでいろいろ言っちゃうので、マネージャーさんは間違いなく、すごく振り回されていると思います……(苦笑)。本当にたくさんの方にお力を貸していただき、カタチにしていただいているので、感謝の気持ちでいっぱいですね。


吉田羊さん。

――着物イベントなどでは、実際に吉田さんにお会い出来たりするものもありますよね。ファンの方はドラマや舞台だけでなく、生身の吉田さんにお会いできるので嬉しさもひとしおだと思います。

 普段顔の見えない、インスタでコメントをくださる方々が「私、このハンドルネームでやっています」と言ってくださると、「ああ、あのコメントをくれた方なんだ」と繋がるんですよね。皆さん、お手紙もよくくださるので、実際にお会いすると「ああ、あのことを書いて送ってくださった方だ」と思い出すんです。

 皆さん、あれこれと工夫を凝らして、同じ封筒で送ってくださるとか、毎回絵を描いてくださるとか……。彼女たちなりのいろんな技で私に印象付けようとしてくださるんです。なので、自己紹介されたときに、ピンと来る方が何人かいらっしゃいます。

これから先に掲げる理想は……秘密です!


吉田羊さん。

――吉田さんは、朝ドラに出演されていたときの役を中井貴一さんに見いだされたというブレイクのきっかけがちょうど30歳前後に訪れたと伺いました。CREAの読者も同世代です。いま、振り返って30代の女性に掛けていきたい言葉はありますか?

 20代から役者をスタートして、ちょうど私が映像に移行したのが30代で、本当に転機の時期だったんです。その時は年齢的にも「すでに手遅れ」と言われることが多かったですし、プロフィールさえ見てもらえないという、悔しい想いもたくさんしました。でも、なぜか「絶対大丈夫だろう」という根拠のない自信が自分にはあって。

 何よりも、どんなお仕事でもいただけることがありがたくて嬉しかったですし、そもそもスタートが遅いんだから、仕事をいただけるだけですごいこと! と思っていたんですよね。そして、何より楽しかった。だから、どうなるだろうと考えてもしょうがない将来の不安に絡めとられることなく、無邪気に毎日の楽しみを噛みしめて過ごしてきた過去の自分に感謝したいと思います。

 当時を振り返ると、上手くいかないときに「今じゃないだけ」「私の仕事じゃなかっただけ」と前向きに考えていた気がします。そういうふうに発想の転換ができて、常にポジティブにいられたところも良かったのかなって。

 私は会社勤めをしたことがないので、『CREA』読者世代の皆さんには私には計り知れないご苦労がたくさんおありだと思うのですが、でも、何があっても自分だけは自分の味方でいてあげてほしいなと思います。自分の人生は誰のモノでもなく、誰が助けてくれるわけでもありません。いくつになったらこうしなくちゃ、というのもない。ワクワクすることや楽しいと感じることで周りをいっぱいにして、自分のご機嫌を取りながら過ごしてほしいですね。

――これから先、吉田さんが描いていらっしゃる目標や夢、目指しているゴールや理想の姿などをお話いただけますか?

 理想? ありますよ。でも、言いたくない。描きかけの絵を見せたくない、みたいな気持ちです(笑)。

 まだまだ未完成なんです。やっと足の親指の爪の分くらい進んだかなぁぐらいのところにいるので、まずは目の前にあるお仕事を一生懸命やって、皆さんに喜んでいただけたら、また次のお仕事をいただけるのかなと思っています。

――お忙しい毎日を快適に過ごすために、守っていらっしゃる習慣はありますか?

 毎月体調に合わせて茶葉をブレンドしてもらったハーブティを水筒に入れて持ち歩いています。あとは、日々のランニングと週1回のパーソナルジムかな。

 2019年の秋から走り始めたんですが、そのときに入っていた舞台で、どうにもこうにも私は肺活量も少ないし、代謝も落ちてきたのを実感してしまい、「あ、私運動してないわ」と気付いて。スポーツクラブも会費だけ払って行かなくなることがあったので、とにかくお金をかけずにすぐに始められることってランニングじゃん!と思って、家の周りを走り始めました。

 最初は100mダッシュもできない状態でしたが、継続は力なりですね(笑)。今は3〜4キロくらい走ります。森さんがよく「稽古は裏切らない」っておっしゃるんですけど、そのとおり、鍛錬も裏切らないと思います。

――CREAでは贈り物やお取り寄せも人気特集のひとつなのですが、吉田さんが日頃お取り寄せなどで気に入っていらっしゃるものを教えてください!

 福岡にシフォンケーキ専門店マリィというお店があるんですが、私、福岡空港で初めて購入したんです。そしたら、すごく美味しくて。フワフワで柔らかくて、もう、飲めるシフォンケーキ!(笑) 嚙まなくていいくらい。

 種類もたくさんあるんですよね。帰るたびに買って帰ります。あまり日持ちがしないんですが、それは作りたての証。今日、明日会うという人にじゃないとお土産にできないけれど、それこそすごく貴重。買いたて、ほやほやというので、相手も喜んでくださると思います!

吉田羊(よしだ・よう)

2月3日生まれ、福岡県出身。1997年より舞台を中心に活動をスタート。12年には連続テレビ小説『純と愛』に出演、14年にフジテレビ『HERO』第2期で女性検事役に抜擢されて、一躍脚光を浴びる。以来、様々な話題作への出演が続いている。近年の主な出演作は、【舞台】『ツダマンの世界』『ザ・ウェルキン』(22)、『ジュリアス・シーザー』(21)、【映画】『クレイジークルーズ』『Winny』『イチケイのカラス』(23)、【ドラマ】『不適切にもほどがある!』(24・TBS)、大河ドラマ『光る君へ』(24・NHK)、『侵入者たちの晩餐』(24・NTV)など。2024年5月17日より映画『ハピネス』が公開。

衣裳協力

ジャケット 79,200円、ビスチェ 39,600円、パンツ 46,200円(全てエズミ/リ デザイン 03-6447-1264)、カットソー 31,900円(プント ドーロ/ブランドニュース 03-3797-3637)、ピアス 121,000円、イヤカフ 64,900円、リング(左手中指) 94,600円、(左手人差し指) 82,500円(全てヒロタカ 表参道 03-3478-1830)、バングル 17,600円(アデルビジュー ショールーム 03-6434-0486)、サンダル/スタイリスト私物

文=前田美保
写真=佐藤 亘
ヘアメイク=吉川陽子
スタイリスト=井坂恵(dynamic)

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