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全国で狩猟の鉛弾使用が規制される

  • 2021年12月21日
  • NACS-J

野鳥に深刻な影響を与えてきたにもかかわらず、狩猟用鉛弾の使用規制は進んできませんでした。しかしこの9月、ようやく全国的な規制が決まりました。

段階的に鉛弾使用を規制

2‌0‌2‌1年9月10日、小泉進次郎環境大臣が記者会見し、2‌0‌2‌5年度から全国の狩猟を対象に鉛弾の使用を段階的に規制し、2‌0‌3‌0年度までに野生鳥類の鉛中毒ゼロを目指す方針を表明しました。

 日本では1‌9‌9‌0年代より北海道でオオワシなどが2‌0‌0羽以上も鉛中毒死しています。また、本州ではイヌワシやクマタカなどの猛禽類や、水鳥などでも鉛中毒が発生していることが分かっています。
 その原因は狩猟に使われる鉛ライフル弾や鉛散弾で、シカなどの狩猟残滓や被弾したものの半矢となり回収されずに死亡した動物を食べ、肉の中に飛散した鉛弾を誤食することで発生しています。さらにカモなどの水鳥は消化を助けるために胃内に小石を蓄える習性があり、このとき鉛散弾を誤食して鉛中毒になることが知られています。

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▲狩猟残滓を食べるクマタカ

 北海道では2‌0‌0‌0年から段階的に鉛弾の使用が禁止され、2‌0‌1‌4年からはエゾシカ猟時の鉛弾所持も条例で禁止されました。しかし、猛禽類の鉛中毒は依然として発生しており、鉛弾が合法的に使われている本州以南から持ち込まれ密かに使われている可能性があります。
 鉛散弾は北海道を含め地域を限定した規制しかされていません。水鳥の多くは長距離を移動する渡り鳥であるため、特定の湖沼などでの鉛弾規制だけでは根本的な対策にはなりません。

 このような鉛弾の誤食による野鳥の鉛中毒を根絶するために、全国規模で狩猟に使われるすべての鉛弾の規制が急務でした。しかしながら、希少猛禽類の鉛中毒が明らかになってからですら、25年以上も環境省内で鉛弾の全国規制は棚上げにされ、状況調査などが細々と行われてきたに過ぎません。
 これは主に獣害対策なども手掛ける狩猟団体からの反対意見が大きかったことによるものと聞いています。無毒弾の普及が思うように進んでいない背景には、銅弾の価格が鉛弾と比較して高価であることや、北海道以外での入手が困難な場合があること、ハンターの鉛中毒に関する知識や意識が不十分であることなどが考えられ、現状の改善が必要です。

野鳥の鉛中毒根絶がゴール

このような状況下、環境大臣が狩猟用鉛弾の全国規制方針を表明したことは英断といえるでしょう。鉛弾を既に規制している国は存在します。しかし、人の健康被害対策を主たる目的としていたり、カモ類の鉛中毒防止を目的としている(主に水辺での規制)ものの猛禽類を対象としていないもの、狩猟そのものを禁止している国などで、野生鳥類の保全を目的にした全国的な鉛弾規制は評価に値します。
 既に規制が行われている北海道以外では、鉛弾は2‌0‌2‌5年まで合法的に使われ続けます。野鳥における鉛中毒の根絶こそ目指すべきゴールであることを忘れず、国民がしっかりと状況に目を光らせる必要があるのです。

齊藤慶輔(猛禽類医学研究所代表)

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