食の都・パリを牽引する名門ホテルのメインダイニングは、受け継がれてきた技術と革新的な感性を備えたスターシェフたちの“作品”に魅せられる場所。
その優美なガストロノミーを皮切りに、今行くべきグルマンの旅を案内する。
4回に渡り、名門ホテルのメインダイニングとそのホテルをご紹介。
アラン・デュカスの後任としてシェフに就任したのがジャン・アンベール氏。
料理のリアリティ番組「トップシェフ」の優勝者として注目を浴びていた彼が表現するのは“クラシックへのオマージュ”だった。
約250年前に書かれたレシピやエスコフィエの料理本を紐解き、埋もれてしまっている古典料理を掘り起こすといった研究心で自身の世界観を構築。
「何世紀にもわたってモダンで、遊び心を忘れない伝統料理に敬意を表したい」という思いがそこにはあった。
例えば、前菜の“ザ・ブリオッシュ・アントワネット・キャビア”はパン不足に不満を持った民衆たちに「パンがないならブリオッシュを食べればいいじゃない」と言った話から着想。
伝統的な料理に物語を添えて、ゲストを楽しませるアイディアに溢れている。
料理だけでなく、インテリア、テーブルセッティング、サービススタッフの制服、メニューのデザインにいたるまでマリー・アントワネット時代をイメージしてコーディネート。
デザートが出されるときは呼び鈴が鳴りガラス扉が上がりパティスリーシェフが登場するといった演出で、エンターテインメント性のあるひとときが過ごせる。伝統と新しさが相乗効果となったスペシャルな体験を。
Jean Imbert(ジャン・アンベール)
1981年生まれ。2021年にホテル・プラザ・アテネの総料理長に就任。2023年よりカンヌのホテルマルティネスのレストランにも携わる。
Jean Imbert au Plaza Athénée(ジャン・アンベール・オ・プラザ・アテネ)
所在地 25 Avenue Montaigne 75008 Paris
電話番号 01 87 16 44 60
営業時間 12:30〜14:15(土曜のみ営業)、19:15〜22:15
定休日 日・月曜
https://www.dorchestercollection.com/paris/hotel-plaza-athenee
モンテーニュ通りに1913年に誕生したホテル・プラザ・アテネは、同時期に隣にオープンしたシャンゼリゼ劇場からの作曲家、演劇関係者たちが訪れ、華やかな社交場となっていた。
時を経て2013年には大改装のため休業し翌年リニューアルオープン。
レストランはアラン・デュカスによる大地と自然に重きを置いたガストロノミーで再出発を果たし、2021年からはジャン・アンベールが着任し新たな世界観を生み出している。
パリ屈指の美食に加えて、客室は宮殿を思わせる華やかなるインテリア。
208ある部屋のほとんどにはバルコニーがあり、エッフェル塔が真近に見られるロケーションに心躍る。
パリのエッセンスに包まれたパラスホテルの魅力に浸ってほしい。
Hôtel Plaza Athénée(ホテル・プラザ・アテネ)
所在地 25 Avenue Montaigne 75008 Paris
電話番号 01 53 67 66 65
客室数 208室
料金(1室)2,000ユーロ〜
https://dorchestercollection.com/paris/hotel-plaza-athenee
文=梅崎奈津子
撮影=小野祐次
コーディネート=田中敦子