サイト内
ウェブ

(NY)vol.6 ここまで来ているアメリカの消費者意識

  • 2006年11月1日

No More フォアグラ

 シカゴをはじめ、幾つかの米国都市では、フランス料理の食材であるFoie gras の輸入や提供を法的に禁止している。理 由はガチョウの口から強制的に餌を入れ、肝臓を肥大させ育てるのはhumane な飼育ではない、というのがその理由。シ カゴでは、フォアグラを提供すると500 ドルの罰金が課せられる。

 ファーストフードに使われる牛肉のハンバーガーパテ、その材料となる牛の飼育もまた他の動物同様、巨大な屋内で、生 まれてから一度も体を回転させられないほど狭い囲いの中で、その一生を過ごす。その状況はEric Schlosser のベストセ ラー著書Fast Food Nation に克明に描かれている。

 海洋に目を向ければ、フカひれ収穫の例はやはりhumane に反する行為であろう。海洋で捕獲されたフカから、ヒレだけ を切り落とし、生きたまま後は海に捨ててしまう。中国料理店でフカひれスープを注文する前に、そんな事を考えるだろ うか。最近では鮭やエビの養殖も問題が表面化している。

 

Certify Humane ラベル

Murray's Chicken のCertify Humane のラベル
Murray's Chicken のCertify Humane のラベル

 このように、我々の食材となる動物や魚を人間的な立場で、 より好ましい環境で飼育しようという運動は広まりつつあ る。だが、どこまでをhumane とみなし、どこから inhumaneとするかは判断が容易でない。牛乳用の牛の場合、 一日最低でも4 時間は屋外で動き回れる環境が必要としてい るが、明らかな基準はない。国の規制もまだない。

 豚の鼻にリングを付けるのは、許されるべきか。鶏一匹が占 める面積は?、いけすタンクの面積と魚の数の比例は?。未 解決な問題は山ほどある。オーガニックが標準化されるまで には20 年を費やしている。人、動物、植物などが地球上で 長く共存していくには、食材の飼育環境は避けて通れない問 題。食には安全性と共に美味さ、長期供給Sustainability が 求められる。オーガニック食品が定着した今、我々の食卓に オーガニック食品並みにCertify humane の標準ラベルが付 いた食材が並ぶまでには、まだ時間がかかる。

Compassionate(おもいやり) is CSR

 人間が長く快適に地球上で生きていくには、自然とのハーモニーが不可欠。そしてハーモニーがSustainability を可能に する。いずれは食材料となる動物や魚でもhumane な環境で飼育することが人間と彼らとのハーモニー、それが Sustainability につながる。ビジネスである以上、市場のNeeds や企業のProfit 確保は欠かせない条件。だが目に見え ない心の豊かさが尺度であるCompassion(おもいやり)に価値観を見出す豊かさも企業に求められる時代。法では規制 されない企業の社会的な責任、いわゆるCorporate Social Responsibility (CSR) として「思いやり」が企業内に生まれている事は注目していい。

 「CSR2.0フォーラム」が12月7日に開催され、各分野のトレンドリーダーが2007年を語るという。マーケティングの視点、生活者の視点、からの新しいCSR提言になるだろう。


Paul Yamaguchi

■ 筆者紹介
Paul Yamaguchi
東海岸ニューヨークからはトレンド情報誌の先がけとなった「PRONTO」や「USフードジャーナル」の編集長を務め、現在は健康食品ビジネスコンサルタント会社を運営し、英文の日本の健康食品市場レポートを発刊しているポール山口さんがレポートします。

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。