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「褒めるつもりで貶している」「偏見を一般化」「自己開示が過ぎる」…やりがち失言で信頼を失う前に

  • 2024年4月13日
  • All About

最近話題の政治家のうっかり失言や、これまであった政治家のうっかり失言から、失言のタイプや失言を避ける方法を解説します。普段やりがちな失言や失言を減らすための5つのチェックポイントについてもご紹介します。
静岡県の川勝平太知事が、県の職員に向けたスピーチで失言し、辞任を表明したことが話題になっています。

知事の失言に対する批判や感想については、すでにたくさんの意見をネット上で見ることができますので、この記事では、過去の政治家のうっかり失言からパターンを学び、普段の生活で失敗しないためにどうすればいいかを中心に解説したいと思います。

■川勝知事の失言は「比較話法」タイプの失言?
川勝知事は、「野菜を売ったり、牛の世話をしたり、モノを作ったりとかとは違い、基本的に皆さんは頭脳、知性の高い方」と県の職員と一次産業の人を比較した発言をしています。皆さんの周りにも、このように一方を落として、一方を上げるような話し方が癖になっている人はいるでしょうか。

川勝知事は過去にも、磐田市拠点のサッカーチーム表敬訪問で「磐田は文化が高い。浜松より元々高かった」という比較をして物議を醸していました。またサッカー強豪校では「サッカーをするために入ってきている。勉強よりもボールを蹴ることが一番重要」と、サッカーと勉強を比較して問題になりました。

このような失言をここでは「比較による失言」と分類することにしましょう。目の前にいる人たちへのリップサービスのつもりで、つい比較による失言をしてしまう人は意外と多いようです。このように、失言のタイプが分かれば「褒めるときに比較をするのはやめよう」など、対策もしやすくなります。

この他に、失言にはどのようなタイプがあるのか。政治家の失言例を整理しながら見ていきましょう。

■政治家に学ぶ「失言のタイプ」
過去に注目された政治家の失言を整理してみました。

▼「女性は子供を産む機械」2007年、当時の厚生労働相の発言。女性に対する固定観念や偏見を根拠にした「性別への偏見による失言」と分類。

▼「金がねえなら結婚しない方がいい」2009年、当時の総理大臣の発言。経済的な状況のみを基準に生活の判断をするという「偏った判断基準による失言」と分類。

▼「天罰」2011年の東日本大震災後、当時の東京都知事の発言。災害を「天罰」と表現し、被災者に責任の所在があるかのように感じさせた。「不適切な比喩による失言」と分類。

▼「知恵を出さないやつは助けない」2011年、当時の復興担当大臣の被災地支援に関する発言。支援を必要とする人々に対して、能力や行動を基準に援助を制限するという考えを示した「共感の欠如による失言」と分類。

▼「まだ東北でよかった」2017年、当時の復興相の東日本大震災に関しての発言。被害が他の地域に及ばなかったことを前向きに評価するつもりが、甚大な被害を受けた地域やその住民の苦痛を軽視。被災者の「立場や感情に配慮しないことによる失言」と分類。

▼「女性はわきまえておられる」2020年、当時の東京オリンピック組織委員会会長の発言。性別に関するステレオタイプや性差別的な意味合いも示唆する「性別への偏見による失言」と分類。

こうして並べてみると、偏見や配慮のなさが失言につながるケースが多いことが分かります。これを踏まえ、私たち一般人もやりがちな失言を見ておきましょう。

■うっかりに注意! 普段の生活でやりがちな失言とは
グループインタビューとSNS投稿の分析を行い、職場やプライベートな場面など、日常で想定される失言にどんなものがあるのか整理しました。

▼無自覚な偏見からの発言性別、人種、年齢などに関する無自覚な偏見に基づいた発言。「女性は運転が下手だ」とか「若い人は責任感がない」といった偏見に基づくステレオタイプを「みんな〇〇だ」と一般化しがちな人は注意する。

▼個人的な境界の侵害他人の外見、経済状況、家族構成などプライベートな話題に踏み込む失言。「痩せたね、ダイエットしたの?」と褒めたつもりでも、相手が不快になることもある。「いくら稼いでるの?」や「お子さんはどこの大学に受かったの?」といった質問も踏み込み過ぎになるケースも。

▼ネガティブな批判やジョーク他人の仕事、選択、価値観に対する否定的な評価や冗談は失言とみなされやすい。「あのプロジェクトは失敗だったね」や「そんな服装で大丈夫?」といった批判的なコメントは今日から封印を。

▼過度な自己開示自分の個人的な情報や過去の経験を不適切に話すのも失言の一種。職場での不適切な恋愛話や、自分の家庭の問題について詳細に話すなど、話し過ぎには注意。

ひと昔前まではOKだったことも、最近では失言とみなされることもあります。これくらい大丈夫だろうと思わずに、時代に合わせて意識をアップデートしていくことが必要です。それでも「いちいちうるさいなあ」と思ってしまう人のために、失言のデメリットについてもご紹介しておきます。

■失言のデメリット
悪意はなくとも、失言をすると、個人や組織の信頼性を損なってしまう可能性があります。特に公の立場にある人物の失言は、その人物だけでなく、関連する組織の評判にも悪影響を与え、場合によっては辞職に追い込まれることもあります。

公的立場でない人でも、職場での失言は、昇進の機会に影響することもありますし、なにより人間関係に亀裂を生じさせてしまうのは大きな痛手です。

皆さんの周りにも、余計なひとことで友人、同僚、ビジネスパートナーなどとの関係を悪化させてしまった人がいるのではないでしょうか。このように悪化してしまった関係を修復するのには時間がかかります。

また、人種、性別、宗教などに関する不適切な発言は、社会的な非難や抗議を引き起こす可能性があります。最近では、SNSなどのプラットフォームで迅速に拡散されてしまうので、予想しない大きな問題に発展するリスクも高くなっています。

失言が名誉毀損や差別にあたる場合、法的な責任を問われることもあると考えておいた方がいいでしょう。

これらのデメリットを避けるためには、公私にかかわらず配慮ある発言が大切になります。どんな点に気をつけたらいいか確認しておきましょう。

■失言を減らすためにチェックしたい5つのポイント
「この言い方は大丈夫かな」と迷ったときには、発言の前に以下のポイントをチェックしてみてください。失言が多い人は、たいていチェックする間もなく発言してしまうわけですが、知っておくのと知らないのでは大きな差になります。

▼(1)思慮深く話せているか言葉を発する前に、その内容と影響を考える。急いで話すのではなく、言葉に重みを持たせる。

▼(2)聞き手を考慮に入れているか聞く人の感情や立場を理解し、それに合わせた言葉選びをする。

▼(3)多様性を尊重しているか性別、人種、文化などに関する偏見を持っているように聞こえないか確認し、尊重のある言葉遣いを心がける。

▼(4)プライバシーを守れているか他人のプライバシーに関わる話題に踏み込む前に、その情報を共有することが適切かどうかを考える。

▼(5)批判的な発言になっていないか他人の選択や意見を否定するような発言は、アドバイスであっても関係を傷つける原因になるので避ける。

スピーチなどの際には、話す前にこのチェックポイントを見直してください。ほんの少し意識するだけでも失言を減らせるはずです。

■うっかり失言をしてしまったときには
川勝知事は、過去に「御殿場にはコシヒカリしかない」という発言をして、謝罪をしています。それにもかかわらず、今回もまた失言をしてしまいました。

あろうことか会見では、問題発言のように受け取られたのはメディアの切り取り報道のせいだと言ってしまい、インパクトを残しました(実際には切り取りではなく全文が掲載されていました)。

うっかり失言をしてしまったときには、速やかに謝罪するのが大切です。筆者の研究テーマは謝罪と許しです。どのように謝ればいいのか。ポイントとタイプ別のヒントについてまとめた記事も参考になさってください。

▼藤田 尚弓プロフィール株式会社アップウェブ代表取締役。社会心理学領域のコミュニケーションの専門家として、企業研修や研究・執筆、早稲田大学オープンカレッジ講師、TVコメンテーターなど幅広く活動。日本社会心理学会、日本応用心理学会所属。

藤田 尚弓(話し方・伝え方ガイド)

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