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12歳の娘に「女として器量が今ひとつ」と義父…無意識に「差別的発言」してしまう人たち

  • 2024年4月12日
  • All About

静岡県の川勝平太知事(75歳)はたびたび時代錯誤な差別的発言で物議をかもしてきた。彼と同様の前時代的価値観で問題発言を繰り返す義父と同居し、困り果てている家族がいる。いまでは「いっそ一人暮らしをさせておけば……」とまで。
静岡県の川勝平太知事(75歳)が、また舌禍事件を起こした。4月1日、新入職員向けの訓示で、「県庁はシンクタンクだ。毎日毎日、野菜を売ったり、牛の世話をしたり、モノを作ったりとかと違い、基本的に皆さま方は頭脳、知性の高い方たち」などと発言した。

■川勝知事、舌禍事件で辞任表明
撤回の意志はもちろんなく、「メディアがそこだけ切り取って表に出すから」とメディアに責任転嫁する場面もあった。撤回はしないと言いながら、6月の辞任を表明した。

ところが5日になって、「職業差別と受け取られかねないところは削除、撤回する」と修正発言を行い、8日には辞職を早める意向を示し10日に退職届を提出した。

川勝知事の生家は代々、農業を営んできたらしい。第一次産業の重要性を誰よりも知っているはずの知事が、どうしてこういう発言をするに至るのか不思議でならない。

川勝知事は以前から、差別的などの問題発言が多かった。2021年には、女子大学生について「顔のきれいな子はあまり賢いことを言わないと、なんとなく、もうきれいになる」と言って騒ぎとなった。

いまひとつ意味がわかりづらいのだが、「きれいな子は賢いことを言わない」ということなのか、あるいは「きれいなら賢いことを言わないほうがいい」という意味なのか、はたまた「きれいな子は賢いことを言わないから、ますますきれいになる」なのか。いずれにしても、容姿の美醜と知性に相関関係があると言いたいのだろう。

■「あちら(御殿場)にはコシヒカリしかない」
同じ2021年には、静岡県の補欠選挙で元静岡県御殿場市長の候補者を念頭に「あちら(御殿場)にはコシヒカリしかない。米だけ食べてる」と発言。このとき辞職勧告を受けて、12月の給与とボーナスを返上すると言ったが、返上していないことが発覚している。

23年には、県議会に諮ってもいない三島市の文化施設を作る構想を外部団体には「ツメの段階」と説明していたこともあった。

そして2024年3月には、磐田市を拠点とする女子サッカーチームの選手たちとの懇談で「磐田は文化が高い。浜松より元々高かった」「やっぱり男の子はお母さんに育てられる」と言って騒ぎとなった。

いずれの場合も、知事は数日後には謝罪している。今回のように撤回しないと言いながら翌日には撤回することもある。

彼の発言は、片方を持ち上げるためにもう一方を下げることで差別になる場合、自分勝手な思い込みとその場の空気で軽率に言ってしまう場合など、比較的わかりやすいパターンに終始する。つまりは、深くものを考えていない人なのではないかと疑念を感じさせられるのだ。

こういう発言が、この年齢の男性特有のものなのかどうかはわからないし、同じ世代でも個人差は大きいと思われるが、いわゆる「アップデートされていない」のは確かだ。一般の人でも職場や家庭で、こういう発言に怒りを覚えることはあるだろう。

■義父の問題発言に戸惑う43歳女性
つい最近、ひとり暮らしの義父と同居するようになったエリさん(43歳)。義父は75歳だという。

「義両親は、私たちの自宅から電車とバスを乗り継いで1時間くらいのところに住んでいたんですが、介護が必要になった義母が施設に入所して、義父がひとりになってしまった。それで同居を提案しました。義父はもともと穏やかな人で、子どもたちも懐いていたのでうまくいくと思っていたんですが……」

義父は家族が増えたのがうれしかったのか、最初から家の中を仕切ろうとした。自分の息子の自宅に来たのに、「今日からはオレが家長だな」と初日に言ったのにはエリさんも驚いたという。

「これに気を悪くしたのが夫です。今どき、家長ってなんだよと早速、反論。夫曰く、子どもたちの教育にも悪いから、そういう発言はやめてほしいと申し入れた。ところが義父にしてみれば『家で誰がいちばん偉いかを子どもたちにも教えたほうがいい。それが教育というものだ』って。

戦後生まれとは思えない発言ですよね。子どもは12歳と10歳だから、そんな妙な色に染められたら困る。私がいちいち『おじいちゃんの言うことを信じちゃダメよ』と言わざるを得ないのがつらいです」

■「女の子は愛嬌さえあれば…」と義父
あげく、義父は12歳の長女に向かって「おまえは女として器量が今ひとつだから、いつも笑っていなさい。女の子は愛嬌さえあれば生きていける」と言い含めている。無意識にそういう発言を垂れ流すのだ。

エリさんが慌てて、お義父さん、そういう時代じゃないですよ、それは差別ですと言ったら、「これは普遍的なことだ。差別ではない。あんたには人生がわかってない」と怒られてしまったという。無意識ほどたちの悪いものはないとエリさんは憤った。

「テレビを見ていても、顔のことばかり言う。かと思うと10歳の息子に、『おまえは今からしっかり勉強しろよ。そうじゃないとお父さんみたいに三流大学しか受からないぞ』ですって。私は夫と同じ大学で知り合ったので、複雑な気持ちです(笑)」

かと思うと、エリさんに「あんたは料理がうまい」と突然言う。夫には弟がいるのだが、弟の妻と義父とは反りが合わない。だから「エリさんは、あの女とは大違い。料理がうまい」というわけだ。

ただ、エリさんは義弟の妻とも仲良くしている。義父の「比べて褒める物言い」がたまらなく嫌なのだそう。

「夫もほとんど諦めているようで、親子の会話はほとんどありません。最近では子どもたちも義父に話しかけなくなって。このままだと義父が孤立してしまうので、どうしたものかと思いますが、毎日のようにああいう差別的な発言を聞かされていたら、こっちが参ってしまいます」

夫は母親と同じ施設に入れたいと考えているようだが、義父自身は元気なのでそれもむずかしい。いっそひとり暮らしのままにしておけばよかった、と夫は連日、ため息をついているという。

▼亀山 早苗プロフィール明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。

亀山 早苗(フリーライター)

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