対象となるモノの形状を、スケールに基づいて忠実に再現した模型のことを指す「スケールモデル」。船や航空機、戦車、鉄道車両などに加え、アニメや映画といったフィクションに登場する架空のメカなどを制作するモデラーもいて、それらの展示イベントは毎回大盛況となっている。
本稿では「未来少年コナン」に登場するバラクーダ号のジオラマを24分の1スケールで制作し、SNSに投稿しているモデラー・かのー(@kanof14f15)さんにインタビューを実施。制作にいたる経緯や、制作過程で最も苦労したポイント、この作品を通じて学んだことなどを振り返ってもらった。
■船内で描かれた名シーンをジオラマで再現
――本作品を制作するにあたり、どのようなアイデアやインスピレーションがありましたか?
もともと「未来少年コナン」のファンで、そのなかでもドラマがいっぱい詰まったバラクーダ号には強い思い入れがありました。そうした各シーンをいつかジオラマ化したいと思っていたのですが、肝心のフィギュアを作るのが未経験でちゅうちょしていたところ、うちの模型クラブ(宮崎メカ模型クラブ)に宮崎アニメキャラのフィギュアを超絶うまく作る脳味噌晃(@nomisoakira)くんが入会してくれて、一緒に作ろうってことになったんです。
スケールはフィギュアの表情の造形のしやすさを考慮して、24分の1にすることにしました。そうなると、劇中設定で全長50メートルのバラクーダ号は2メートルを超えることになります。なので、最初は船倉部分(40センチ程度)のみのジオラマにするつもりだったのですが、ついつい調子に乗って、船全体を作るところまでいっちゃいました。
また制作当初は、帆船模型によくある“クロスセクション”という輪切り模型の形式を考えていたのですが、それだと船の全体像がつかみにくいと思い、船体の横から各船室のジオラマを覗く構造にしました。
――制作過程で最も難しかった部分は何でしたか?また、それをどのように乗り越えましたか?
このバラクーダ号は20以上のブロックに分かれていて、それぞれがジオラマになっています。これらのブロックがピタッと合わさったときに、船全体として美しいフォルムになるよう調整するのが大変でした。
――今回の制作において、最も楽しかった部分は何でしたか?
ブロック構造の船体づくりが楽しかったです。難しかった分、完成時にはものすごい達成感がありました。形になった船室を覗き込んでは「本物のバラクーダ号だ!」と、作った本人が一番喜んでいました(笑)。
本作に限らず、プラバン工作が大好きなもので。船体の材料にはタミヤのプラバンを使い、船体フレームは1.2ミリ厚、外板は0.5ミリ厚で仕上げています。B4サイズで直角がしっかり出るので、タミヤのプラバンはとても扱いやすいです。
――この作品のなかで特に気に入っているポイントはどこですか?
脳味噌晃くんが作るフィギュアは表情がとてもよく、躍動感もあるので、劇中のシーンを忠実に再現することができました。一つひとつのジオラマがいきいきとしているので、それらのすべてがお気に入りです。
――この作品を通じて、ジオラマ制作における新しい発見や学びがありましたか?
こちらのバラクーダ号を「未来少年コナン」を愛する多くの方に見ていただきたいと思い、いろんな展示会に持ち込んだり、東京や大阪で展示会を主催したりしました。その過程で多くのすてきな方との出会いがありました。かけがえのない経験もしています。このバラクーダ号のおかげで模型ライフが変わったと感じています。
ただ、巨大模型の展示は大変で、全長2.2メートルのこの船をどのように運搬し、搬入搬出するか……という点には、毎回苦労しています。その分、工夫してさまざまなアイデアを思いついたりもするので、それもよい経験になっていますね。実は展示会では、私が搬入搬出であたふたしているところも見どころのひとつだったりします(笑)。
取材・文=ソムタム田井