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(NY)vol.6 ここまで来ているアメリカの消費者意識

  • 2006年11月1日

食材飼育にみるCSR (Corporate Social Responsibility) 企業の社会的責任

 英語にhumaneという単語がある。手元の英和辞典には「人間味のある」「人道にかなった」という訳が付いている。実際には「人間扱い」といった言葉のほうが、ぴったりとあてはまる感じである。例えば、彼らが強いられている環境はヒューメインな状況ではない、と言った時に使われる。

牧場

 否定語はinhumane である、この言葉が、アメリカでは最近特に新聞やマスコミで目につく。この単語の発音やスペルからも想像できるように、もともとは、人間、human が語源の単語である。だが今やこの言葉は人間だけに限られず他の生き物にも広く使われ始めている。動物も人間同様に「ヒューメイン」に接しよう、という考え方だ。毛皮はinhumane の代表例のようにいわれる。ファッションのために、動物の命を絶つのはいかにも許しがたいというものだ。ネズミや他の動物を用いた医薬品や化粧品などの動物実験もこれらに含まれるものだろう。

Animal Compassion(動物へのおもいやり)を提唱する
ホールフーズマーケット

 だが、我々の食卓に上がった肉や魚を味わう時に、それらがどの様に捕獲、飼育され食肉処理されたかは、ほとんど考えることはない。だがステーキやハンバーガーなどの牛肉、トンカツなどの豚肉、さらに魚なども、かつては命があった生き物から得られたもの。もともと、これらの動物や魚は人間の食材となるために商業的に飼育されている。

Animal Compassion Foundation のロゴ
ホールフーズマーケットが創設した
Animal Compassion Foundation のロゴ(Whole Foods Market)

 そのためにコストパフォーマンスは飼育業者にとって欠かせない条件となり、効率よく飼育し市場に出すことが求められる。その結果、動物や魚は我々が想像を絶する様な環境の中で飼育されている。

 このような飼育環境を改善し、動物や魚をhumane に飼育し、しかもhumane に食肉処理する傾向が食肉用の鶏、豚、牛、魚などにも広まっている。このような動きは以前からなかったわけではないが、このムーブメントを一般にも浸透させ、関心を高めようとしているのがナチュラル、オーガニックフードの大手スーパー Whole Foods Market が発表したThe Animal Compassion Foundationの創設だ。

 同社はこの機関を通じ、広く食肉用動物の飼育環境を高め、より動物をhumane に扱うと運動を始めている。数年先には、Animal Compassion(動物への思いやり)の規格を設け、オーガニックフードと同様に、承認機関を設ける事も検討しているという。同社では近くhumane に飼育され、食肉処理された食肉を他の一般の食肉と区別し、それらに「動物同情ラベル」Animal Compassionate Label を付け 同社の店頭で販売を開始するという。ホールフーズマーケットの創設者の一人であるJohn Mackey 氏はThe Animal Compassion Foundation の創設について、"The quest for cheap food in our society has created an industrialized model of meat production in which animals are bred and raised in conditions focused on efficiency rather than on the basic needs of the animal," 「安い食材の需要が工業的な食肉生産体制を育て、その結果、動物の飼育環境は効率を優先し、動物たちの基本的なニーズを無視する飼育体制になってしまった」と語っている。

 Whole Foods Market では今年6月から生きたロブスターの販売を止めている。理由は生きたロブスターをタンクの中で生かしておくのは、ロブスターのhumane に反するからだ、というのがその理由のようだ。

価格は高いが味がいいと評判の
Free Range(平場飼育、柵のない飼育)

Free Range Chicken
囲いのない環境で飼育されるFree Range Chicken
(Whole Foods Market)

 養鶏施設でもhumane ムーブメントは広がっている。現状の安い鶏肉やタマゴを可能にしているのは、鶏を身動きもできないほどの狭いスペースに閉じ込め、ホルモンを含んだ肥料を大量に与え、短期間に最も効率の良い方法で大規模に飼育している結果である。このような飼育は決して鶏にとってhumane な待遇ではない。鶏を一日中、工場のような環境で飼育するのではなく、一日数時間でも屋外で自由に動き回れる環境で育てる方がより鶏にとってhumane である。このような環境で飼育された鶏をFree range chicken(日本では平場飼育地鶏)と呼び市場にすでに出回っている。

 Murray. s Chicken というのがこの種の大手で、同社ではCertify Humaneと言うラベルを商品に表示している。価格的には他の鶏肉に比べ3〜4割高だが、味が良いとの評判で売れている。また、囲いのない環境で育てれた鶏から取れたタマゴはCage Free Eggs(放牧)として販売されこれらにも、CertifyHumane のラベルが貼られ、通常のタマゴより6 割も高めだが、スーパーでの売上げは好調で、毎年25%の売上げ増加を記録していると、この業界機関であるUnited Egg Producers では報告している。

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