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ロンドンの部屋探しは「地獄の一丁目」?執念でロンドン暮らしを始めたレポート漫画に興味津々

  • 2022年8月19日
  • Walkerplus

さまざまな理由で人は居住地を変えるが、それに伴っての手続きはなかなか煩雑なもの。異国の地となればなおさらだ。イラストレーター、漫画家として活動する竹内絢香さんがイギリスへの短期移住を始めるにあたっての家探しを描いたレポート漫画と、日々更新されるイギリス滞在での出来事を綴った日記がおもしろいと評判だ。

イギリスのことが好きで、イギリスを舞台にした漫画やカルチャー本も描いている竹内さん。しかし、コロナ禍もあり渡英することができずに悶々と過ごしていたのだそう。そんな時に友人の話をきっかけに、夢を叶えるべく本格的にロンドン滞在に向けて動くことになる。“住む”となるとまず大事なのは家探し。しかし、イギリスと日本では家探し事情がまったく異なり、物件探しがとんでもない難物!物件の争奪戦がすさまじく、家探しのサイトに情報が出た瞬間からの奪い合い。そのため、竹内さんは一時イギリス時間で生活をし、物件サイトを四六時中チェックしていたんだそう。入居を決めた際にデポジット金を支払う必要もあり、これを狙った詐欺にも遭いかけたという…。数々の苦難を乗り越えてロンドン暮らしを始めた竹内さんに、そうまでしてロンドン滞在を決めた理由と、ロンドン暮らしについて話を聞いた。

■筋金入りのイギリス好き!特にイギリスの1960年代カルチャーに注目中
竹内さんのイギリス好きのきっかけは「保育園児の時に、小説のシャーロック・ホームズにハマり、それ以来ずっとイギリスのとりこです」とのことで、この回答だけで、竹内さんのイギリス愛が半端ではないことが伝わる。そして、竹内さんにとってイギリスでの長期滞在はこれが4回目になるんだそう。

「イギリスに初めて訪れたのは、大学生の時でした。長年憧れ続けてきた土地に実際に降り立つことができて、ものすごく感動したことを覚えています。その後も複数回旅行や会社員時代に出張でイギリスは訪れていたのですが、会社を退職後、ロンドンの美術大学に留学したときが初めての長期滞在でした。実際に暮らすとなると大変なことも多いのですが、それも含めてイギリスで見るものがすべて新鮮に見えて、あらゆるものが素敵に映りました」

幼い頃から絵を描くことが好きだったという竹内さん。一度はイラストや漫画は仕事ではなく、趣味として楽しもうと一般企業に勤めるも、多忙から絵を描くことができなくなってしまった。「私は一体何のために生きてるの…?」と自分の人生を見つめ直し、諦めていた夢を掴むべく、27歳の時に退職し、ロンドンへ短期留学。イラストレーター、漫画家としての道を歩み始めたという経歴を持つ。イギリスの魅力は数あるが、竹内さんが特に注目しているのは1960年代のイギリス。「イギリスの文化革命期」といわれたこの時期、若者を中心に個性的なカルチャーが次々と生まれた。竹内さんは『60s UK STYLE』と題した60年代のイギリスファッションについてまとめたイラスト本も刊行している。竹内さんが60年代に魅力を感じるようになったのは、漫画創作における戦略的な一面もあったそう。

「漫画連載の話をもらった時に、絶対にイギリスを舞台にした作品を描こう!と決めていました。日本で人気があるのは、シャーロック・ホームズも活躍していた19世紀ヴィクトリア期のあたりかな…と思うのですが、この時代を舞台にした素敵な漫画はすでにたくさん存在しているし、時代考証も大変そう…ということで、もっと調べやすくて競合のいない時代を描こう!という現実的な理由で戦後史を見始めたのがきっかけです(笑)。60年代のロンドンは世界の文化の発信地で、とても華やかです。半世紀以上時代が離れていますが、『寛容の時代』と呼ばれるように、多様性が注目され始め、女性の社会進出に関する議論や、セクシャルマイノリティに関する法改正が行われたりするなど、現代日本に生きている私が見ても共感を覚える出来事、社会の空気を感じて、作品で描いていきたいと考えました。そしてもちろん、その社会背景を受けた、ものすごく多様なスタイルの数々も大好きです!」

海外で暮らすとなると、準備もお金も大変なもの。イギリス愛が深いといってもその労力はなかなかのものだが、旅行ではなく滞在にこだわったのにはどんな理由があるのだろうか?

「ロンドンで創作活動をしたいというのが一番です。前提として、私は日本でずっと生まれ育っており、今からイギリスで暮らしても“イギリス人”になるのは不可能だと思っているんですが…例えば、小説の中に『セントラルヒーティングが暖かく』という表現があっても、私はそれを実際に使ったことがないんですよね。そういうわからないものを描くということにものすごく不安、そして疑問がありまして…。日本にいても書物などから情報を得たりすることで学べることはたくさんあると思うのですが、実際に部屋を借りて暮らしてみることで、自分の描く漫画のキャラクターたちがどういう生活をしているのか、より具体的に知ることができるのでは?と考えています」

■「決断力があるというより執念深い」その性格が功を奏して念願のロンドン住みを決行
一般企業に勤めていたところから、漫画家を志すという経歴も相まって、決断力があると感じるのだが、自身ではどう思っているのかを聞くと「決断力があるというよりは、私はとても執念深いのだと思っています(笑)」とのこと。

「やると決めたら、しつこくて諦めないんですね〜。物件探しのレポート漫画では、あっという間にロンドン滞在を決めたようにも見えるかもしれませんが、いつかロンドンで制作したいというのは、初めて留学した7年前からずっと考えてきたことです。その間に漫画家としてどうしたらイギリスでも仕事を継続できるかを考え、SNSの活用を強化し、なにより貯金…とゆっくりですが、ずっと準備を続けてきました。本当はコロナ禍前にも渡英を計画していたのですが、ここ3年は日本を出ることができなかったので、今このタイミングになったという感じです。漫画で登場したロンドン赴任が決まった友人以外にも、家族やエージェント、フリーランスの友人などにも渡英について相談していて、後押しに心から感謝しています」

ロンドン暮らしを初めて早1カ月が過ぎた。既にその甲斐を感じている。

「実際、玄関のドアノブひとつとっても日本とは機能が異なっていたりするので、疑問がわいた時に、走って資料写真を撮りに行ける環境がとても気に入っています。毎日ウキウキしているので、モチベーションも高めにキープできています!」

■ロンドンでは規則正しい生活を心がけ。滞在日記ではおいしい食べ物も登場!
漫画家になった後、メンタルの不調に陥った経験を持つ竹内さんは、メンタルケアに関する著作も持つ。夢だったとはいえ、異国の地で暮らすというのは、ストレスがかかることであるのは確かだ。自身のメンタルを健康に保つため、どのようなことを意識しているのだろうか。

「今回の渡英は私の中では“修行”なので、制作以外の負担をなるべく減らすようにしています。荷物も最低限で部屋にはテレビもなく、日本のネットもある程度制限されているので、生活がすごくシンプルになったと感じています。絵を描くことに集中しだすと一気に生活がおろそかになっていくので、とにかく規則正しい生活を心がけています」

具体的に聞くと「朝は6時過ぎに起きて、朝のルーティンをこなして仕事を開始。12時頃に昼食をとって小休憩の後、17時を目標に仕事を終えて、1時間の散歩。夕食を食べてシャワーを浴び、寝る前に翌日更新するための絵日記を描いて22時過ぎに眠る」と“修行”というワードがぴったりなストイックさ!一方で、休日はしっかり休んで観光を楽しんだり、週に数回は無料の美術館に行ったり、友人とコーヒーを飲んだりするような制作以外の時間もきちんと取るようにしているとのこと。好評を博している「ロンドン日記」でも、ロンドンでの“生活”、創作活動、観光と楽しんでいる様子がうかがえる。イギリスというと「料理がまずい」というイメージを持つ人もいるだろうが、イギリスで流行中の“KATSU CURRY(カツカレー)”など、おいしかった食べ物との出合いも描かれており、現在のイギリストレンドを知ることもできる。

イギリス滞在の目標を聞くと、「ロンドンが舞台の創作漫画の連載です。近々開始予定なので、ぜひみなさんご覧になってみてください!!」とのこと。ヨーロッパでは熱波到来で大変な暑さに見舞われているのはニュースにもなっている。北海道と同じ緯度、例年ならば年中暑くならないロンドンでは、クーラーのない家が多く、竹内さんも暑さには苦労されていることが描かれている。酷暑の中での制作は大変だろうが、ロンドン滞在が生きた新作を期待して待ちたい。

取材・文=西連寺くらら

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