その瞬間にその場でしか味わえない、作りたてのおいしさを味わうというデザートの醍醐味。その魅力を存分に堪能できる、デザートコースを提供するお店が増えています。
カウンターに腰かけ、シェフの言葉に耳を傾けながら目の前で仕上げられるひと皿、ひと皿に胸を高鳴らせ、香りや温度、音を感じ、味わいを楽しむひとときは、まさに至福の時間。
とっておきのデザートコースを味わいに、いざ!
東京での「サロン・デュ・ショコラ」への出店やイベントで人気を集め、2024年2月、待望の旗艦店をオープンした「PAYSAGE(ペイサージュ)」。
このブランドを立ち上げ、腕を振るうのは、数々のガストロノミックなレストランでシェフ・パティシエを務めてきた江藤英樹さんです。
コンセプトは、「幸せや喜びに寄り添う、至高のお菓子を。あなたの時と共に」。季節感や素材を大切にしたお菓子やアフタヌーンティーが、笑顔あふれる幸せな時間を届けています。
そして4月には、2階のシェフズテーブルもオープン。木の温もりを感じさせる階段を上がると、まるでシェフの家に招かれたような6席だけの特別な空間が現れます。
ナチュラルな色合いの土壁には、ドライフラワーを押し付けて施されたボタニカルな模様が施され、やさしい雰囲気。ここで味わえるのが、ともに毎月内容が変わる「デザートコース〜Le Jardin Secret(ル・ジャルダン・セクレ)『秘密の園』〜」と、日曜日限定のパフェ「クープ エレアーヴ(パルフェ)」です。
ここでは、春の香りあふれる4月の「デザートコース〜Le Jardin Secret(ル・ジャルダン・セクレ)『秘密の園』〜」をご紹介します。
コースのスタートは、「日常から非日常へと招き入れるイメージ」と江藤さんが語る、さっぱりとした柑橘のデザートから。
ゼラチンの薄い膜に閉じ込められた、愛媛産「せとか」の薄皮まで使った球体状のジュレの下には、同じくせとかの薄皮まで使ったグラニテが。みずみずしく濃厚な味わいと香りが弾けます。
さらに器の底からは、高知県「白木果樹園」のブラッドオレンジのフレッシュな果肉、鹿児島県「清木場果樹園」のキンカン「黄金丸」をコンポートにしたペーストが現れ、せとかとは異なる甘みやほんのりとした苦みをプラス。心も体もリフレッシュしていきます。
「大無類和三盆」とは、徳島県「服部製糖所」が手掛ける、蜜を除いて最初にできた最上級の和三盆糖のこと。その上質でやさしい甘さを生かすべく、大無類和三盆のクレーム・ブリュレに大無類和三盆のアイスクリームをのせ、余計なものをそぎ落としてごくシンプルな構成に。
「なめらかな口溶けとともに、どこか懐かしさを感じさせる穏やかで繊細な甘みが広がり、すっと消えていくおいしさを楽しんでいただければ」と、江藤さんは話します。クレーム・ブリュレの香ばしいキャラメリゼが、食感と味わいのメリハリをプラス。
ここで登場するのが、ペアリングの「エルダーフラワーと小夏のドリンク」。高知県「白木果樹園」の小夏の果汁と皮、エルダーフラワーのシロップを合わせ、小夏の清々しさと苦みが、やさしい甘さ、フローラルな香りと心地よく混じり合います。
ドリンクを楽しんでいるところに登場する3皿目は、初夏へと向かう気分も盛り上がる香り豊かな組み合わせ。
ジャスミンティーのブランマンジェの上に、フレッシュな高知県「白木果樹園」の小夏の果肉と皮、ライチ、ココナッツのソルベをのせ、スパイスや小夏の皮が香るシロップをかけてテーブルへ。目の前で小夏の皮をすりおろしてかけ、ミルクフォームをのせれば、さわやかな香りがふわりと広がります。
「ココナッツ×小夏、柑橘×ライチは大好きな組み合わせ。それを両方合わせました」と話す、江藤さん。小夏の清々しさとココナッツのまろやかさを、シロップとブランマンジェのオリエンタルな香りが包み、馥郁としたハーモニーを醸し出します。
続いて、エクアドル産チョコレート「コセーチャドラーダ」を主役にしたデザートを。「そのチョコレートの特徴であるチェリーやドライフルーツを思わせる味わい、花やヘーゼルナッツのような香りに合わせて構成しました」と、江藤さん。
軽やかでほろ苦いチョコレートのチュイールと、ベリーやルバーブ、ライムなどが香るオリジナルフレーバーティー「ガーデン」のムース、コセーチャドラータのなめらかなクリームのようなソースが出合い、力強くも華やかな香りが押し寄せます。中に潜ませたフランヴボワーズのコンフィチュールと、散りばめられたフレッシュなフランボワーズと、削りかけたローストヘーゼルナッツがアクセント。
ふくよかなデザートの余韻に浸りながら、バニラや柑橘系のフルーツ、バニラが香る、「パルフェタムール」のアイスティーを。
デザートのフィナーレを飾るのは、甘くて果実味も香りも濃厚な埼玉県和銅農園のいちご「あまりん」を贅沢に使ったひと皿です。
「ショートケーキを思わせる味わいでありつつ、イチゴ畑のようなイメージでにぎやかに、さまざまな食感や味を合わせました」と話す、江藤さん。
イチゴをほんのり香らせたカカオパルプとミルクのアイスクリームと、カカオニブのエスプーマ(泡)が優しい味わいと香りを広げ、マスカルポーネのクレーム・シャンティイと、カスタードと生クリームを合わせたクリームがコクをもたらします。
そして、クリアなベリーのソースや、フランボワーズのチュイール、オリジナルフレーバーティー「ガーデン」のクランブルなどが多彩なアクセントをプラス。思わず笑顔がこぼれます。
お茶菓子は、エクアドル産チョコレート「カミーノベルデ」でコーティングした、キャラメルポップコーンです。フルーティでいて力強く、複雑な風味を持つ「カミーノベルデ」が、キャラメルの香ばしさ、ほんのり塩気のあるポップコーンとマッチして、手が止まらないおいしさ。オリジナルフレーバーティー「ガーデン」とも相性ぴったりです。
「生産者と素材へのリスペクトをこめて、自然の恵みである旬の食材と季節を大切にしたデザートを、みなさんに召し上がっていただきたいと思っています。そして、僕のデザートやパフェを通じてこのシェフズテーブルが、新しい価値や価値感が生まれる場所になれば、とてもうれしいですね」と、江藤シェフ。エレガントなデザートとともに、心豊かな時間を過ごせる特別な“秘密の園”です。
PAYSAGE(ペイサージュ) 代官山本店
所在地 東京都渋谷区代官山町20-23 Forestgate Daikanyama
電話番号 03-6455-2515
営業時間 11:00〜19:00(L.O.18:00)
定休日 月曜
https://paysage-he.com/
デザートコース 〜Le Jardin Secret(ル・ジャルダン・セクレ)「秘密の園」〜
料金 16,500円
開催日時 木〜土曜12:00〜(2時間制)
席数 6席
※予約は毎月10日より翌月分をTable Checkから受け付け開始。
シェフパティシエ 江藤英樹さん
1985年東京都生まれ。フランスで修業後帰国し、「ベージュ アラン・デュカス 東京」で研鑽を積む。「ドミニク・ブシェ トーキョー」や、「SUGALABO」、「ティエリー・マルクス」(現在は閉店)にてシェフ・パティシエを務める。2020年、東京・虎ノ門「unis」のシェフ・パティシエ、「Social Kitchen TORANOMON」のディレクター・パティシエに就任。2021年、自身のブランド「PAYSAGE」を始動し、サロン・デュ・ショコラにも参加。2024年、待望の旗艦店「PAYSAGE」をオープン。
文=瀬戸理恵子
写真=鈴木七絵