1903年に青森市に生まれ、「世界のムナカタ」として国際的な評価を得た版画家・棟方志功。1975年にその生涯を閉じるまで、故郷・青森のほか、創作の拠点とした東京、疎開先であった富山などに縁をもち、さまざまな作品を世に送り出しました。
生誕120年を迎える2023年、ゆかりある地域の美術館〈青森県立美術館〉、〈東京国立近代美術館〉、〈富山県美術館〉が協力して開催するのが、『メイキング・オブ・ムナカタ』です。富山での展示を終え、7月29日から青森県立美術館での展示がスタートしています。
飛神の柵 1968年 棟方志功記念館
展覧会は、プロローグ『出生地・青森』に始まり、第1章『東京の青森人』、第2章『暮らし・信仰・風土―富山・福光』、第3章『東京/青森の国際人』、第4章『生き続けるムナカタ・イメージ』と続きます。生誕の地・青森では、広いスペースを生かし、棟方最大の板画作品である『大世界の柵』乾・坤の2点を同時に展示。展示替えを最小限に留め、多くの大規模な屏風作品も、通期での展示を予定しています。
同時期にコレクション展特集展示『棟方志功:女神とめがね』も開催し、自画像や優美な女神を描いた倭画のほか、同時代の青森の版画家たちによる棟方の肖像も観ることができます。
ハドソン河自板像の柵 1959年 棟方志功記念館
マルチアーティスト・棟方志功代表的な板画(はんが)・倭画(やまとが)・油画に加え、本の装丁や包装紙の図案など、棟方のデザイナーとしての一面にも触れることができるのが本展の見どころのひとつ。マルチアーティストであった棟方の全貌に迫ることができます。
また、展覧会にほとんど出品されることがない貴重な作品が集結しているのも、過去最大規模の本展ならでは。縦3メートルの巨大な屏風『幾利壽當頌耶蘇十二使徒屏風(きりすとしょうやそじゅうにしとびょうぶ)』(東京・五島美術館蔵)の展示は、約60年ぶり。寺外でほとんど公開されることのなかった倭画の名作『華厳松』(富山・躅飛山光徳寺蔵)もお目見えし、通常非公開の裏面と合わせて展示されます。
幾利壽當頌耶蘇十二使徒屏風 1954年 五島美術館
青森、東京、富山は、棟方にどんな影響を与えたのか。いかにして「世界のムナカタ」は生まれたのか。その道程を探りに、ぜひ会場へお出かけください。
青森市内の〈棟方志功記念館〉では、生誕120年記念特別展『友情と信頼の障屏画』が開催されているほか、市内には棟方の出生地や、結婚式を挙げた〈善知鳥神社〉、棟方にとって初めての大型板壁画であった『花矢の柵』のレプリカが展示されている青森県庁、ゆかりの温泉宿〈椿館〉などもあります。ともに巡ってみるのもおすすめです。
棟方志功ポートレート 撮影:原田忠茂
information
生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ
会場:青森県立美術館(青森市安田字近野185)
TEL:017-783-3000
会期:2023年7月29日(土)〜9月24日(日)
休館日:8月14日(月)・28日(月)、9月11日(月)
開館時間:9:30〜17:00(入館は16:30まで)
※8月19日(土)、9月23日(土)は20:00まで開館(入館は19:30まで)
観覧料:一般1,800円、高大生1,300円、小中生以下無料
Web:生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ
*価格はすべて税込です。
writer profile
Haruna Sato
佐藤春菜
さとう・はるな●北海道出身。国内外の旅行ガイドブックを編集する都内出版社での勤務を経て、2017年より夫の仕事で拠点を東北に移し、フリーランスに。編集・執筆・アテンドなどを行なう。暮らしを豊かにしてくれる、旅やものづくりについて勉強の日々です。