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再エネ推進で緑の回廊にも開発計画

  • 2021年10月19日
  • NACS-J

2050年カーボンニュートラルの実現を目指した「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」の主導により、再生可能エネルギー(以下、再エネ)施設設置に関わる規制などの緩和が進められています。「緑の回廊」を含む国有林の利用基準の検討が進んでいます。

生きものの生息地をつなげる緑の回廊

国有林の「緑の回廊」は、森林の生物多様性の保全を目的として、森林生態系保護地域などの保護林をつなぐことによって、野生生物の移動経路、生育・生息地の拡大と相互交流を促す連続性を確保するための制度です。

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▲緑の回廊のイメージ図(出典:林野庁ホームページ)

 再エネ施設設置に関わる規制緩和の中、林野庁に緑の回廊を含めた国有林での再エネ施設における設置許可の基準を明確にすることが要求されています。2021年6月30日に「風力発電・地熱発電に係る国有林野の貸付け等手続きマニュアル(第一案)」が公表されました。

 再エネ施設と言うと、風車や太陽光パネルを連想しますが、それらの発電施設が森林外に設置された場合にも、送電施設や管理道路のために森林の改変が計画されることも少なくありません。現時点で、緑の回廊に風車・地熱・太陽光の発電施設が設置された事例はありませんが、緑の回廊を設置範囲に含む再エネ施設の計画は関東・東北地方を中心に10カ所ほどあり、環境影響評価手続きが準備書まで終わっている計画も3カ所ある状況です。

緑の回廊を守るために

緑の回廊は、実際に森林の生物多様性保全に効果を発揮しています。例えば、私たち日本自然保護協会(NACS-J)が保護活動を続けている四国のツキノワグマ個体群は、GPSなどの行動調査から剣山系の保護林と緑の回廊に依存して生息しています。さらに、質の高い自然環境を連続性をもって保全することは、気候変動への適応など不確実性の高いこれからの生物多様性保全において、その重要性が高まっていると言えます。

 また、緑の回廊は自然保護活動から生まれた制度です。岩手県のNACS-J自然観察指導員でもある瀬川強さんらが、1989年に発足した「グリーンベルト推進連絡協議会」が提出した要望書がはじまりです。その要望を旧青森営林局(現東北森林管理局)が「奥羽山脈縦断自然樹林帯構想」として採用し、その後、林野庁で制度化され全国に広がりました。その過程で日本自然保護協会も林野庁に働きかけと交渉を行ってきました。

 緑の回廊を含む国有林の再エネ施設利用には、「市町村長の同意」を条件としています。保護林やそれをつなぐ緑の回廊は地元地域の宝であるはずです。そのことが地域住民に広く認識されることが最も重要なことです。日本自然保護協会では、緑の回廊の機能と意義を改めて地域と社会全体で認識するための活動を進めていきたいと思います。

出島誠一(日本自然保護協会 生物多様性保全部)

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