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(NY)vol.5 CO2ゼロ、再生可能エタノール燃料

  • 2006年8月1日

ヨーロッパはディーゼル車、日本はハイブリッド車、米国は日本製ハイブリッド車の圧勝かと思われたが、E85の出現はエタノール車への傾斜も・・・。ブラジル等南米勢力はエタノールが急成長。ガソリン高価格は、自動車業界も巻き込み新時代へ。

高騰する石油価格、その時車社会は?

 ガソリン価格が世界的に高騰している。日本に比べガソリンが安いとされていたこの米国でも急速な価格上昇は免れないでいる。同時多発テロ9.11の前年2000年にはNY周辺での1ガロンあたりのレギュラーガソリン価格は1.9ドル程度であった。6年後の今はそれが3.25ドル、70%の価格上昇だ。これは同時期の日本の上昇率の45%をはるかに超えている。

エタノール車
ゼネラルモータース社から寄付されたシボレーの
エタノール車に乗る、サウスカロライナ州の農務長官
(courtesy of South Carolina Department of Agriculture)

 6年前には米国のガソリンは日本のそれに比べ1/2程度であったが、今その価格差は2/3程度までに縮小している。車での通勤率が75%という車社会である米国にとって、このガソリン価格の上昇は、まだ政治問題には至っていないものの、社会問題であることは間違いない。一日の食費を削ってもガソリンを買わなくてはならない人々の生活事情もテレビで放映されているほど、深刻な問題でもある。一方では、この高騰の中でも、ガソリンの消費がそれ程低下していないことは、米国民の車に頼る生活から抜け出せない事情が伺える。

 

低迷する米自動車産業、日本車、軽自動車が善戦するが…

 このガソリン高騰の影響を受けている産業は、ほかならぬ自動車産業である。それも、4リッター5リッターという大型SUVを生産していた3メジャーがその影響を最大に受けている。破産寸前のゼネラルモータース、経営建て直しを迫られているフォード、メルセデスベンツの翼下ではあるが、クライスラーも元気がない。それに比べ、燃費の良い日本車、韓国車は売上げを伸ばしている。特に日本のハイブリッド車はデリバリーまで6ヶ月待ちという状況だ。ガソリン価格が上昇し、今後も価格上昇が予想される中、米国の自動車メジャーは日本車に勝る燃費のよい車を開発するか、輸入に頼らない供給が安定した低価格燃料の開発に挑むかの選択に迫られている。ゼネラルモータースはLive Green Go Yellow キャンペーン、フォードはE-85 キャンペーンをそれぞれ推進しエタノール燃料の普及に力を入れている。

Go Yellow, Say Yes to Yellow.
ゼネラルモータース社エタノールキャンペーン、
Go Yellow, Say Yes to Yellow.

 ガソリンに代る自動車燃料として砂糖キビやコーンからつくる、エタノール(エチルアルコールとも呼ばれる)が注目されている。国内で豊富に栽培されるコーンを背景に、低価格で何より供給が安定し、しかも廃棄ガスがゼロというエタノールは石油消費の約50%(Renewable Fuels Association http://www.ethanolrfa.org)を輸入に頼る米国社会を救う再生可能燃料として注目を浴びている。エタノールの生産はガソリンなどのプロセスに比べ簡単で、車もエタノールへの変換、あるいはガソリンでもエタノールでもOKというフレキシブル車種の開発はすでに済んでいる。エタノールの供給が発達しているブラジルなどではガロンあたり、1ドル前後で市販され、多くの車がエタノールを燃料としている。ブラジルで生産されたエタノールは日本にも輸出されている程の生産量があるという。

 

州主導で進むE85普及、
自動車業界VS石油メジャーの構図が…

 米国で市販が開始されているのは、E85と呼ばれる、エタノール85%、ガソリン15%というもの。(日本ではE3というエタノール3%が使用認可されている)E85を車に注入するには、それ専用のガスステーション(GS)が必要となる。E85のウエブサイトによると、全米には農産業の盛んなシカゴを中心とするミッドウエスト各州に約800のE85ステーションがあり、今年は400箇所程度の増加が見込まれているという。だが、全国に20万箇所あるGSに比べその数は、まだわずか。

フォードのE85キャンペーン広告
フォードのE85キャンペーン広告

 エタノールを広めるには、エタノールのGSが不可欠だ。エタノールを既存のGSで販売するのには、エタノール専用のタンクの設置が必要だ。その供給所を新設するには、約10万ドルの投資が必要。エタノール普及協会では、既存のGSにエタノールを扱えるタンクの設置補助金として3万ドルを提供しているが、普及が思うように進んでいない。石油企業と近い現在の米政府は、エタノール政策へは前向きに対処していない。 そこで、州単位でエタノールの普及が進めれているのが現状だ。コーンの産地であるアイオワ州では、新エタノールステーションの開設費用の半分を州政府が提供し、1ガロン販売するごとに25セントを援助している(The New York Times)。カンサスやイリノイ州でもエタノール普及に免税政策を行っている。をもちろん、エタノールを燃料とするフレキシブル燃料車が普及しないのでは、専用のGSも当然増えない。エタノールGSの広まりを遅らせているもう一つの理由に、石油大手がエタノールの普及に協力的でない事も最近のテレビや新聞で報告されている。GSの多くを運営する石油メジャーのGSではエタノールの供給を拒んでいるというニュースもある。

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