和歌山県白浜町の白浜桟橋のそばに佇む〈K型 chocolate company〉は、店内からカカオの香りが漂う小さなチョコレート工場です。
美しい海が魅力の観光地「白浜」のまちに、なぜチョコレート工場をつくったのでしょうか?同店のオーナー、島彰吾(しま しょうご)さんに伺ってみました。
仕入れたカカオ豆から熟成していないものや虫食いなどを手作業で取り除く。
「前職はホテルのパティシエで、当時はいちごや抹茶のフレーバーがついたボンボンショコラなどのチョコレート菓子を製造していました。
あるとき、原材料がカカオ豆と砂糖だけでつくられたクラフトチョコレートを食す機会があり、ダイレクトに伝わってくるカカオの味わいに衝撃を受けたんです」
カウンターの後ろがチョコレート工場になっている。
コーヒーもワインも飲めない体質だという島さんですが、唯一それぞれの持つ味の違いや品種、産地などの魅力が楽しめたのがチョコレートだったといいます。そして、自分もこんなチョコレートをつくってみたいと一念発起。広島県尾道市のクラフトチョコレート店 〈USHIO CHOCOLATL〉のドアを叩きました。
観光客や地元の人が集まる白浜の魅力を生かすチョコレートが並ぶショーケース。
〈USHIO CHOCOLATL〉で1年半勤務したのちに白浜に移住し、2022年12月に〈K型 chocolate company〉を開業。
白浜を選んだのは、尾道で働くなかで、観光地に暮らす楽しさやまちに暮らす人をはじめ、観光客などさまざまな人との交流に魅力を感じたからだそう。
「クラフトチョコレートを販売するなら観光地で、と考えていました。というのも、日本人は先進国のなかではカカオの摂取量が少なく、“タブレット”と呼ばれる、いわゆる板チョコを食べる習慣がありません。
そんなタブレットを手に取ってもらうためには、一般的な住宅地よりも、非日常を味わうために人が集まる観光地がいいと考えました」と島さん。
チョコレートをイメージしたパッケージはそれぞれ違うアーティストが担当。
ガーナやタンザニア、ボリビアなどからカカオ豆を輸入し、それぞれの個性が味わえる6種類のタブレットを製造、販売。カウンターでカカオ豆の説明を聞いたり、テイスティングができるようになっています。
手づくりチョコレートを使ったオリジナルのスイーツ&ドリンク併設のカフェでは、チョコレートをふんだんに使用した手づくりのスイーツやドリンクを提供。客席はゆったりとした空間に20席あり、チョコレートに関する書籍も読めます。
ホットチョコレート(650円)、ハイチ(880円)、チョコチャンククッキー(250円)。
ドリンクメニューは、チョコレートドリンクのほかに、カカオの実を使用したカカオフルーツソーダやチョコレートとマッチするコーヒーなど。
チョコレートケーキ(500円)テイクアウトも可。
スイーツは、クラフトチョコレートをたっぷり使用したグルテンフリーのチョコレートケーキ。フルーティーさが特徴のタンザニアを67%配合し、香り豊かで濃厚な味わいが楽しめます。
チョコレートチーズケーキ500円。
看板商品の「チョコレートチーズケーキ」には、甘みを引き立てる塩ホイップとカカオニブが添えられています。
白浜の地からビーントゥバーの価値を発信ナッツの風味と酸味のバランスが絶妙なハイチ(カカオ豆70%、きび砂糖30%)。
「今まで生きてきたなかで、数々の偶然の出会いを経験したからこそ今があると思っています。僕自身、あらかじめ計画することがあまり好きじゃなく、後悔しないように自分に正直に生きていきたいと思っています。
そして、変にこだわりをもたないことこそが、僕のこだわりなのかもしれません。でも、“感じたことのないカカオの味のするチョコレートを届ける”という想いは常にブレずに、軸にあり続けると思います」
〈K型チョコレートカンパニー〉からも近い「白浜大浜海水浴場」。
そう話す島さんは、これからも白浜の地から、クラフトチョコレートの価値を発信していきます。
information
K型チョコレートカンパニー
住所:和歌山県白浜町1197-18 1F
TEL:070-8474-7361
営業時間:9:00〜18:00
定休日:水曜
Web: K型チョコレートカンパニー
writer profile
Momo*Kinari
きなり・もも
ライター・エディター。東京在住。Webや雑誌、旅行ガイドブックで撮影・執筆。国内外でグルメや観光スポットを取材。たまに料理やモノづくり、イラストの仕事もしています。 X:@Momo_kinari