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アフターコロナ社会への7つの提案 ~“One Health”自然と人間がともに健康になる新たな社会の構築に向けて~

  • 2020年6月23日
  • NACS-J

新型コロナウイルス感染症による危機は、世界に甚大な被害をもたらしました。その発生と感染の拡大の背景には、世界が抱えていた気候変動、生物多様性の損失、大量生産大量消費のライフスタイル、食料やエネルギーの課題があります。今後の社会と経済の復興で行われると予測される巨額な投資によって「新型コロナ危機の温床となった社会」に再びもどってはいけません。
 日本自然保護協会は、コロナ危機によって得られた学びをもとに、「解決の鍵は自然の中にある」*と考え、人と自然が共生するアフターコロナ社会に向けた7つの行動を5月22日の生物多様性の日に提案しました。


1.コロナ危機に立ち向かった人々を称え、市民社会の力を高めよう

危機の間のエッセンシャルワーカー**の方々の献身的な対応を称え、営業自粛や外出自粛などの困難を伴う感染拡大防止に取り組んだ市民社会の力をさらに高めよう。

2.コロナ危機の混乱を記録し、学び、次の社会に活かそう

甚大な犠牲に報い、次の危機に備えるために、どのようなことが起きたか、どのように判断し対処してきたか、何が功を奏し何が失敗であったかを、未来のために記録し活かそう。

3.今後の社会・経済の復興を、持続可能な社会の発展につなげよう

コロナ危機がもたらした経済の悪化に対し、20世紀型の公共開発事業や、化石燃料・原子力に頼るエネルギー開発、過剰な自然資源利用ではなく、生物多様性の保全や脱プラスチック・脱炭素社会につながる施策で、社会と経済の再活性化を目指そう。経済・金融のあらゆるルールとガバナンスを見直し、持続可能な社会の発展の目標(SDGs*** )に向けて再スタートしよう。

4.新たに生まれたライフスタイルの可能性を育てよう

オンラインでつながるコミュニケーションの推進や、ワークライフバランスを見直すことで生まれた時間で、身近な自然に目をむけよう。自然とふれあえる喜び、健康で充実した生活、自然環境の保全に貢献するライフスタイルを作り上げよう。

5.エネルギー、食料、生活用品などを地域でまかなえる新たな社会を構築しよう

地域分散型社会、地域循環共生圏、地産地消システムの考えにもとづいて、大都市一極集中を見直そう。地域の社会と文化と自然を活かし、私たちの暮らしに必要なものは可能な限りまかなえる新たな地域づくりを進めよう。

6.人と自然の新たな関係を構築しよう

人と自然の新たな関係を構築するために、国土や地域の土地利用計画などの再検討、様々な自然保護地域の充実、マスツーリズムの観光から環境収容力を超えないエコツーリズムへの転換など、生物多様性の保全を効果的に進めよう。

7.未来のコロナ危機の発生と拡大の防止に世界全体で取り組もう

未来のコロナ危機の発生と拡大を防ぐため、海外における野生動物の違法捕獲や不適切な利用、森林伐採による農地の拡大・利用を変えていこう。そのために日本社会の生産活動や消費活動を見直そう。また、家畜を含めた感染症対策と外来種対策に、人と予算を投じ、適切な体制を整えよう。

以上


【解説】
 2019年11月に発生した新型コロナウイルスは世界の国々や地域に広がり、日本を含む多くの国でいまだに収束を迎えていません。新型コロナウイルス自体は野生生物由来と考えられています。しかし、その感染・被害の拡大、危機対応の不備、困難な人に社会の支援が届かない等、社会・経済的な問題が多く発生しています。

 自然界には、人に感染する可能性のあるウイルスは、最大170万種に上るという指摘があります。感染症の60%、新型感染症の75%が動物由来感染症となっています。新型コロナウイルス感染症拡大を含む、新興人畜共通感染症が次々と起こっています。

 このような発生の背景には、森林破壊、ブッシュミート(野生動物肉)の利用、野生生物取引などの拡大によって人間と野生生物が接触する機会が増えたことが原因にあると考えられています。

 20世紀後半、肉食の拡大などによって家畜の数が急激に増えました。専門家によると、哺乳類バイオマス(生物量)のうち、家畜が60%を占め、人類が36%を、残りわずか4%が野生哺乳類と推計されています。管理不十分な牧畜は、ウイルスや寄生虫、細菌の温床となっている可能性もあり、人間世界への侵入ルートとなりえます。

 気候変動が農業の形態に打撃をあたえ、都市部の貧困層が拡大、社会の中で脆弱な人々の感染リスク高め、その原因である化石燃料の消費は都市部の大気汚染を深刻化させ、これが患者の増加につながり、医療制度崩壊につながった国もあります。

 今後の危機を回避するためには、現在のパンデミックに至った社会の大転換が必要と指摘されています。そのため、農業(食料システム)、エネルギーシステム、生産と消費のシステムのすべてにおいて、人や家畜の健康と同時に自然の健康も守ること“One Health”が重要と指摘されています。

 この日本自然保護協会の提案は、コロナ危機が収束した後の社会を見据え、新型コロナウイルス感染拡大防止の取り組みが継続する中で、まとめました。新型コロナウイルスの発生原因の解明や、今後の知見の蓄積に基づき、提案の精緻化など、今後も発信を重ねていきたいと思います。

【注釈・参考】
*「解決の鍵は、自然の中に」
毎年5月22日は国際生物多様性の日であり、2020年のテーマは、「解決の鍵は、自然の中に」(“Our Solution are in Natue”)となっています。
生物多様性条約事務局 https://www.cbd.int/idb/2020

**エッセンシャルワーカー
医療従事者、警察・消防関係者、公共団体関係者、銀行やスーパーマーケット勤務者といったライフラインに関係する労働者

***SDGs
SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)とは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2030年までに持続可能で、よりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の“だれ一人取り残さない(leave no one behind)” ことを誓っています。
17のゴールは「経済」、「社会」、「環境」の三つの層に分類され、「経済」は「社会」に、 「社会」は「環境」に支えられているとされています。「環境」の層に位置づく目標は、目標6、目標13、目標14、目標15が入っています。

****解説参考情報
“COVID-19 Stimulus Measures Must Save Lives, Protect Livelihoods, and Safeguard Nature to Reduce the Risk of Future Pandemics”
https://ipbes.net/covid19stimulus, IPBES Expert Guest Article by Professors Josef Settele, Sandra Díaz and Eduardo Brondizio[1] and Dr. Peter Daszak[2] on 27 April 2020, “The biomass distribution on Earth” PNAS June 19, 2018 115 (25) 6506-6511; first published May 21, 2018
https://doi.org/10.1073/pnas.1711842115
, Edited by Paul G. Falkowski, Rutgers, The State University of New Jersey, New Brunswick, NJ, and approved April 13, 2018 (received for review July 3, 2017) UNEP (2016). UNEP Frontiers 2016 Report: Emerging Issues of Environmental Concern. United Nations Environment Programme, Nairobi.

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)による “One Health” に関する情報
https://www.cdc.gov/onehealth/index.html


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