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伊豆下田で最も熱い黒船祭。DIYで組み立て式の屋台をつくって参戦!

  • 2023年6月22日
  • コロカル

黒船祭で行った場づくり

伊豆下田に移住し〈LivingAnywhere Commons伊豆下田〉のマネージャーを務める津留崎鎮生さん。年に1回行われる下田最大のお祭り「黒船祭」開催に向けて、外部デッキスペースの開放と、組み立て式のDIY屋台による出店を考えます。新しい「場づくり」への挑戦は果たして成功したのでしょうか?

下田が一年で最も熱くなる日「黒船祭」

わが家が移住した伊豆半島の先端近くのまち、下田は「黒船来航」の港、開港のまちとして知られています。そんな下田では開港に尽くした人の偉業を称え、毎年5月に3日間かけて下田市最大のイベント「黒船祭」が開催されています。

盛大な花火にはじまり、パレードが商店街を練り歩き、屋台が軒を連ね、大きな公園では地域で有名なフラダンスチームのショウが披露される。また、「開港」にちなんだ祭りということでアメリカの方たちも多く招待されます。普段静かなまちの商店街が、その3日間はまるで原宿の竹下通りか上野のアメ横か? というような賑わいっぷりになるという、観光客だけでなく地元の人もとても楽しみにしている祭りです。

商店街が人で埋め尽くされた2022年の黒船祭の様子

写真はコロナ禍ということで縮小開催となった昨年(2022年)のもの。普段は地方によくあるシャッター商店街なのですが、祭りの期間はこの賑わいとなります。

コロナ禍で2020年、21年は中止、22年は縮小開催でしたが、今年は4年ぶりの3日間通常開催となりました。

そんな黒船祭の魅力、お楽しみといえば、まちのあちらこちらでライブや大道芸が繰り広げられていること。

店先でのライブパフォーマンス

昨年の写真。こんな感じでライブやパフォーマンスが繰り広げられています。

LACのデッキをパフォーマンススペースとして開放する

今年の黒船祭では、私が拠点マネージャーとして仕事をしている〈LivingAnywhere Commons伊豆下田(以下、LAC伊豆下田)〉の外部デッキスペースをパフォーマンススペースとして開放することにしました。(LAC伊豆下田に関わるようになった経緯はコチラ)

さらに、それだけじゃ寂しいよね……ということで、ビールやおつまみを出す「組み立て式屋台」をDIYして出店することになったのです。

移住以来、毎年、一市民として楽しませてもらっていた黒船祭に、こうしたカタチで関わり、あらためて「場をつくる」ことの楽しさを感じることになりました。どんな場だったのか? どんな屋台だったのか? を振り返ってみたいと思います。

〈LivingAnywhere Commons伊豆下田〉の外部デッキスペース

まずあらためてLAC伊豆下田の説明を。ワーケーション施設などといわれることが多いですが、「宿泊施設」にあたります。月額制という独自のシステムがあることもあり、一般の宿泊施設より長期滞在する方が多いのが特徴です。そうした方が滞在しやすいようにコミュニティスペースやワークスペース、キッチンがあります。

そんな施設なこともあり、滞在している「LAC伊豆下田ユーザー」も観光で来られる方以上の「地域との関わり」を持つことが多く、それがLAC伊豆下田に滞在する魅力ともいえます。

こうして「関わり」を持つことで、主に首都圏を拠点に活動するユーザーさんたちのITスキルだったりデザインセンスだったりが、この地域にもたらすものも大きかったりもします。

ということで、運営側としては地域とユーザーさんとが関わる場をもっとつくっていきたいという思いがあり、今年の黒船祭では祭の魅力でもあるまちのあちこちに点在する「パフォーマンススペース」のひとつとしてLAC伊豆下田のデッキを地域に開放しよう! どうせなら屋台もやったらより良い場になるのでは? となったのです。

また、デッキで営業できる屋台があったら、黒船祭だけでなく、その後のイベントなどにも何かと役に立ちそうだし、自分だけでなくユーザーさんや地域の方で「屋台をやってみたい!」という人に貸すこともできる。いろいろと幅が広がりそうです。

ただし、屋台をずっとLAC伊豆下田のデッキに置いておく訳にもいきません。自宅に持って帰っても置く場所がない……ということで組み立て式屋台とすることにしました。

組み立て式屋台はどうやってつくる?

これまでそれなりにいろんなモノをつくってきましたが、組み立て式屋台はつくった経験がありません。(まあ、普通つくりませんね……)

さて、どんな風につくるか? と、まずはイメージを膨らませるためにネットでいろいろと検索するも、コレだ! というのに出合えず。

いくつかの実例を参考に、自分なりに考えてみて……

組み立て式屋台の手書きイメージ図

こんなイメージができ上がりました。ここまでできればあとはつくるだけ! ですが、この時点ですでに黒船祭開催まで10日を切っているという……。(何をやるにもいつもギリギリ!)屋台はできて終わりではなくて、保健所の許可も必要。その申請も進めつつ、つくり始めました。

切り出した木材が並ぶ自宅の庭

屋台は自宅の庭で製作。都会の住宅事情ではなかなかこうした作業スペースも確保できないでしょうが、ありがたいコトに手に入れた古民家は庭も広く、また、コンクリ面も広いので作業しやすいのです。前回の妻の写真展の額縁もそうですが、こうした環境がなかったらそもそも「自分でつくろう」という発想にならなかったかもしれません。

東京では建築の設計や施工管理をしていたので、イメージをカタチにするのは手慣れた作業です。

仮り組みした屋台

部材が揃ってきたので仮り組みしてみました。おおお! なかなかいい感じでは?

屋台の柱を黒く塗装

ネットで見た組み立て式屋台は木の色そのままのナチュラルな雰囲気が多かったのですが、LAC伊豆下田との相性を考えて黒っぽく塗装を。さて、うまくできるのか?

屋台完成! 料理はどうする?

3日ほどかけて無事に完成!そして屋台をつくり始めた頃から、どうせやるなら「自分らしい屋台料理を出したい!」と考え、屋台をつくる作業をしつつ、あーだこーだと試しては食べ、試しては食べを繰り返す。

結果、「土鍋で炊いた自家製米の焼きおにぎり」と地物「イカ串」を出すことに。祭の屋台なので適当にフランクフルトでも買ってきて焼けば簡単だし儲かるとはわかってるのだけど、それができない損な性分だということを実感しました。

地物のイカ串

地物イカ串は市内の鮮魚店にあって、何度も買って食べていた一品。屋台料理、何がいいかな? と考えていてコレだ!!! と思いつき、在庫を確認したら確保してくれることに! やった!

試作中の焼きおにぎり

焼きおにぎりをどう焼くとムラなく焼けるか? 試行錯誤を繰り返しました。

無事に屋台営業の許可もおりて、屋台メニューも決まり、そして迎えた黒船祭!どんな様子だったか? 動画、写真とともに説明します。

黒船祭、当日の様子は?

黒船祭初日は強い雨が降っていたので何もできず。2日目、3日目はLAC伊豆下田前のデッキを開放して、屋台を出しました。

屋台組み立ての様子! 10分もかからずに組み立てられます。バラした部材は軽自動車のワンボックスに入るので、持ち運びも簡単です。

屋台の前で注文するお客さん

屋台営業スタート! 3月の妻の写真展の食堂でもキッチンに立ちましたが、すぐにこんな機会がやってくるとは……。

デッキスペースでライブ演奏が始まる

店を開けると、間もなくミュージシャンたちがやってきて演奏をはじめてくれました。手前の屋台は同じくLAC伊豆下田スタッフが手がけるコーヒースタンド。コーヒーにビールにライブ! いい場になってきました〜。

屋台の営業を手伝う、奥さんの津留崎徹花さん

写真展を手伝ってくれたから、ということで屋台の営業を手伝う妻。東京でふたりともが会社員をしていた頃には、仕事でのこうした関わりはなかったのですが、下田に移住してきてからは何かとお互いの仕事で助け合っています。

屋台営業を手伝ってくれる友人

遊びに来てくれた友人も手伝ってくれました。妻とふたりでは全然回せない状況だったので、本当に助かりました。

フライパンの上に並ぶ自家製米の焼きおにぎり

自家製米の焼きおにぎりの注文も続々と! その場でカセットコンロで土鍋炊飯というのはやはり無理があった! 屋台でビール注ぎながら土鍋でご飯炊くのに想像以上に手こずってしまい、提供までに随分と時間がかかってしまった。まあ、スロウな屋台もあっていいではないか。

デッキスペースに到着した法被を着た太鼓チーム

2日目夜には祭りといえば……と太鼓チームがデッキで演奏してくれることに。その前に駆けつけ一杯!

四方を観客に囲まれて太鼓の演奏がスタート

太鼓の演奏がはじまると多くの人が足を止めてその演奏に聞き入っていました。祭りの夜、まちに響き渡る太鼓の音。とても印象的な時間でした。

打ち上げられた花火

当初、初日に予定されていた花火は雨で2日目に。これまでだったらよく見える場所でビールを飲みながら見ていた花火も、今年は屋台を片づけながら横目に見るコトに。そんな花火もまた良かったです。

屋台の前で注文する津留崎さんの娘さん

3日目の昼にはだいぶ落ち着いてきました。ひと通り、祭りを楽しんできた娘とその友だちが焼きおにぎりを食べに。ちょうどこれで売り切れとなったので最後のお客さん(?)です。「黒船祭」は下田の子どもたちにとっても特別な日、いい思い出たくさんできたかな?

場づくりを終えて、うれしかったことは?

滞在していたLAC伊豆下田ユーザーもパフォーマンスに屋台に楽しんでくれていた。LAC伊豆下田に行ってみたいと思ってたけど、なかなかキッカケがなくて、という地域の方にも来ていただいたり。移住してきました! コロカルの連載読んでます! そんな人も来てくれました。(ありがとうございます!)

そして、うれしかったのが、LAC伊豆下田の近隣の方が喜んでくれたこと。実は、LAC伊豆下田のある地区は祭の中心地から少し離れているので、ほかには屋台もなければパフォーマンススペースもないのです。パフォーマンスでは音がそれなりにするので、ご迷惑でないかな? と心配していたのですが、「地域を盛り上げてくれてありがとう!」と逆に感謝されてすごくうれしくなりました。

近隣の人も太鼓チームのパフォーマンスを鑑賞中

祭の中心からは少し離れているけど、祭の特設駐車場から中心地への通り道にあたるので人通りは多い。そんな立地ということもあり多くの方に寄っていただけました。

そして、素晴らしい音楽を奏でてくれたミュージシャンの方たちにもとても喜んでいただけたのもうれしかった。

ギターを演奏する下田市市議会議員の中村敦さん

「演奏してて気持ちよかった〜」と評判だったとか。手前の方はLAC伊豆下田にもよく顔を出してくださる下田市市議会議員の中村敦さん。祭りの実行委員も担っていて、しかもミュージシャン! 今回、この場ができたのはこの方のお陰といってもいいほどにお世話になりました。

そんなこんなで集う人たちの素晴らしいバイブスが幾重にも合わさり、想像の何倍も素敵な場となってくれた気がします。

昔々、20年ほど前。20代の終わり頃に東京の江古田という小さな学生街の片隅で〈coffee,beer,used clothing RAIDOGS〉という店を自営業で始めました。(RAIDOGSというのはアメリカのミュージシャンTOM WAITSのアルバムタイトル。あの世界観が好きすぎて、店名にまでしてしまったのでした)

店名の通り、コーヒーとビールと古着と音楽が好きだから……という当時の思いだけで始めたその店でも、よくライブをやっていて。

やはり集う人たちのバイブスが最高で。想像の何倍も素敵な場となってくれたことがありました。

あれから20年たって、場所は違えど、当時と同じように生ビールを注ぎつつ、そこで演奏される音楽に耳を傾けつつ、人と人が関わり、場を楽しむ。

今回のこの「場づくり」は、20年前の自営業で飲食店をやっていた経験、建築畑を寄り道しながらも歩んできた経験がなかったらできなかった気がします。人生、無駄なんてないんだなあ……そんなコトも感じた時間でした。

屋台に立ちお客さんと談笑する津留崎さん

この夏のうちに何度かは、またこのようにしてLAC伊豆下田ユーザーと地域の方との交流の場をつくりたいと思っています。予定はLAC伊豆下田のFacebookやTwitterをチェックしてみてください。また、この屋台をつかって露店営業してみたい! そんな相談にも乗りますよ〜!

文 津留崎鎮生

text & photograph

Shizuo Tsurusaki

津留崎鎮生

つるさき・しずお●1974年東京生まれ東京育ち。大学で建築を学ぶ。その後、建築家の弟子、自営業でのカフェバー経営、リノベーション業界で数社と職を転々としながらも、地方に住む人々の暮らしに触れるにつれ「移住しなければ!」と思うように。移住先探しの旅を経て2017年4月に伊豆下田に移住。この地で見つけたいくつかの仕事をしつつ、家や庭をいじりながら暮らしてます。Facebook Instagram

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