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「硫化水素」 詳細解説

読み:
りゅうかすいそ
英名:
Hydrogen sulfide

近年、硫化水素による事故や災害、自殺などが相次いで起きている。硫化水素(H2S)は、硫黄と水素からできた化合物だ。空気よりやや重い無色の気体で、くさった卵のような臭いがする。人に対する影響は濃度によって異なり、数ppmならば不快な臭いを感じる程度で済むが、労働安全衛生法の規制値である10ppmを超え、50ppmになると気道が刺激される。また、100ppm以上になると肺水腫などによって窒息死するおそれがあり、600ppm以上では30分で生命が危険にさらされる。そして、800ppmを超えると意識を失い死亡する。

環境の分野では、1999年に福岡県の安定型最終処分場で、水槽内での作業に従事していた作業員3名が、硫化水素中毒で死亡。同処分場のボーリング孔からは1万5000ppmという高濃度の硫化水素ガスが検出された。また、同じ年に滋賀県の安定型最終処分場でも最高で2万ppmを超える硫化水素が検出された。これを受けて厚生省(当時)は、安定型最終処分場における硫化水素事故を防ぐため専門家からなる検討会を設置し、報告書をまとめた。廃棄物処理業や清掃業などの業種では、酸素欠乏症や硫化水素中毒などの災害が起こる可能性が多く、厚生労働省は注意を呼びかけている。

硫化水素による事故は、人体に直接影響するものだけではない。硫化水素による管きょの腐食が原因とみられる道路の陥没事故が各地で起こっている。地下に埋められた管きょのうち、圧力管の吐出口などでは硫化水素が発生しやすいのだ。国土交通省が2007年に行った調査結果によると、管きょの設計時に腐食対策を行っている地方自治体は約3割に過ぎず、同じく約3割の施設で未点検だ。点検を実施している施設のうち約4割で硫化水素などによる腐食が発生しており、早急な対策が必要とされている。

また、建設資材として利用される石こうボードの廃棄に伴って、硫化水素が発生する場合がある。従来、廃石こうボードから紙の部分を除き、石こう部分のみを埋め立てる場合は安定型最終処分場で処分されることが多かった。しかし、石こうくずを埋め立てていた安定型最終処分場で硫化水素が発生し、死者が出る事故が相次いで起きたため、国は2006年に通知を出して、廃石こうボードの安定型最終処分場での埋立処分などを禁止した。

一方、硫化水素による自殺が社会問題になっている。洗剤などを混ぜ合わせて硫化水素ガスを発生させ、それにより自殺を図る人がいるのだ。近隣住民や救助者に被害が及ぶケースもあるため、硫化水素を発生させることは絶対にしてはならない。

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