鉄平オーガニクスの井沢敬社長とボールダーのコーヒーショップにて
ボールダーではナチュラルな甘味料に人気があり、ハチミツやメープルシロップ、そしてアガベシロップが喫茶店で砂糖代わりに出てくることもしばしばだ。地元スーパーでは通路全てがアガベ関連食品というところもあるし、和食総菜店でもアガベが甘味料として使われている。アガベシロップも様々なメーカーや種類があり、アガベから作られたコーラやお菓子も人気がる。 地元ボールダーを代表するアガベメーカーにTeppei Organics(鉄平オーガニクス)という会社があり、こだわりのアガベシロップを販売している。果糖を主成分としているアガベは本当に砂糖やHFCSより体に良いのだろうか。オーナーの井沢敬さんにお話を聞いた。
筆者:果糖が主成分のアガベシロップは本当に体に良いのでしょうか?
井沢氏: 全ての甘味料について言えることですが「適度に利用する」というのが重要です。完璧な甘味料はありません。
筆者 :過剰に摂取しないということですか?
井沢氏:そうです。我々はみな果物を食べることは体に良いと知っています。果物には当然多くの果糖が含まれますが、本来の姿のまま食すればビタミンやミネラル、食物繊維など体に必要な成分と一緒に体内に吸収することができます。ですから果糖の摂取が良くないというより、食物を加工しすぎることにまず問題があると思います。加工すればする程、食物が持っている本来の良い点が減っていくのです。
ボールダーの隣町デンバーで生まれたアガベソーダ「oogave」
アガベを使用した総菜が人気(写真提供:鉄平オーガニクス)
筆者 :アガベシロップを推奨する理由を教えてください。
井沢氏:まず鉄平オーガニクスブランドのアガベは原料が有機栽培で加工も最小限にとどめています。アガベ品種最高峰のブルーアガベを48℃以下の低温で抽出加工しておりローフード食品に分類されます。そのため、イヌリン繊維やミネラル、ビタミンを含むシロップになっています。
筆者 :鉄平オーガニクスのアガベはたいへんコクがありますが、カロリーはどうでしょう。
井沢氏:アガベシロップは従来の砂糖と同じカロリー数ですが、甘みが25〜30%ほど強いので、砂糖よりも少量の利用で同程度の甘みを感じられます。少量でも満足のいく甘さを感じますので、結果的に低カロリーに抑えられます。
筆者 :HFCS もコーン由来の果糖が主成分ですが…
井沢氏:鉄平オーガニクスのアガベシロップは適度に利用した場合、GI値と呼ばれる血糖値の上昇するスピードを指数化した値が低いことも特徴です。これは肝臓への負担を減らし、シュガースパイクと呼ばれる現象を防ぎます。逆に従来の砂糖やHFCSでは血糖値が急上昇するのが顕著な症状です。HFCSを作るにはコーンスターチを果糖にする過程で化学薬品と酵素が必要です。なおHFCSの原料であるアメリカのコーンは大半がGMO(遺伝子組み換え)作物です。
筆者 :やはり原料からこだわった加工の少ない甘味料を使いたいものです。どんなものでも過剰摂取は健康を害するのですね。
かつて英国海軍軍医ジェームズ・リンドは18世紀中頃に新鮮なオレンジやレモン等の柑橘類が壊血病を予防する効果があることを発見した。その後人類は食物に含まれる成分が体に及ぼす影響を科学的に研究し、多くの疾病の予防に役立てて来た。しかし我々は時としてその道を外れ、有機体の構成要素を取り除き、加工し、合成し、添加物を加え、さらには遺伝子まで組み替え、自然界との共存を忘れてしまった。たとえそれが良い意図を持った行いでも、 科学で食品を支配しようとすると予想外の結果を引き起こし、もともと解決しようとしていた問題をいっそうひどく拗らせる。シンプルな答えだが、自然のままの食物を適量摂取するというのが一番人体には好ましいのだろう。いかに我々人類が抗おうとも、いつも一番正しいのは母なる自然であるような気がしてならない。