初となる著書『My Life』(祥伝社)を上梓したpecoさん。書籍に込めた思いや、自身の幼少期についても振り返ってもらった。
――初の著書『My Life』(祥伝社)が刊行されました。カバーが昔の洋書のような雰囲気で素敵ですね。
pecoさん(以降、peco) 「外」を褒められるのが一番うれしいです(笑)。インテリアとしてもおしゃれに見える本にしたくて、背景からフォントの書体、色も自分で決めさせてもらいました。
「中」の「はじめに」と「おわりに」は、私自身が一から書いたものです。
――予約の段階でAmazonの総合ランキング一位になるほど大きな反響を呼んでいます。どのように受け止めていますか。
peco 発売前、「pecoちゃんの本だったら絶対素敵なはず」みたいなありがたいコメントをたくさんいただいただのですが、私は人から期待されるのが本当に苦手で。ただ自分のこと書いてるだけやから〜と思ってました(笑)。
でも、「『私はこう思うけど、あなたはどうですか』と聞かれているような気がした」と言ってくれる読者の方がいて、「あくまでもこれは私の考えです」というのはコミュニケーションとして普段から意識していたことだったので、それが伝わったのは嬉しかったです。
――エッセイを出すことになった経緯を教えてください。
peco 2022年8月に新しい家族のかたちを発表したことで、応援のメッセージをたくさんいただきました。その中で、「pecoちゃんは心が広すぎる」「pecoちゃんがかわいそう」といった心配の声もいただいていて。その時、ありがたかった反面、ちょっと違うんだけどな、という気持ちもあったんです。
実際、心が広いわけでもないし、私が優しいとかではなくて、ryuchellからもらった愛や築いてきた関係性があったからこそ自然にできた決断だったので、これまで伝えきれなかったことを、自分だけの言葉で、本というかたちにまとめたいと思ったんです。
「そもそも、新しい家族のかたちって何?」っていう、そこもわかりにくいので、ちゃんと伝えたいなと思いました。
――ご家族の話をするということで、出版にあたってryuchellさんにも相談されたのでしょうか。
peco ryuchellからは、前から「ぺこりんの本欲しい人いっぱいいると思うよ〜」と言われてたんです。でも、当時の私は山も谷もない平凡な人生を歩んでいたので、「私の本なんて3ページで終わっちゃうからいいよ」と言っていて。
そうこうしている内にryuchellとの関係性が変わったことで、今なら本を出す意味があるかもしれないと思って話したら、「え、絶対いいと思う!」と喜んでくれました。というか、あんたの話やけど一体誰目線やねん、とは思いましたけど(笑)。
――お二人で相談しながら作り上げた部分もあるのでしょうか。
peco 出すことが決まってからは、特に相談はしませんでした。ただ、本の制作時は、ryuchell自身が急激に変化していた時期でもあり、いろんなことに対して複雑な思いを持っていて。
私も、何度か出さない方がいいかな、と思ったこともありましたが、止められることもなかったし、じゃあ出そうとなりました。
――本の中では、新しい家族のかたちをどのように模索していったのかが赤裸々に綴られています。語ることに躊躇はなかったですか。
peco 作りはじめの頃は、まだ皆さんに家族のことを発表するかしないかぐらいの時期だったので、話すと涙が出てくることもありました。
でも、人生を振り返ることで、私は自分のことをめちゃくちゃ信じてるんだな、というのは改めて発見できたことです。
――「私なんか」という自己卑下がなく、いつもpecoさんは自己肯定感にあふれていると感じました。秘訣はなんでしょう。
peco 私、「これからの目標」を聞かれるのがすごく苦手で。今しか見てないって言うとかっこいいセリフになっちゃいますけど、高い目標を立てて達成できなかったら自分のことを嫌になりそうだから、最初から目標を立てないんです。
もし立てるとしても、めちゃくちゃハードルを低くして、絶対できるゴール設定にしているところはありますね。
――小さい時から「自分大好き!」な子でしたか。
peco そうだった気がします。お母さんが人と比べることをしない人だったんです。褒めてくれる時も、「一番よかったよ」じゃなくて、「あなたが頑張ったからね」みたいな感じで、周りとの比較ではなく、私個人を評価してくれたことが大きかったかもしれません。
それと、末っ子で甘やかされてきたこともあるかな(笑)。
――逆に、パートナーのryuchellさんは常に高いところを目指して頑張っているイメージがあります。
peco そうです。だから正反対でしたね。テレビでうまくできないことがあると泣くほど悔しがっていたのですが、その姿を見て、「逆になんで自分ができると思ってるん?」と思ってました(笑)。
だからryuchellには、「ハードルを高くするからしんどいんやで。出来へんくて当たり前って思っとき」と、よく言ってました。
――本書の制作の最中にryuchellさんが亡くなってしまったわけですが、出版の日を迎えました。
peco それこそ、本が完成するタイミングでの出来事だったので、ryuchellの最後の最後が詰まった内容になっていました。ryuchellがいなくなったからといって原稿を変えてしまうのは私自身さみしいし、ryuchellがいた空気感をそのままにしたくて、あえて書き直しはしませんでした。それはもう、自分のためですね。
あとは、息子が大きくなった時に、「ダダ(ryuchellさんのこと)はあの時、一生懸命自分を守ってくれたんだ」と、ryuchellの愛も伝わったらいいなと思っています。
文=小泉なつみ
写真=佐藤 亘