
『モヤモヤ社畜OLと、勇気のマサラカリー』を読む / ■画像提供:福々ちえ(@fukufuku_comic)
飲食店での些細なきっかけが、誰かの心に大きな影響を与える。福々ちえ(@fukufuku_comic)さんの漫画『モヤモヤ社畜OLと、勇気のマサラカリー』がSNSで1.3万件超の「いいね」を集め、多くの共感を呼んだ。描かれるのは、勇気を出した女性の声かけと、その意外な展開だった。
午前中から上司に小言を浴びせられ、もやもやが募っていた主人公は、気分転換にスパイス強めのマサラカリーを求めて飲食店へ。そこで目撃したのは、サラリーマンがヘッドフォンをつけた若者の襟首を掴み怒鳴りつけ、突き飛ばして店を出ていく騒動だった。
『モヤモヤ社畜OLと、勇気のマサラカリー』もやもや社畜編・第1話(2) / ■画像提供:福々ちえ(@fukufuku_comic)
『モヤモヤ社畜OLと、勇気のマサラカリー』もやもや社畜編・第1話(3) / ■画像提供:福々ちえ(@fukufuku_comic)
『モヤモヤ社畜OLと、勇気のマサラカリー』もやもや社畜編・第1話(4) / ■画像提供:福々ちえ(@fukufuku_comic)
店内がざわつく中、主人公はうつむいて泣く若者に「大丈夫ですか?」と声をかける。しかし返ってきたのは思いがけない罵声だった。せっかくのランチ、せっかくの勇気。なぜここまで理不尽な目に遭うのかと、さらにもやもやが膨らむ。
そんな彼女を救ったのは、周囲の客や店員の優しい言葉だった。たったひと言のフォローが、どれほど心を救ってくれるのかに気づかされた主人公は、自分が見て見ぬふりをしていた後輩にも、思い切って声をかける決意をする。
この作品の一部は、作者の福々ちえさんが実際に目撃した光景から生まれたという。昼間の駅で揉めていたサラリーマン同士の様子を見たとき、「自分はこの光景を見なかったことにして通り過ぎていいのか」と葛藤した経験が本作の発端になったという。漫画のテーマは「自分の正しさを揺さぶられる瞬間」だと語っている。
主人公が声をかけた出来事はフィクションだが、怒鳴り合う男性たちの描写やスパイスカレーを通じて気持ちを立て直そうとする動きは、作者自身の体験がベースになっている。また、本作の続編にあたる『仕事のできる女と、怒りのバターチキン』では、同じ店内に居合わせた別の女性を主人公に据え、視点を変えて物語が展開される。
視点を変えることで見える世界がある――。福々さんは「人にはそれぞれドラマや葛藤があると想像できれば、世界はもっとやさしくなる」と語る。実際に作品内では、異なる立場や性格を持つ登場人物たちが、それぞれの視点で描かれており、読者に多面的な共感と気づきを与えている。
取材協力:福々ちえ(@fukufuku_comic)
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