サイト内
ウェブ

織物の産地で人気のタフティング教室。〈小川染色〉の糸でオリジナルのラグをつくろう

  • 2024年5月23日
  • コロカル

近年、日本でも注目されつつある「タフティング」。電動工具を使って布に毛糸を打ちつけ、ラグや小物を制作するハンドメイドのこと。カラフルな糸と好きなデザインで、オリジナルなラグを自由自在につくることができます。

尾州(びしゅう)織物の産地として有名な愛知県一宮市にある〈小川染色〉では、カラーバリエーション豊富な自社染めの糸を使ったタフティング教室を開催。工房の壁には124色もの糸が並び、カラーチャートを眺めているようなワクワクした気分に包まれます。

タフティングは、親子や高齢者にも楽しめるものづくり

「工場敷地内の小屋を改修して工房をつくり、2022年からワークショップを開始しました。色、かたち、デザイン、サイズが自由に選べ、世界にひとつだけのオリジナル作品が老若男女関係なくつくれるのもタフティングの魅力だと思います。これまでにも、小学生から80代までの幅広い年代の方が参加してくださいました。体験希望者も増えているため、6月には、6名まで同時に体験できるスペースに拡張予定です」と中村さん。

初心者でも、30センチのラグであれば3時間ほどでできあがる。

初心者でも、30センチのラグであれば3時間ほどでできあがる。

タフティングは、手作業の刺繍とは違い、一方向にタフティングガンを打ち込んでいくことで、絵を描くようにデザインを仕上げていくことができます。インターネットが中心の世の中となり、バーチャルが日常的になっている今、素材にふれながら遊び感覚でできるタフティングは、豊かな感性を取り戻してくれそう。「私自身もタフティングをやるようになってから、夢中でキャンバスに向かうので、スマホを手放す、デトックス時間となっています(笑)」と中村さん。

ガンで糸を打ちつけていく感覚は、スピードもあり、ストレス発散にも。

ガンで糸を打ちつけていく感覚は、スピードもあり、ストレス発散にも。

参加1週間前までに公式ラインに希望のデザイン送り、当日、プロジェクターに反転させたイラストを布に投影させ、それをなぞって下書きをつくります。

参加1週間前までに公式ラインに希望のデザイン送り、当日、プロジェクターに反転させたイラストを布に投影させ、それをなぞって下書きをつくります。

会社の危機を救ったタフティングを通して、新たに糸の魅力も伝えていきたい

コロナ禍で取引先からの注文が半減した〈小川染色〉では、個人消費に活路を見いだそうと、インターネットで見つけたタフティングに注目。安藤孝俊社長が、当時、福岡で働いていた次女の中村依純(いずみ)さんに、試作を依頼したのが始まりなのだとか。しかし、まだ日本ではタフティングの情報もほとんどなかったため、依純さんは海外のYouTubeを見ながら、試作を繰り返したそうです。それが思いのほか楽しく、新しい視点やアイデアを提案しながら、家業を成長させていきたいとの思いもあり、本格的に会社の事業に関わろうと愛知県へのUターンを決意されました。

タフティングのワークショップイベントなども開催予定の中村依純さん。

タフティングのワークショップイベントなども開催予定の中村依純さん。

「幼い頃は、家が工場に隣接していたので、機械音や染色に使用する助剤の独特な匂い、山のように積まれた糸など、どれも当たり前の景色で、特別なものだとは思っていませんでした。父に仕事の話を聞くこともなく過ごしていたので、タフティングの相談を受けなければ、関心がないままで終わってしまっていたかもしれません。うちの糸は、特殊な機械で染色しているため、風合いがよくやわらかいんです。手ざわりの感触も心地よい。そういった曾祖父の時代から長年受け継ぎ、築いてきたものづくりに関わることができ、誇りを感じています」と中村さん。

タフティングミラーと呼ばれる鏡を使った飾り。

タフティングミラーと呼ばれる鏡を使った飾り。

自分の生まれ育ったまちの歴史を知ることで、新たな可能性を見いだせた

中村さんの父である安藤社長で3代目となる〈小川染色〉。一宮市が繊維産業で栄えていたことから、素材である糸を染色する会社もかつてたくさんあったのだとか。それが高度経済成長で、安価な繊維が、海外から輸入され、繊維業界は衰退の一途をたどってしまいました。

「尾州は、木曽川や濃尾平野のめぐみを受け、古くから毛織物産地として知られてきた歴史があります。現在では、高齢化も進み、産業自体が縮小していますが、そういった状況のなかでも、技術を引き継いできた職人さんと交流したり、質の高い織物に触れたりする時間を通して、伝統的なものづくりの良さを感じてもらえると思っています」と中村さん。

歴史を感じる工場内。

歴史を感じる工場内。

タフティングの仕事をはじめてから、SNSなどを通じて仲間ができたり、尾州織物を盛り上げようとしている地域の方々と知り合ったり、ものづくりにおいても、新たな広がりを見せているといいます。最近では町を活性化するイベントにも呼ばれ、〈繊維の町・一宮〉が、盛り上がってきているのだとか。

イベントでのタフティングの様子。

イベントでのタフティングの様子。

今後は、タフティング仲間が集まれるイベントも開催していくという中村さん。個々の色を組み合わせることで生み出される美しいタフティングのように、人々が緩やかにつながりながら、新たな世界が広がっていきそうです。

information

小川染色

住所:愛知県一宮市奥町字風田23

TEL:0586-62-1241

WEB:小川染色 タフティング体験教室

Instagram:@ogawa_sensyoku

ワークショップ体験料金:

・ラグ30センチ×30センチ (時間目安:約3時間) 13,200円・ラグ40センチ×40センチ (時間目安:約4時間) 16,500円・ラグ50センチ×50センチ (時間目安:約5時間) 22,000円

・タフティングミラー 30センチ × 30センチ (時間目安 約2時間) 16,500円

writer profile

Naomi Kuroda

黒田 直美

くろだ・なおみ●愛知県生まれ。東京で長年、編集ライターの仕事をしていたが、親の介護を機に愛知県へUターン。現在は東海圏を中心とした伝統工芸や食文化など、地方ならではの取り組みを取材している。食べること、つくることが好きで、現在は陶芸にもはまっている。

あわせて読みたい

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
Copyright © Magazine House, Ltd. All Rights Reserved.